モービルマシンにまつわる与太話

最初のモービルマシン

最初に考えたモービルマシンは次のようなものでした。

つまり、ラックマウント型Macをハードケースに収めるとともに、ハードケースの上部を開くと液晶ディスプレイとトラックパッド付キーボードが現れるという仕組みです。これならば移動時にはひとつのハードケースを運ぶだけで済みますし、電源プラグをコンセントに差し込めば設置完了!という手軽さです。

コンピュータ本体で完結する作品なら、このまま即座に開始することができます。あるいはライブ演奏なら、後はオーディオ出力をPAに回すだけです。そうです。私の願いはギターをプラグに差し込むだけで演奏を始めるようにコンピュータを演奏したかったのです。

我ながら素晴らしい構想と自画自賛しながらハードケースの制作会社に見積りを依頼しました。ところがいくつか問題点が見つかりました。まず総重量がかなり重たくなること、上部の蓋が液晶ディスプレイを支えるほどの耐久性を持ちにくいこと、そして費用が多額になること、でした。

というわけで泣く泣く当初の構想は諦め、他の許容し得る形態を探ったのが現在のモービル1です。すなわち、コンピュータ本体のみをひとつのハードケースに収め、液晶ディスプレイとキーボードは別のハードケースに収めることになりました。この場合は、設置時に液晶ディスプレイとキーボードをハードケースから取り出して、コンピュータ本体に接続しなければならないのが難点です。しかし、従来のように、それぞれを発砲スチロール入りの段ボール箱から取り出して、全てのケーブルを接続することに比べれば、格段にセットアップが簡略化できています。

ところで、改めて上の図を見ると、これは巨大なPowerBookに他なりませんね(笑)。実は他のアイディアもいろいろあったのですが、それぞれに難点があって、なかなかうまくまとまりません。そして、最終的に落ち着いたのが上の図のような構想でした。しかし、それも実現には至りませんでしたので、インダストリアル・デザインの難しさを思い知らされました(笑)。もっといいスタイルを思い付いた人は是非教えてください。

どうでもいいのですが、当時の試行錯誤のスケッチをいくつか紹介します。

モービル1の強度は?

緩衝材入のハードケースに収めたモービル1は、どの程度ヘビーデューティなのでしょうか?

実際にマシンが損傷するまで耐久度テストをするわけにはいきませんが、ハードケースの制作会社からは、通常の運搬であれば全く問題ない、と聞いています。つまりケースをそのまま自動車のトランク等に載せて運搬する程度であれば大丈夫ということです。運送会社を利用する場合は易損品であることを告げておけば良いでしょう。ちょっと恐いのは海外に持ち出す場合です。飛行機の貨物室への積み降ろしは、かなり乱暴に扱われることがあるようですから、その衝撃に耐えられないかもしれません。これは運を天に任せるしかありませんね。誰か海外ツアーに行きますか?

ちなみにMacintosh本体とAkiaの液晶ディスプレイはユニバーサル電源ですから、各国の形状にあったプラグを用意すれば大抵の国で電圧を気にせずに、そのまま使用することができます。残念ながらIiyamaの液晶ディスプレイは100Vにしか対応していません。

モービル2はモービルマシンなのか?

モービル2は特別なハードケースには収められていません。これでは簡単に移動できないのではないか?と尋ねられれば、全くその通りです。モービル2もハードケースに収める予定でしたが、単純な理由で実現しませんでした。つまり、予算が底をついてしまったので、ハードケースを用意できなかった、ということです(爆)。

とは言え、軽量な液晶ディスプレイや小型のキーボードなど、多少なりとも移動の便を図るべく工夫しています。モービル2が真のモービルマシンとなるよう1998年度の展開にご期待ください(笑)。

何故トラックパッドなのか?

そもそも移動先での設置では十分なスペースが確保できない場合が多いものです。実際、狭い隙間でマウスを窮屈に動かさなければならなかったことや、ほとんど使わないにも関らずキーボードの設置場所に苦労したことが多々ありました。従って、省スペースであることは、モービルマシンを考える上で重視した点のひとつでした。

そこで、コンピュータセットを考えてみると、もっとも場所を取るのがディスプレイとキーボードとマウスです。ディスプレイは液晶式にすれば、一気に省スペースが図れます。しかし意外に手強いのがキーボードとマウスです。一般に使われるテンキー付きのキーボードとマウスエリアの横幅の合計は大型ディスプレイの横幅よりも遥かに大きいものです。そこで様々な製品を探して、ようやく目的に叶ったのが、現在のトラックパッド付キーボードというわけです。

このキーボードはテンキーがありませんから横幅が短く、トラックパッドが付いているのでマウスを用いる必要がありません。これで液晶ディスプレイと同じ横幅に入力デバイスを押さえ込むことができました。コンピュータ本体の上にも、はみ出ること無く載せることができます。

普段マウスしか使っていない人には、このトラックパッドは使いにくいかもしれません。しかし、しばらく使えば、すぐに慣れるはずです。個人的な感想ですが、トラックパッドはポインティングデバイスとして優秀だと思います。要は慣れです。どうしてもトラックパッドは嫌だという人は、もちろんマウスも付属していますから、マウスを繋いでください。

なお、このトラックパッドはタップ対応です。つまり、トラックパッドを短く叩くことでクリックすることができます。2回タップすれば、ダブルクリックです。

モービルマシン・プレ出動

モービルマシンが整いつつあった98年3月にモービルマシンをテスト稼動させ、3/12尼崎ピッコロシアター、3/24西宮バートンホールにてライブ演奏を行いました。この時はモービル1に個人所有のAudioMedia IIIとSample Cell IIを装填、MAX+MSPとSuperColliderをベースとしたDSPプログラムによる演奏でした。いずれもCPUパワーを必要とする作品でしたが、まったくトラブル無く稼動し、無事役目を果たしたことをご報告します。

 

戻る