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「赤ずきんちゃん伴奏器」

作品集CD「赤ずきんちゃん伴奏器」は1991年までの三輪の作品のうち主要な作品4曲を納めています。(発売元:フォンテック。CD番号RZF1010


赤ずきんちゃん伴奏器



赤ずきんちゃん伴奏器は歌手が発する声の音高、強弱をコンピューターがその場で読みとり、その情報を「赤ずきんちゃん伴奏器」と名付けられたプログラムが処理し、自動演奏ピアノによって伴奏するシステムである。リートという伝統的な歌とピアノによる伴奏を想定したこの作品ではあるが、伴奏部が事前に作曲されているのではなく歌手の声によってリアルタイムで生成=作曲されるところに大きな違いがある。4つの有名なグリム童話、「赤ずきん」、「白雪姫」、「狼と7匹の仔山羊」、「ヘンゼルとグレーテル」と、この作品自身についての技術解説文、そしてピッチ検出に使われたVP-70という製品についての音楽雑誌に掲載された新製品紹介のテキストを切り刻みでたらめに並べたものが脈絡もなく語られ、歌われる。曲中で歌われるメロディーだけは作曲者の手によって書かれた。


ディテュランベ



R「DITHYRAMBE」は友人の結婚祝いとして計画され、デュッセルドルフ、ロベルト・シューマン音楽大学のR37で制作された。縁起の良い結婚のプレゼントに仕上げるべく、この作品では能の「高砂」及び作曲者夫婦の声のサンプルが素材として使われている。音高分析された能の謡をもとに、これらのサンプルはこの作品のために書かれたコンピューター・プログラム「高砂」によってコントロールされ、テープに定着された。タイトルのDithyrambe(ギリシャ語ではDithyrambos)は古代ギリシャのディオニソス祭で歌われた情熱的な合唱(曲)のことで、ギリシャ悲劇の源と言われている。


夢のガラクタ市



前奏曲とそれに続くリートの2部からなる小品「夢のガラクタ市」は、アムステルダムに住むハーピスト長澤真澄のために書かれた。この作品のために開発されたコンピューター・プログラムは現実のハーピストに加えてさらに2台の架空のハープをリアルタイムでシュミレートすると同時に、サンプルされた街頭の雑音や子供達の声、喫茶店の談笑などの日常音の再生を制御する。これらのファンクションはハーピストによって演奏時に直接コントロールされ、ひとりの奏者による”合奏”を可能にする。ある空間に置かれた”もの”とそれを取り囲む環境とが互いに意味を与え合い、変質し合うかのように、それぞれの音素材が相互に干渉するコラージュ風の作品である。、ハーピストによって歌われる詞は、ミヒャエル・エンデの詩集「夢のボロ市」の同名の詩による。


歌えよ、そしてパチャママに祈れ



二つの楽章からなる「歌えよ、そしてパチャママに祈れ」は「音響による物語」という発想から生まれた。エンドレステープに録音された約3分間のボリビア民謡が音高分析され、作曲者によるコンピューター・プログラム、「RRH-TRANS」によってさらに、シューベルトの有名なオクテットと同じ編成の8楽器のための楽譜へと変換されたものがこの作品である。曲の演奏に際して、作曲に用いられたエンドレステープはポータブル・カセットテープレコーダー(ラジカセ)によって全曲を通して小さな音でステージ上で再生される。つまり、もし作曲時と完全に同じタイミングとテンポでテープとアンサンブルの演奏が開始されれば、作曲時のテープと楽譜の関係がそのまま再現されることになるのだが、そのようなシンクロニゼーションは要求されていない。素材となったボリビア民謡はカーニバルで未婚女性の高いファルセットによって歌われるもので、この作品のタイトルもその歌詞から得た、。なお、「パチャママ」は現地の信仰により豊作、大地、過去−未来を司る女神で、各楽章のサブタイトル、「過ぎゆくもの、来るもの..」と「はじめのおわり」はそのイメージから得た作曲者の自由な命名による。

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