ウォルフガング・ミュンヒ 古川聖

ウォルフガング・ミュンヒ+古川聖
Wolfgang Muench
wmuench@zkm.de

Kiyoshi Furukawa
kf@zkm.de

ウォルフガング・ミュンヒは1963年、ドイツのカールスルーエに生まれた。 ドイツのシュトゥットガルト国立美術大学院とオーストリアのウィーン応用美術大学で美術を学び、1996年からドイツのカールスルーエにあるZKMビジュアル・メディア研究所をベースに活動する。その間、訪問者のためのインタラクティブな情報システム「パノラミック・ナビゲーター」のようなZKMのさまざまなプロジェクトのためのソフトウェアの開発や「アートインタクト」、「デジタル・アーツ・エディション」といった、シリーズ物の刊行を行った。 1997年から、ドイツのシュトゥットガルトのメルツ・アカデミー(応用美術大学)でインタラクティブ・メディアの講師となる。現在はカールスルーエのZKMにアーティスト・イン・レジデンスとして滞在している。
古川聖は1959年、日本の東京に生まれた。 入野義郎氏に師事、ベルリン、ハンブルクの音楽アカデミーでイサン・ユン、ジョージ・リゲティのもとで作曲を学ぶ。1991年に米国のスタンフォード大学で客員作曲家。ドイツのカールスルーエのZKMでアーティスト・イン・レジデンス。モンチェングラドバクでの 「アンサンブリア」 (1983)、ハンブルクでの「プリズマ賞」(1990)、 「シーメンス・プロジェクト奨学金」(1992、1993)、「北部ドイツラジオ[NDR]音楽賞」(1994)を含む多数の賞を受賞、奨学金を授与された。2000年より東京芸術大学・先端芸術表現科助教授。ドイツと東京に在住。


しゃぼんだま

バーチャルなシャボン玉とのインタラクションはまったく単純である。プロジェクターから投影される光の前に歩み出て、スクリーンに自分の影を落とすだけである。シャボン玉はこの影を認識し、影の輪郭の上を跳ね回り、同時に効果音を発する。からだを動かすと、それに応じて影も動き、シャボン玉と音を鳴らして遊ぶことができる。
この作品は、微妙なやり方で、インタラクションの美学のいくつかのレベルに焦点をあてる。人間とコンピュータとのインタラクションというとき、通常からだ自体は含まれていない。「しゃぼんだま」では、からだがインタラクションの中心である。観客はからだで作品とやりとりし、その具体的な輪郭をインタラクションの手段としてスクリーンに投影する。
優れた文化的アイコンであるからだの影は、投影スクリーン上にシミュレートされた完全にデジタルな世界とやりとりするための、アナログ・インターフェイス装置として用いられている。プロジェクター、観客の身体、スクリーン自体は、スクリーン上の影の大きさを算出する「アナログ・コンピュータ」として使われる。これらの要素の距離や空間的な位置関係は、作品の体験に決定的な影響を与える。そこには、スクリーン上に人工的な二次元の世界を定義するシミュレーション・アルゴリズムそのものがあるのだ。
コンピュータ・シミュレーションと影とは、ある非現実的な性質を共有している。「しゃぼんだま」では、この二つの不完全な現実どうしが出会う。それは身体の軌跡と、プログラム・コードの生み出すはかない結果―高度情報化社会における本質となるもの―との出会いである。



ケイシー・リースティファニー・ホルムズジム・キャンベルカミーユ・アッターバックアーノン・ヤール ジェイ・リー+ビル・キースアルス・エレクトロニカ・センター未来研究所児玉幸子+竹野美奈子ゴーラン・レビン岩田洋夫