第3回ビエンナーレ:世界メディア文化フォーラム'99 に寄せて


世界のメディア文化のさらなる成熟をめざして

 岐阜県大垣市に私たちの学校IAMASが誕生してから、ようやく3年を経過しました。開校前年の7月に、記念行事として開催した世界メディア文化フォーラムは、その後2年に1度のビエンナーレに発展し、この3月で第3回を迎えます。主な行事は、世界のメディア・アートの最新作を紹介する「インタラクション'99」展と、来日する作家や評論家でメディア文化の未来を語り合うシンポジウムからなっています。企画からカタログ制作、展示構成、運営までのほとんどの作業を、IAMASの教員・事務のスタッフと学生たちで担当した手作りのイベントです。変貌していく情報化社会のなかで、次々に開花し、成長していくメディア・アートの現状を紹介すると同時に、メディア文化の未来に向けて私たちの抱負や提案を、世界に発信する試みでもあります。みなさまの積極的なご参加と忌憚のないご意見を心から期待しています。

なぜインタラクティブ・アート展か

 ここ数年のマルチメディア社会のめざましい変貌のなかで、観客自身が主体的に作品にはたらきかけ、対話をすることのできる作品の出現に注目が集まっています。最初から観客の参加性(インタラクション)を前提にした表現作品で、インタラクティブ・アートともいわれています。歴史的には80年代から、この種の作品への関心が急増し、世界中で多くの作品が発表されてきました。それもキーボードやマウスの操作などはなるべく使わず、コンピュータも見えないところに置いて、観客の声や動作や身振りで直接対話ができるインスタレーションという空間的な作品が増えています。かつての美術展のように、作品の前でじっと腕を組んで、その意味を推し量る古典的な芸術の鑑賞方法から、観客自身の目で主体的に作品と向き合い、作家と観客とが同じ舞台の上に立って、最終的な作品を生み出そうという新しい芸術観による試みです。私たちは過去2回のビエンナーレを通じて、世界のインタラクティブ・アートの状況を紹介して来ましたが、今回はなかでもその観客の参加性に大きな役割を果たす、より人間的なインターフェイス・デザインの現状や未来の可能性に焦点を当ててみました。まず、会場で、ご自分でそれらの作品と対話を試みて、これからのメディア・アートの可能性について、考えてみてください。