メディア人類学
講師:小林 昌廣

授業のねらい・特色

メディア(media)は酵素(enzyme)に似ている。ともに何かと別の何かとを媒介することで、両者に新しい関係をもたらすからだ。それでいて、メディアそのもの、酵素そのものは自らの構造を変えることなく、つねに新しい関係をつくりつづける。この「メディア人類学」は、メディアを広く「媒介するもの」という意味で捉え、それがヒトの文化や歴史にいかなる役割を占めているかを考察してみたい。メディアによりヒトの想像と創造がどのようにしてその可能性の翼を広げていったかについて想いをはせてみたい。アートとしてのメディアはもちろん、ヒトそのものもメディアとして機能しうるし、さまざまな生活習慣もまたメディアとしての特性をもっている。
医学・医療(medical)や瞑想(meditation)も同じ起源をもったことばであり、これらについて触れずしてメディア人類学は成立しえない。そしてこの講義もまたひとつのメディウムとなって、学生諸君の意識と無意識とに新しい関係を生み出すであろう。

内容・授業形態

開講時に学生との相談によってその形態もかたちづくってゆきたいが、比較的長い時間が設けられているので、少々長めのヴィデオや音楽に接してもらうかもしれない。

授業項目

「メディア」と「人類学」
人類学の射程1 「映像人類学」
人類学の射程2 「医療人類学」
人類学の射程3 「応用人類学」 
メディアとしての身体1 「免疫系」
メディアとしての身体2 「脳―神経系」
メディアとしての身体3 「無意識」
メディアとしての身体4 「自己治癒力」
メディア人類学の領域1 「ダンスと舞踏」
メディア人類学の領域2 「芸術療法」
メディア人類学の領域3 「非言語的コミュニケーション」
メディア人類学の領域4 「表現としての病い」

教科書/参考書

テキストや教材はその都度教室で配布し、参考となる文献や作品も講義において紹介する。ただし、以下の文献をふまえて講義の一部は展開されている。
小林昌廣『病い論の現在形』 青弓社
小林昌廣『臨床する芸術学』 昭和堂

評価方法

講義終了後のレポートと講義への貢献度(出席ばかりでなく、講義であつかったビデオなどに対する積極的な意見の有無なども含む)。人類学はフィールドが基本である。各自もできるだけフィールド調査することが望ましい(何も見知らぬ奥地に出かけるのだけがフィールドではない。美術館や自分の身体も立派なフィールドである)。