Christa Sommerer/Laurent Mignonneau

フォトトロピーII

フォトトロピーとは生物用語で、生物が光に向かって成長し、栄養を得て、生き残っていく力のことをいう。

フォトトロピーIIは、懐中電灯を手に持ち動かすと、その光に向かって仮想空間の昆虫が飛び、成長するインスタレーションである。

「フォトトロピーII」ではコンピューターによって生み出された仮想のハチ、蛾、トンボのような生物が、栄養を求めて光を追い、闘う。本物の懐中電灯の光がその仮想の昆虫に生命を維持するための栄養をあたえていき、その昆虫は最大限の栄養を得ようとして光の中心に向かって進むので、懐中電灯の動きを追いかけて飛ぶことになる。

昆虫はスクリーン上で成長する繭に似た物体の中で生まれる。これらの繭は異なる種の昆虫たちが生まれでる、いわば巣のようなもので、光によってその幼虫が産み出される。

あなたは、どのくらいの数の繭をフカさせ、どのくらいの幼虫を懐中電灯の光で育てるのかを決めることができる。繭に光をあてると昆虫は目を覚まし飛び立つ。十分な光を与えられると、人工の昆虫たちは生殖が可能になり、自分たちの遺伝子情報を組み込んだ子供を産む。たとえば、懐中電灯の光をうまく動かしてやると、ほんの数秒で昆虫の数は急増し群れをつくる。一方、十分に光が届かなかったり、懐中電灯のスイッチを切ったりすると、すぐに死んでしまう。

懐中電灯の光には注意が必要である。中心の最も”熱いところ”を長くあてすぎると逆に危険になり昆虫を焼死させる。生物の創造、進化、生存をその手に握っているのだ。

「フォトトロピーII」は本物の光を動かすという自然なインターフェイスで人工生命をコントロールし、現実の空間と仮想の空間を結び付けるインスタレーションである。

http://www.mic.atr.co.jp/~christa


クリスタ・ソムラーは1964年にオーストリア、グムンデンに生れる。
ウィーン大学にて植物学を専攻、ウィーン美術アカデミーにて美術と現代彫刻を専攻。

ロラン・ミニョノーは1967年にフランス、アングレムに生れる。
アングレム美術アカデミーでビデオとコンピューターアートを専攻。

1992年よりコラボレーションを開始する。

1991/93年
シュテテルシュレフランクフルトニューメディア研究所において客員講師
1993
アーティストインレジデンス、ナショナル・センター・フォー・スーパーコンピューティング・アプリケーションズ(ウルバーナ、イリノイ州)
1994
アーティストインレジデンス、NTTインターコミュニケーション・センター(東京)
1995~
客員研究員およびアートディレクター、ATR、京都

作品(抜粋)

1997年4月まで
「ライフ・スペシーズ」パーマネント、ICC-NTTインターコミュニケーション・ミュージアム
「成長する植物」パーマネント、ZKMメディア・ミュージアム(カールスルーエ)
1997年
「インターアクト」, ヴィルヘルム・レムブルック美術館(ドゥイスブルグ)
「ビヨンド・アート」,ノイエ・ガラリエ・グラッツ(オーストリア)
1996
「ゲンマ」パーマネント、AECアルス・エレクトロニカ・センター(リンツ)
「トランス・プラント」パーマネント、東京都写真美術館(東京)
「進化する人工生物」パーマネント、NTT東海(名古屋)
常設作品

「ライフ・スペシーズ( "Life Spacies")」ICC-NTTインターコミュニケーション・ミュージアム
「成長する植物( "Interactive Plant Growing")」ZKMメディア・ミュージアム(カールスルーエ)、1997年
「トランス・プラント( "Trans Plant" & "Trans Plant II")」東京都写真美術館、1995/96年
「ゲンマ( "GENMA")」AECアルス・エレクトロニカ・センター(リンツ)
「インター・アクト( "Intro Act")」リヨン現代美術館、1996年
「進化する人工生物( "A-Volve")」NTT東海(名古屋)

展示会

1997年4月まで
「インターアクト」, ヴィルヘルム・レムブルック美術館(ドゥイスブルグ)
「ビヨンド・アート」,ノイエ・ガラリエ・グラッツ(オーストリア)
1996
「進化する人工生物」、クンストハーレ(ボン)
「夢を叶えてくれるマシーン世界発見」, クンストハーレ(ウィーン)
「3Dビジョン」東京都写真美術館(東京)
「エレクトラ」,ヘニー・オンシュタッド・美術センター(オスロ)
「アルコ’96」、アルテ&テクノロジア・ファンダシオン(マドリッド)
「リヨン・ビエンナーレ」, リヨン現代美術館(リヨン)
1995(抜粋)
「’95光州ビエンナーレ」、(光州、韓国)
「ミラノ・トリエンナーレ」パラッツォ・デラーテ(ミラノ)
「アルス・ラボ」エクストラ・ミュージアム(トリノ)
「アーテック’95」名古屋市立美術館(名古屋)
「仮想現実」ジョルジュ・ポンピドー・センター(パリ)
受賞歴
1995
「インター・デザイン・アワード」ジャパン・インター・デザイン・フォーラム(東京)
1995
「オヴェイション・アワード」インタラクティブ・メディア・フェスティバル(ロサンジェルス)
1994
「マルチメディア・アワード」マルチ・メディア協会(東京)
1994
「ゴールデン・ニカ・アワード」プリックス・アルス・エレクトロニカ’94(リンツ)