Myron Krueger

スモール・プラネット

私たちは皆、地球が丸いことを知っているし、またそうではないと考えた者は無知だと思っている。しかし実際、これが本当だと直接確かめたわけではない。ただ単純に科学者のいうことをを鵜呑みにしているにすぎない。

私たちは、球体の上にいることを明らかにするため、縮小版の世界を作り地球環境を素早くナビゲートできるようにした。あなたの前の大きなスクリーンにはリアルな三次元の地形が映し出されている。このスクリーンは、かなたの世界へ飛び立つための入り口なのである。ちょうど子供が飛ぶまねをするように、両手を広げ、飛びたい方向に体を少し傾けることで、目の前の地形を動きまわることができる。さらに、腕を上げたり下げたりすることにより、高く飛んだり、低く飛んだりもできる。広げた両手を低くすると地面に降下し、その両手を高くあげると山の頂上までも上昇する。両手をそのまま高く上げ続けると、宇宙にまで高く舞い上がり、それまでに探索してきた地形が丸い惑星の表面であったことをはじめて体験できるのである。

近くでケープのようなものをうしろに引きずって飛んでいる球体のオブジェを目にするかもしれない。その球体はもう一つのインスタレーションで、同じ惑星内を旅するもうひとりの参加者によってコントロールされているのである。


ソフトウェア、ハードウェア Katrin Hinrichsen

マイロン・クルーガーは、コンピュータを使ったインタラクティブ・アートに焦点をあてた最初のアーティストである。その研究途上で、ヴァーチャル・リアリティーに関する基本概念を数多く打ちだし、わずらわしさのない、全身を使うテレコミュニケーション体験の研究開発を先駆けた。そして1973年にこのコンセプトを絶妙に表現する語「アーティフィシャル・リアリティー」を発表した。

ダートマス・カレッジでリベラルアーツを学び、ウィスコンシン大学で修士号、博士号を取得した。彼が1974年に発表した博士論文では、人間と機械のインタラクションをアートの一形式として定義した。その考えは、後年「アーティフィシャル・リアリティー」(アディソンウェスレイ社、1983年)と題して出版され、1991年には「アーティフィシャル・リアリティーII」として大幅な改訂がなされた。


1969年以来彼は、センサー内蔵の床やビデオカメラを通して、コンピュータが人間の動きを認識し、電子音やその場所を使ったディスプレイが反応するようなインタラクティブ空間の構築に取り組んでいる。作品「ビデオ・プレース」では、他の参加者やグラフィックの生き物たちが共存する、コンピュータによって作られた世界に身をおくことになるのである。そこは、瞬間瞬間に因果関係が作られていく世界なのである。

彼の作品は、米国芸術基金並びに米国科学財団から助成金を受けて制作された。1990年に彼は、アルス・エレクトロニカで初のインタラクティブ・コンピュータ・アート部門でのゴールデン・ニカ賞を獲得した。また、彼の作品は、科学の分野においても数々の賞を受賞している。

クルーガー博士の作品は世界各国の美術館、画廊そして科学関係の学会等で幅広く紹介されている。そして「アート・ニュース」誌、「ニューズウィーク」誌、「スターン」誌、「インサイト」誌、「ライフ」誌、「オムニ」誌、「ニューヨーク・タイムズ」紙、「インベストメント・ビジネス・デイリー」紙、「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙など、多くの出版物でも紹介されている。“ビデオプレース”は、CNN、CBSイブニング・ニュース、ナイト・ウォッチ、ビヨンド2000、スミソニアン・ワールドなどでテレビ番組で報道されている。