操作説明
半透明のアクリルボックスの裏側にプロジェクターによって女性のシルエットの映像 が投影され、ボックス自体が柔らかな光を放っている。鑑賞者は全面に開けられた穴 をのぞきこみながら、ボックスの下に設置されたタッチパネルをさわると映像のなか に仮想の手が現われて映像のなかの女性に触ることができる。
制作意図
コンピューターのなかの仮想上の人物との対話を目的としたインスタレーション。 コミュニケーションについて考えてみると言語を使ったコミュニケーション以外にも さまざまな方法が存在する事に気がつく。例えば『触る』ことは人間が生まれて言葉 を覚えるまでの間、最も重要なコミュニケーションの手段の一つである。そして他者 との親密さを生むための重要な表現でもある。そしてそれは単に触覚的な情報だけで はなく『触る』事に対して相手が『動き』で持って反応を返すという形で捉えること ができる。
モニターに現われた仮想の人物は『見る』ことはできるが『触る』ことはできない。 しかしタッチパネルに触れ、画面上に現われた仮想の手で人物に『触れ』て対話する ことができる。人物はこちらの問いかけに対して生き生きとした仕草で答えてくれる だろう。
しかしながら映像の処理速度という点で現状ではフルスクリーンの映像をリアルタイ ムにパソコンで処理させることは非常に困難なので、人物の姿をシルエットで見せて そのイメージを鑑賞者の想像力に負担させることにより、なめらかな反応を作りだし ている。
そして『触る』という行為に含まれる親密な関係性をより増幅するために『覗き見る 』というインスタレーション方法を採った。これによりオフィシャルな展示空間のな かに鑑賞者と映像のなかの人物との閉ざされた空間が現われ、鑑賞者は仮想上の人物 との一対一の関係を得ることができる。
|