毎日jp(2010 3/5)

読売新聞(2010 3/6)

下記朝日新聞の「天声人語」(2009. 5/22)掲載数日後に送った朝日新聞社への投書
(「声」欄などへの公開は希望せず)

「天声人語」で、私が最近気になっていたことに触れらていて複雑な気持ちになりました。「モスキート音」なるものを発生する装置を使って、「真夜中の公園にたむろする若者を追い払う実験が、きのう東京都足立区で始まった」という話題です。この話を私は、数日前にラジオのニュースで聞いてただひとりすごくショックを受けていました。迷惑な若者達を追い払うために彼らにしか聞こえない(はずの)音を使って「追い払う」試み・・まず、その発想それ自体に、そして、それが、困っている周辺住民達の「奇行」ではなく自治体の「試み」として行われ、またさらに、そのことを何の違和感もなく報道するメディアに私は驚いたのです。
他人の迷惑が想像できない身勝手な若者は叱られるべきです。そして必要ならば罰を受けても仕方がないかもしれません。しかし彼らはゴキブリやネズミではありません。私達がかれらを「駆除」するかのように、そのようなテクノロジー即ち「暴力」によって処遇することを誰もが公然と正当化することは、私には正気の沙汰とは思えません。若者達に「おまえらうるさい!」と住民が叱って、彼らに逆ギレされたら・・と思えば尻込みしてしまうかもしれないし、警察に通報しても相手にしてもらえないのが日本社会の現状なのかもしれません。しかし、そうなら、まさにそちらが問題なのであって、一定年齢以上の人々にはその存在すら意識されないグロテスクな音響発生装置によって若者を「駆除」することがひとつの解決策だとは私にはどうしても思えません。そして、それを他ならぬ「年を重ね」ているらしい天声人語の筆者が当然のことのように語っていたことに驚いたわけです・・「年を重ね」た大人が話題にすべきなのは「はた迷惑な若者達」などではなく、テクノロジーを用いたこのような無言の暴力を公然と認めるようになった、即ち子供達(若者)を害虫のように表象するようになった私達の社会の方ではないでしょうか?  三輪眞弘



天声人語/朝日新聞2009. 5/22 (朝日新聞のウェブから引用)

 首都圏に及んだ新型インフルエンザには、後年「学園かぜ」の名がつくかもしれない。関西の感染者の8割が10代、東京都と川崎市の患者もまずは高校生だった。活動的な分、ウイルスに接する確率も高いのだろう。軽く抜けるよう祈りたい▼ところで、音の世界にも「青春限定」があるらしい。個人差もあるが、うんと高周波の音は、聴覚が衰える前の若者にしか聞こえないという。音の分際で人を選ぶなと気色ばむ中高年も、これがひどく耳障りだと知れば安心しよう。「モスキート(蚊)音」と呼ぶそうだ▼その性質を利用し、真夜中の公園にたむろする若者を追い払う実験が、きのう東京都足立区で始まった。06年に英国で生まれた「蚊音」発信器を据え、ベンチやトイレが壊される被害を防ぐ試みという▼音は40メートル届く。千葉のコンビニ店主が試したところ、店先の少年たちが数分で退散したと聞く。ただ、広い公園を高周波音で満たすには、一台20万円の発信器がいくつも要る。それより騒ぐ元気をほかで発散できないものか▼ キーンという金属音と言われても、優に30年は手遅れの当方、不快のほどは想像するしかない。枕元の羽音を思い出すのがせいぜいだ。聞きたくもあり、聞きたくもなし▼年を重ねると、不快な音ばかりか不快な話は耳が拒み、うっかり聞いても右から左へ抜けるようになる。老化、いや心穏やかに過ごす知恵だろう。かたや何にでも鋭く反応するのが若さである。40度に近い高熱は困るが、透明な音に追われる青い感度が、いくらか妬(ねた)ましい。 

(私の投書に対して朝日新聞からの返答はありませんでした。三輪)