A-X-E-S

25 The System -The running environment.
AXESはSonyが開発したCommunityPlace Systemを用いている。このシステムはVRMLをマルチユーザ空間として実行するためのシステムである。サーバとしてSun workstation 上で動作するCommunityPlace Server, クライアントとしてWindows95上で動作するComunityPlace browserを用いている。なお、クライアントソフトウェアはhttp://vs.sony.co.jp/から無償でダウンロード可能である。本システムはSonyがVRML標準仕様に対して独自に拡張したノードを使用しているため、CommunityPlace browser上でのみ動作する。
AXESに接続するには、Internetに接続されたWndows95環境が必要となる。また、AXESの世界データは大きいため、あらかじめAXESの世界データをダウンロードしておく事が望ましい。AXESホームページからダウンロードした世界データをCommunityPlace broser上で実行すると、自動的にブラウザはCommunityPlace Serverに接続を行なう。
マルチユーザ環境は、CommunityPlace Serverを用いることによって実現されており、複数のユーザが同時にAXESの世界にアクセスすることが可能である。あるユーザが行なった活動は、CommunityPlace Serverを介して他のユーザに知らされる。他のユーザの存在は、VRMLブラウザによって表示される画面を通して確認することが可能であるが、そのためにはユーザの視界内に他のユーザが存在している必要がある。そのため、画面を通して他ユーザの存在を確認することは非常に困難である。一方、画面を用いずに各ユーザの存在を確認することが可能である。すなわち、各ユーザの行動は仮想空間全体に変かをもたらすため、各ユーザは自分の周囲に広がる音楽環境を通して他のユーザの存在を確認できるのである。

The sense of hearing.
-The structure of the world A-X-E-S.
AXESの世界にはいくつかのオブジェクトが存在する。オブジェクトは、ユーザとの距離に応じて違う形態でユーザの前に現れる。形態にはコンポーネントとフレーズという2種類が存在する。
図がコンポーネントである。コンポーネントの形状は立方体である。コンポーネントには複数のフレーズが含まれる事物である。AXESには9つの異なったテーマを持つコンポーネントが存在している。ここでテーマとはOrchestraなどの音の特性を表すものである。それぞれのテーマに合わせたフレーズが含まれている。9つのコンポーネントは一つの巨大な立方体の各頂点、および中心の場所に位置している。この巨大な立方体が自転するような軌道で各々のコンポーネントは移動している。また、各コンポーネント自身も自転を行なっている。
フレーズは音源とトラックによって構成される。それぞれのコンポーネントには図のように複数のフレーズが含まれている。フレーズは8本が束ねられて一つの群をなす。一つのコンポーネントには2〜3のフレーズ群が含まれている。音源は小さな立方体によって表現されている。音源には、コンポーネントに付けられたテーマに基づいてあらかじめ作成した短い音データがそれぞれつけられており、常に与えられた音データを再生している。トラックは音源が移動する軌道を示したものである。また、一つのトラックには一つの音源が存在している。音源がトラック上を移動する速度は、音源毎に異なっており、トラック上を往復している。加速度は0である。フレーズはそれぞれ異なった速度で回転運動を繰り返している。
同一のオブジェクトに対し、コンポーネントとフレーズという2つの形態が同時に用いられることはない。仮想3次元空間上にコンポーネントが表示されるか、それともフレーズが表示されるかという点は、ユーザがどれだけその事物に近付いているかという点に依存している。ユーザが事物から離れている時点ではコンポーネントが表示されている。ユーザがコンポーネントに近付くと、コンポーネントは消失し、フレーズが表示される。逆に、フレーズが表示されている時、そのフレーズから遠ざかるとフレーズは消失しコンポーネントが表示される。上述したように、コンポーネントは非常に単純な形状であり、音源が表示されてはいない。音源はフレーズ内だけに表示されている。しかし、コンポーネントが表示されている時も音源は機能しており、仮想3次元空間上に音は鳴り響く。コンポーネントとフレーズの差は、あくまでユーザからの見え方が異なっているだけであり、オブジェクトが持つ性質には全く違いはない。

-Use the standard computer display as a presentation environment.
多くのVRML作品において、最も重視されるのはVRMLによって構築された仮想3次元空間の表示である。仮想3次元空間を効果的に表示することは大変難しく、HMD、あるいはCAVEなどのVirtual Reality分野において研究される表示システムが用いられることもある。CAVE等の大規模な表示システムを用いた場合、仮想3次元空間に存在する情報は、3次元空間情報を維持したまま現実世界に具現化される。一方、コンピュータディスプレイを表示システムとして用いた場合、情報は、2次元平面である画面上に表示される。この方法には、「表示される情報が、仮想3次元空間上の非常に限られた範囲のものに限られる事」と「情報が持つ3次元空間情報が破棄される」という2つの問題が存在する。
本作品は、仮想空間上に構築された音楽環境を、3次元音響システムを用いて現実空間に具現化することが目的である。コンピュータディスプレイを用いた際に生じる上述のような問題によって、我々の本作品におけるコンセプトは明確なものとなる。上述したように、本作品におけるオブジェクトの表示は、ユーザの位置に応じてコンポーネントとフレーズという2段階に切り替わる。仮想3次元空間上に常に存在する音源は、常に表示されているわけではない。さらに、コンピュータディスプレイによって表示される情報は、限られた視界の範囲内のものである。ユーザがAXESを視覚を通して捉えようとした時、この仮想3次元空間の本質は全く捉えられない。ユーザが捉えることが出来る情報は、一部の表面的なものにすぎない。ユーザがAXESを聴覚を通して捉えようとした時、仮想空間情報はユーザの周囲の情報環境に再現される。この聴覚を通した空間の把握を際だてるために、我々は出力装置としてディスプレイを用いた。

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