Monologue Opera: The New Era detailed english information

新しい時代

 2000年4月22日(土)、午後7時開演、京都府立市民ホール”アルティー”
2000年4月27日(木)、午後7時開演、東京、紀尾井ホール   
    

Story

地球規模で結ばれた現代のデジタルネットワークは莫大な知的情報を集積、処理する知の書物となり個々の人間の能力をはるかに超えた地球全体の頭脳となる。いつしかその頭脳は高度な記号処理能力によって未だ人類によっては書かれていない書物の空白部分、宇宙生成や生命起源の秘密を解き明かす基礎理論を生みだし、それらは不思議な暗号コードとしてネットワーク上に漂い始める。
この不思議なコードの意味を直感した一部の人々はそれらが文字や言語ではなく、それらを「楽譜化」、つまり解析し音波に変換することによって人間の悟性に直接メッセージを伝えているものであることを発見し、ネットワーク上に宗教ともいえる信仰が自然発生的に生まれた。この「宗教」の教えでは神、つまり宇宙原理に従い肉体を捧げ、その個体の遺伝子情報などを漂い続ける美しい旋律に刻印することによって時空を越えた宇宙の記号過程に参与できると説く。


Realization

 4人の女性キーボード奏者による音響生成システム(主にサイン波による演奏)、
 4台の小型プロジェクターによる楽譜表示、及び音楽進行を統括するビデオ映像システム、
 会場にある複数の(赤外線)カメラや用意された映像素材を大型スクリーンに投影する映像システム、
 会場のビデオ映像を遅延させるビデオ・ディレイシステム、
 その他の音響素材、及び照明などを統括制御するコントロールシステム

など、特別に開発された専用システム(ソフトウェア)が複数のコンピュータによって実現され、複雑で錯綜する会場の電子機器やネットワークそのものがまたこのオペラの表現でもある。特に重なり合うノイズやサインウェーブのメロディーによる人声の合成(オペラではメロディーの中に浮かび上がる神の声を象徴している)や、声は聞こえても肉眼では暗くて見えないステージの様子を観客に伝える赤外線カメラ、また数十秒前のステージ上の映像を再現するビデオ・ディレイシステムは現代社会における我々にとっての見えること、聴くこと、そして存在することを問い直し、メディア社会における実存の危うさや奇妙な透明感を象徴する。


Cast

Reisiu Sakai as a boy


Composer's note

今このオペラを作曲することについて(抜粋):

歌を作りたいと長い間考えていた。しかしぼくはそれに一度も成功したことはなかった。かつて様々な形で生まれ、今でも愛され口ずさまれる多くの歌をぼくは知っている。それに匹敵するような歌がどうして自分には不可能なのかいつも考えていた。そのために音楽についていろんな勉強をしたのではなかったか、と自分に言ってみる。今、それに対するぼくの答えとして考えつくのは、歌われ、描かれるべき世界そのものが崩壊しているからなのだ、という説明である。たしかにぼくでさえも今、そのような世界を素直に信じることはできないし、そのようなことをまじめに口にする人間をまずは疑い深く観察する習慣が身についている。この、歌われ、描かれるべき「そのような世界」とはたぶん、あらゆる意味を含む「憧れ」の世界のことである。ぼくらはそれらを科学的知見で、世界経済と競争の原理で、核爆弾で、その他様々な暴力によって端から破壊してきた。そして今、この現代においてもはや何かに「憧れることなどできるわけはない」のである。ところで自分の目の前に見えぬ世界を見、望むものを思い浮かべて憧れることこそ子供達が生まれながらにして持つ最も力強い能力であり、これから人間になる彼らに何としても必要な訓練である。そう、もはや子供ではないぼくが何かに本気で憧れ、歌をつくる、オペラをつくるなどということは「子供じみた」時代感覚の欠如した行いということになってしまうだろう。どのように工夫を凝らしても功利的、分析的な視線の追求に際限なく追いかけ回され、歌はうそ臭くわざとらしい様相を免れないのかもしれない。一方、なぜかミレニアムを世界中の人が祝う今年の正月のように、大人達が過去を振り返り未来を夢見つつ世界と人間との契約を確認し更新するこの祝祭的な時間の共有こそ音楽にもっとも関係の深い何かであるとぼくは感じている。それは分析的な思考が小休止する瞬間、「子供じみた」創造力が大人にも共有される瞬間でもある。そのような瞬間を夢見て今この時代に「歌なんかつくれるはずもないのに」歌をつくろうと思う。ただしその歌は人々に勇気を与えようとするわけでもなく、未だ見ぬ世界を顕現させるわけでもなく、誰かに向けた熱いメッセージが込められているわけでもない。それは、ただ子供達が言葉遊びをしながら口にするわらべうたのように無意味な繰り返しとしての、そして無意味であるからこそ不思議なおまじないのように彼らの魂を鎮める歌である。

2000年1月 三輪眞弘


Credits

作曲、脚本、コンピュータ・プログラミング: 三輪眞弘

演出、映像: 前田真二郎

ソプラノ: 坂井れいしう

キーボード: 飯村香織旧冨あや菊地孝枝三井朋美

スタッフ: IAMAS "歌劇研究所" TEAM
(サウンド)上山 朋子、由雄 正恒
(ヴィジュアル)岡本 彰生、新堀 孝明

DVビデオディレイシステム開発
(Special Thanks): 赤松正行

主催・プロデュース・作品委嘱: 22世紀クラブ

Supported by: IAMAS


東京公演 前売り:
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