IAMAS ARTIST FILE #08 記譜、そして、呼吸する時間 TOP | コラボレーターへのQ&A -01 遠藤 龍
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コラボレーターへのQ&A

01 遠藤 龍


出品作品
《20211001 - 》
2021-|ムービー HEVC (H.265)
[制作] 遠藤 龍 + 福島 諭 / [スライド制作] 遠藤 龍

〈作品制作における規則〉
・正方形の静止画データ(3000pixel×3000pixel)を用いる。
・どちらかが最初に提示した静止画データに対して一方が何らかの処理を加え返答する。
・期限を無期限として続ける。

出品作品
《並列画像 No.01 - No.12》
2021 – 2022|写真
[制作] 遠藤 龍 + 福島 諭 / [写真プリント] 遠藤 龍

〈作品制作における規則〉
・正方形の静止画データ(3000pixel×3000pixel)を用いる。
・左右に配置される正方形の空間があるとする。
・2名のうちどちらか一方が、左右の指定と共に静止画データを提出する。
・もう一方が残りの空間に静止画データを提出する。


Q&A

Q1: 福島さんとの共同制作作品のルールはどのようにして決めましたか?

A1: 幾度かのルール変更を経て現行のルール(展示されているもののルール)に至りました。今後もまた変更があるかもしれませんが、あるルールに基づき進行していく中で、ルールに縛られ過ぎてくることがあります。ルール下のルールを無意識に作り出してしまうような。それによって当初意図していたようなルールとして機能しなくなってくることがあります。そういった機能不全を回避しつつ、進めていけるようなルールを探りながら共同制作を続けています。ルールを作るということ自体も作品制作の一環として意識しています。

Q2: ルールには、良いルールとよくないルールがあるとすると、どのような違いがあると考えていますか?

A2: A1でお答えしたように、あらかじめ定めたルールから派生した「ルール下のルール」といったようなものを作り出してしまうことがあります。それが良い方向に作用すればよいのですが、創作の選択肢を狭めていく方向に作用することがあります。そういったものに敢えて呼称をつけるとしたら「よくないルール」ということになるかと思います。
それとは逆に「ルール下のルール」が創作の選択肢を広げていくものが「良いルール」ということになります。「良いルール」を探ることそのものが共同制作のコアにあるという意識を持っています。

Q3: 『並列画像』を進めようと考えた動機を教えてください。

A3: 『並列画像』を始める以前、互いの画像に手を加え続けることに対して、返答の選択肢がなくなっていった時期がありました。これは「よくないルール」によって引き起こされたことでした。そのような状況から脱するために試してみたのが『並列画像』です。一方が提示してきた画像に対して返答するという形式はそのままですが、2D画像上のコラージュではなく、ある画像から喚起された全く別の画像のやりとりという発想がコラージュのほうにも良い影響を与えるのではないかと考えました。「ある画像から喚起された画像」のやりとりという発想のもとに生まれたコラージュこそ、私が探していたものでもありました。

Q4: 作品制作においては完成を目指していますか? プロセスの見せ方について他のアイデアはありましたか?

A4: これについては福島さんと何度か話してきましたが、明確な答えはいまだ出ていません。ある完成形を目指して始めた行為ではないため、プロセスを見せるというほうが近いのですが、「プロセス自体が作品になり得るか?」という実験的意識のほうが強いです。
見せ方については全ての画像のプリントから立体として組み合わせるという案もありましたが、これについてはまだ実現に至っていません。樹木の年輪のように、各画像を一層として組み上げたプロセスの塊をひとつの立体物として形にしようかという案です。この場合は各画像をハッキリ見せるということはせずに、プロセス自体をひとつの作品として見せようという試みです。

Q5: これまでの制作の過程で印象深かった局面について教えてください。

A5: 特に印象に残っているものでいうと、2021年8月のやりとりです。2020年6月から2021年9月まではひと月単位で往復を終了するというルールで続けていました(現行ルールは月単位から無期限に変更されている)。2021年8月の往復が、新たにルールを設けたわけではないにも関わらず、コラージュではない全く別な画像を互いに送り合うという内容になっていたました。この往復が『並列画像』を始めるきっかけになりました。

Q6: 共同制作に可能性があるとしたら、どのような部分でしょうか?今後も続けていきますか?

A6: 作品制作に関わらず、あるルールに則って続けていくと次第にそのルールに従うことに慣れてきます。この慣れには惰性に変わっていく可能性が潜んでいます。惰性になることなく要所で新たな発見が生まれるようなルールを作ることができればと考えています。その思考のプロセス自体が作品として成立するような強度を持てれば、これは自分にとっても大きな進展になります。これにはやはり自分と他者との往復によってでなければ見つからない要素が大きいです。まだまだ発展できる要素を孕んでいると思うので、ルールの可能性を模索し続けます。


遠藤 龍(えんどう・りゅう)
写真+映像。写真と映像を使用した創作活動を続ける。個人名義の他、leとのユニット「mikkyoz」としても活動中。2012年から年1回のペースで新潟市の砂丘館を会場にmikkyozの新作を発表している。


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