風のコーヒースタンド

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「風のコーヒースタンド」は、移動式のコーヒースタンドです。
私たちは、大垣市の「均質で画一化された環境」と、「その土地固有の環境」に注目しました。そのどちらかを批判したり称揚したりするのではなく、両方の架け橋となるきっかけををつくります。 そのために、まず私たち自身が「外部からの視点」であることを忘れず、訪れたその場所の魅力を生かして、みなさんにおいしいコーヒーをふるまいます。

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しかし、ただコーヒーを飲みたいだけで喫茶やカフェに行く事は少ないのではないでしょうか。私たちは大垣まつりの後、この街に興味を持ち調査をしてみると、どこにでもあるような街に思えた大垣にも、旧くから市民とともに存在した神社や道など、昔からあるものが今もしっかり根付いていました。 そこで、私たちはコーヒーを頼んでいる時、飲んでいる時に、その場所、その時へ想いを馳せることのできる空間を考えました。

メンバー

大石桂誉 ハン・チョンミン 高畑慧 水野雄太

コーヒースタンドの背景

 IAMASがある岐阜県には、数多くのショッピングモールが点在しています。
実際に住んでみるとショッピングモールがこの町にとって、いかに重要な存在なのかがよく分かります。
しかし、深夜になってもショッピングモールの明かりは煌々と照らされる一方で、駅前の商店街は夜9時にもなればひっそりと静まりかえっています。

 このような光景は、この町だけのものではなく、どこにでも存在しています。
駅前のロータリーや幹線道路など、車で移動することを前提とした町づくりは、非常に合理的で利用しやすいものになったかもしれません。
しかし、それは環境の均質化を引き起こします。道路を走れば、いつもどこかで見たことのある看板やネオンに彩られ、チェーン店が並び、同じ匂いを感じます。
その強烈な既視感は安心さえするものの、一方でその場所固有の環境を忘れさせてしまいがちです。
大垣の街を歩いた際,私達は昔からある神社や点在する自噴水を見つけることができました。土地には昔からの固有の環境が存在しており、その面影は巨大な近代の都市環境の影にひっそりと、しかし確実に存在していました。
私たちはこのような「均質的で画一化された環境」と「その土地固有の環境」に注目しました。
そのどちらかの是非を問うのではなく、その両者を結びつけることができないかを考えました。
その理由の一つは、その土地に訪れた人同士や、地元住民の人たちを結びつける「空間」をつくることです。この空間とは、コミュニティや共同体といった大きなものではなく、たとえば喫煙所での刹那的なコミュニケーションのように、「その場その時」だけの一期一会の場を想定しています。
もう一つの理由は、お客さんにこのコーヒースタンドがつくりだす音や香りや味を通して、その土地の見える範囲だけでなく、風土や文化などに想像力を働かせてもらうことです。

しかし気をつけなければならないことは、私たち自身がその土地の人間ではないことに自覚的であることです。外部の視点をその文化や土地に持ち込んでくることは、時に暴力となりうるからです。そのために、このプロジェクトは一つの場所に固着することなく、絶えず移動することを前提としています。

これまでの流れ

私たちのプロジェクトには、音楽や映像、建築など様々なバックグラウンドをもった人たちがいます。このプロジェクトでは、始めにそれぞれの専門性からやりたいこと・関心のあることを挙げていきました。次に、それらを統合できる「空間」を作ろうと考えました。
空間を作る要件として、組み立てが可能で移動ができることが挙げられました。
そこで、アイデアとしてあがったものは、音や映像・コーヒーといった要素をユニット化し、ブロックのように組替えが可能なイベントスペースのプラットフォームです。
しかし具体性に欠けたこのアイデアは激しい糾弾を浴びて頓挫します。

ふたたび辺りを見回してみると、そこには大垣の豊かな水資源があり、強い風が吹いていました。
そこで、前回のアイデアとも相談しながら

  • 風を動力にすること
  • さまざまな場所に展開ができること
  • その土地の特徴を汲み取ることができること
  • コーヒーを利用すること
をテーマとして決まりました。
これらを実現するためのベースとして「コーヒースタンド」が選ばれました。

まず着手したのがアイデアスケッチです。
そして次に、風で音が鳴る仕組みと、風を他の動力に変換するための歯車のプロトタイプを制作しました。

コーヒースタンドでの経験

普段意識されない,その土地固有の風土.その時にしかあり得ない経験に思いを馳せる空間を目指します.
ノルベルグ=シュルツの垂直構造の,広大な方向へ意識を向けたり,マリー・シェーファーのサウンドスケープの概念を拡張して,風や匂いなど,環境が作り出す"スケープ"を考える様な空間を作りたいと思っています.


風のコーヒースタンドがつくりだす空間
場所の現象学 - p35 実存空間の垂直構造のレベル図 より作成

コーヒーに対する考え

どうせお金を出すなら、誰だっておいしいコーヒーを飲みたいと思います。しかし、「おいしい」とは一体どのようなものなのでしょうか。

考えてみれば、「おいしい」とは人それぞれの嗜好で、絶対的な基準が存在するわけではありません。

それならば、“究極の一杯”を探す旅に出るより、身近な素材を使ってコーヒーの違いを「たのしむ」べきではないでしょうか。
私たちのコーヒースタンドを通して、「おいしさ」の幻想に捕われるのではなく、コーヒーを取り囲む環境を「たのしむ」ことができればと考えています。

そもそも日本でコーヒーを飲んだ時の味はどこに行ってもあまり変わりません.
日本で栽培しているコーヒー豆は少なく,流通しているのは海外の,特定の有名な地方の豆ばかりだからです.
ここでは,出店する場所の特色に対し,コーヒーを画一化されたものの象徴と考えてもいます.

移動式コーヒースタンドに対する考え

風来坊というと「風にのってきまま」な雰囲気を思い浮かべますが,風のコーヒースタンドの「風」という文字には,それ以外の意味も込めています.

風土 住んでいては分からない,その場所の特徴というものがあるのではないでしょうか.
風のコーヒースタンドは,根無し草の目線から"その場所の特徴"をくみ取り形態やメニューを変更します.
風味 コーヒーの風味は,コーヒーそのものよりも周りの環境に影響を受けると思います.
ただコーヒーを飲むためにカフェに行くよりも,静かな空間や時間を求めてカフェに行く人が多いのではないでしょうか.
風のコーヒースタンドは,周りの環境を感じる空間を目指します.

説明

スタイル テイクアウトだけのコーヒーを販売する仮設店舗です。
しくみ コーヒースタンドの屋根に取り付けられた羽が風を受けてまわり、
その力によってコーヒー豆を挽き、音が鳴ります。

大垣での展開

期間 7月27・28日に行われる、
IAMAS Open House 2013
の出店を予定しています。
スタイル 一種類の豆に対し
  • 大垣の自噴水(数カ所)
  • 海外の硬水
  • 水道水
を用意し、お客さんに水を選んでもらいます。
価格 現在の想定価格はコーヒー1杯400円
客層 20〜30代の男女を想定

課題

  • 自噴水の水質調査とそれに応じたコーヒー豆の選定
  • 建物の強度や雨天時の対策
  • 実際の運営における、スケジューリングや価格設定の検討

参考資料

  • 『場所の現象学 没場所性を越えて』
    • エドワード・レルフ 高野岳彦他訳
    • 筑摩書房 1991
  • 『世界の調律 サウンドスケープとはなにか』
    • R.マリー・シェーファー 鳥越けい子他訳
    • 平凡社 2006
  • 『サウンドスケープの技法————音風景とまちづくり』
    • 小松正史
    • 昭和堂 2008
  • 『floating view 郊外から生まれるアート』
    • 佐々木友輔 他
    • トポフィル 2011

Abstract

"The Coffee Stand of Wind" is portable coffee stand that appear suddenly anywhere like wanderer.
We focus a scape of suburban. Suburban have both the featureless side and unique side.
We do not criticize and praise them. However, we want to make them to be connected.
Then, we think that we will provide special coffee adopted the feature in the place.

This time, we are planning to open the coffee stand in IAMAS Open House 2013 in Ogaki.
Ogaki has 14 artesian water spots and they are popular among citizens.
In our plan, we will collect the water in the places and make coffee from that.
In general way, when you order coffee, you would choose types of coffee beans.
But at our coffee stand, you would be requested to choose types of water.
Our purpose is that visitors feel a wealth of water.