Ogaki Mini Maker Faire 2016レポート

はじめに

「Maker Faire」(メイカーフェア)は、電子工作やロボット、クラフト、ペーパークラフト、電子楽器、サイエンス工作、リサイクル/アップサイクルなど、様々な分野のつくり手「Maker」(メイカー)たちが全国から集まり、つくったものを見せ、語り、その楽しさを共有するイベントです。Maker Faireには、アメリカのベイエリアやニューヨーク、東京などで開催されるグローバルなフラッグシップの「Maker Faire」と、ローカル版の「Mini Maker Faire」の大きく2種類があります。日本で最初のMini Maker Faireは岐阜県大垣市で2010年に開催され、4回目となる今回は146組の出展者と約6,000人の来場者という多数の方々の参加により、大盛況のうちに終えることができました。このイベントを、総合ディレクターとしての視点から振り返ってみたいと思います。

Ogaki Mini Maker Faire

日本におけるMaker Faireの歴史は、2008年4月に隅田川沿いのインターナショナルスクールの古い体育館とグラウンドで開催されたイベント「Make: Tokyo Meeting」から始まりました。約30組の出展者と約600名の来場者という小規模だったイベントは回を重ねる毎に急成長を続け、2010年9月に岐阜県大垣市で開催された「Make: Ogaki Meeting」は、初めての地方開催にも関わらず、約110組の出展者と約4,000人の来場者という規模でした。アメリカを中心に開催されていたMaker Faireをお手本にしつつ、日本独自の解釈を加えて東京と地方(大垣市と山口県山口市)において開催してきたこれらのイベントは、2012年から「Maker Faire Tokyo」「Mini Maker Faire」とそれぞれ名前を変えました。内容は、多様な出展者による展示に加えてワークショップやプレゼンテーション、ライブなど多岐にわたり、家族で参加できるDIYの祭典として定着しています。また、最終成果物だけを見せる通常の展示会とは異なり、なぜ、どのようにそれらをつくったのか、さらによくするためのアイデアなどについてお互いに語り合うことができるのも大きな魅力です。今回のOgaki Mini Maker Faire(以下OMMF)も、146組もの出展者による展示に加えて、延べ18のワークショップと22のプレゼンテーションという充実した内容でした。

このOMMFは、Ogaki Mini Maker Faire 2016 実行委員会が主催、株式会社オライリー・ジャパンが共催し、実行委員会の事務局はIAMASが担当しています。教育機関であるIAMASがイベント=お祭りであるOMMFの運営に積極的に関わる理由は、2014年開催の前回から掲げているテーマに示されています。

つくることから、はじめよう
もの/あそび/ぶんか

Maker Faireは、単なる一過性の娯楽イベントではありません。例えば、そこで出会った多様な人々やその作品、生き方に衝撃を受け、自分自身もMakerに目覚めた人々や、新しい生き方を見つけた人々が数多くいます。また、電子工作に限らず、農耕や狩猟、発酵などのさまざまな分野において、限られたメーカーだけがものをつくれるのではないことが示されました。さらに、Maker Faireを通じて、未知なるものは恐れる対象ではなく、むしろその出会いが非常に楽しいことを多くの人々が知りました。私自身も、2008年以降ほぼ全ての国内と、ニューヨークや深圳で開催されたMaker Faireに参加してきた中で、一口に「何かをつくる人々の集まり」といってもその活動や価値観は実に多様であることを知り、多くの刺激を受けてきました。そうした経験を通じて、Maker Faireに集まる人々の中に、テクノロジーと共に生きる時代における、新しい生き方の選択肢につながるアイデアがあると確認するに至りました。
OMMFそのものは一過性のイベントで、それだけでは「点」に過ぎません。しかしながら、継続的に開催することにより、来場者として参加し、そこで刺激を受けた人々の一部が次には出展者となることにより、やがては当たり前のものとして定着し、文化となっていくことが期待できます。そこまでを視野に入れた活動を持続するためには、四半期毎の評価を基準に活動する民間企業や、単年度毎の予算に基づいて活動する行政だけでなく、教育というそもそも時間のかかる活動に継続的に取り組む教育機関の役割が重要になります。これが、IAMASという教育機関が主体的にOMMFの運営に関わる理由です。

前夜祭トークセッション

今回のOMMFでは、本編に加えて5つの関連イベントを開催しました。まず、OMMFの2週間前にIAMASの隣にあるファブ施設Fab-coreと株式会社恵那工芸によるアクリルの端材を活用して新たなプロダクトをつくる「アクリル端材メイカソン」が、10日前に関西からの出展者を対象にしたミートアップ「Ogaki Mini Maker Faire Special – Fab Meetup Kyoto 特別編」が開催されました。続いて、前夜には著名なSF作家であると同時に黎明期から日本におけるメイカームーブメントに参加していらっしゃった野尻抱介先生をゲストに迎えたトークセッション「Ogaki Mini Maker Faire 2016 前夜祭トークセッション」を開催しました。さらに、期間中には地下駐車場での音楽イベント「NxPC.LIVE Vol.24」、デジタル工作機械を活用して一定の制約条件のもとでプロダクトをつくるコンテスト「第5回 展開図武道会~この椅子いいっすね!」、デジタル工作機械を活用したワークショップ「オリジナルクリスマスツリーとオーナメントをつくろう」がそれぞれ開催されました。この中で、前夜に開催した前夜祭トークセッションについて詳しく紹介したいと思います。

前夜祭トークセッションは、野尻先生による「曲がり角のMaker Faire」という刺激的なタイトルのプレゼンテーションから始まりました。野尻先生は、最初のMake: Tokyo Meetingからほぼ全ての回に参加し、オースティンやベイエリア、深圳など海外にも参加されています。そうした中で、自転車で牽引できるキャンピング・トレーラーや酵母の働きを監視する装置、大豆の選別装置、ストリートオルガン、パーソナル航空機などの作品に引き寄せられたといいます。それらは、個人主義者やアウトサイダーによるMakingで、その生き方を反映した作品だったからです。そうした経験から、野尻先生はMakerとは「技術をもって我が道を行く人」であると定義しました。

image01 これまでを振り返り、野尻先生は約30組の出展者と約600名の来場者という小規模だった頃の「世の中にはこんなすごい奴がいたのか」という驚きは、イベント自体が家族で楽しめる大型イベントとして成熟する中で薄れてきたのではないかと指摘しました。その理由の一つとして、Maker Faireの巨大化に伴い、火気の使用などに関する制約の厳しい会場で開催せざるを得なくなってきたことにより、世間や多数派と衝突するアウトサイダー系Makerを閉め出していることがあるのではないか、と分析しました。こうした傾向が東京だけでなく、アメリカなどにも共通するものであり、ムーブメントとして成熟してきていることの裏返しであることを補足しつつ、地方開催のイベントならではの可能性を提案しました。

野尻先生は、道具類を自作し、米や野菜、肉、魚を物々交換して自給自足してきた農林水産業はそもそもMakerだったのではないかと述べ、インターネットで買い物やコミュニティができる今、広い敷地があり、車があればどこへでも移動できる地方のMakerスタイルこそ、アウトサイダーと親和性が高いのではないか、と述べました。その上で、地方開催の事例として能登の海岸でのキャンプで火遊びやり放題だった「Maker “Fire” 能登」、川縁の野外ステージで展示して夜は河原でバーベキューをした「伊勢ギークフェア」といった小規模なイベントを紹介し、Maker Faireというブランドにあまりこだわらず、海岸や河川敷などの広い場所に車を横付けしてテールゲート・パーティー形式などで小規模に開催するイベントの可能性もあるのでは、と提案しました。 トークセッション後半では、野尻先生からの投げかけを受けて会場とインターネット中継、双方から様々なアイデアが出ました。次回のOgaki Mini Maker Faireをいつ、どこで開催するかは現時点では未定ですが、私個人としては、今回までのような開催形態にこだわる必要はないと思いますし、コアとなるイベントに全てを求めるのではなく、もっと小規模でテーマを絞ったイベントや継続的な活動を多数開催できるのが理想的ではないかと思います。もし、この4回のMini Maker Faireを引き継いでさらに発展させられるようなアイデアがあれば、ぜひお寄せください。

ファブスペース

前夜祭トークセッションの開催に加えて、今回のOMMFでは「ファブスペース」という特集を設けました。メイカームーブメントとスタートアップに特化したメディア「fabcross」が2016年11月に公開した調査結果によれば、日本全国には120の「ファブ施設」があります。( 参照:【2016年版】日本のファブ施設調査——前年比で50%増! 大規模施設から地域コミュニティまで続々増え続ける現状
ファブ施設とは、3Dプリンタやレーザー加工機などのデジタル工作機械を備えた市民工房のことで、運営の目的や規模、備えている工作機械は多種多様です。今回、OMMF2016のエントリーを募った時点で東海地区を中心に12の施設から応募があったことを受け、ファブ施設を特集した「ファブスペース」という展示を企画しました。この展示を企画した理由は大きく3つあります。まず、通常の出展者はテーブルを基本単位として展示スペースを割り当てますが、これですと大きな空間を割り当てることができません。次に、他の出展者とファブ施設を混ぜてしまうと、そこで展示されるものは最終成果物のみになってしまい、プロセスにおいて重要な役割を果たすファブ施設という存在を来場者に伝えることができません。さらに、全体で共有するワークショップスペースは限られており、長時間使用するものやレーザー加工機を必要とするもの、展示スペースの横で随時開催するものなどを開催することが難しくなります。
今回、早い段階でゴールドスポンサーである工作機械メーカー「トロテック・レーザー・ジャパン株式会社」の理解が得られ、レーザー加工機2台を持ち込んでいただけることが確定できたため、ポップアップのファブ施設をOMMFの期間限定で作り上げ、普段の環境に近い状態で来場者の方にも体験していただくことが可能になりました。幸いにも、この企画は全てのファブ施設の方に賛同していただくことができたため、それぞれのファブ施設の特色を来場者の方に伝えられるよう、個別のパネル以外に地域も含めて紹介するパネルを作成しました。期間中には随時開催のワークショップが5件、事前申込制のワークショップ6件にくわえて、レーザー加工機のデモンストレーションも兼ねたワークショップを合計9回開催しました。展示に関しては岐阜県高山市から出展した「Fresh Lab. Takayama(フレッシュラボ高山)」が店舗の一部をそのまま再現したような展示ブースで出展してくれたこともあり、ファブ施設の雰囲気や多様性を見たり、体験したり、話したりする中で感じていただけるものになったのではないかと思います。

おわりに

Ogaki Mini Maker Faireのテーマとして掲げた挑戦はまだ始まったばかりです。しかしながら、4回続けてきたことで、ようやく定着してきたのではないかという実感を持っています。今まで同様に隔年で開催するとすれば、次回は2018年になります。次回もし開催するのであれば、今回の延長線上で単発のイベントとして開催するのでなく、多様な小規模イベントや継続的な活動と組み合わせ、岐阜県大垣市という一地方都市を中心として、地域内外のMakerを顕在化させるメディアをつくることに挑戦したいと考えます。

レポート:小林茂

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会期

2016年12月03日 - 2016年12月04日

会場

ソフトピアジャパン センタービル1階および3階

出展者数

146組

来場者数

約6,000人

主催

Ogaki Mini Maker Faire 2016 実行委員会

共催

株式会社オライリー・ジャパン

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