岐阜県の専門学校に通っている福田さんの日常生活の実写映画。


1話「日曜日」
親からもらった蟹を福田さんは友人と
食べる。

2話「かけら」
福田さんは友人の茶碗を割ってしまう。

3話「バドミントン」
福田さんが捨てたバドミントンを友人が
拾ってくる。

4話「なんでもない日」
夜,福田さんの家に友人が訪れる。









この作品は4つのエピソードで構成したオムニバス映画です。現代の若者の抑えたコミュニケーションを,オーソドックスな映像構造で表現しました。ネットワーク社会と呼ばれる現実空間の,その網目にできた小さなコミュニティーに目を向けて制作しました。ありふれた情景と些細な会話シーンを,フィックスショットで丁寧に切り取り,再構築することで,登場人物の微妙な心理と感情を伝えていきたいと思いました。その為にも,脚本はナラティブ(物語)性を抑えて考えました。また,音はすべて同録で行い,登場人物の台詞と生活の音だけで構成することで,ビデオならではの臨場感を狙いました。主役の福田さんは実生活でも作者の友人であり,話の中には実際のエピソードをもとにしている箇所もあります。このように”福田さん”を取り巻く生活環境,人間関係,生活テンポなどを,映像で見せることで”福田さん”という人格を浮かび上がらせたいと思いました。













■ 望月六郎(映画監督)評
「福田さん」は,不思議な味わいの作品であった。身近な友人をカメラの中心に据え,作者も含めた人間関係の日常スケッチなのだが,全編が端正なフィックスショットの積み重ねでできている。本来こういった作品はドキュメンタリーでこそ生きる題材と思われるのだが,この劇映画を通して私は確かに「福田さん」その人に会えた気がした。その事はタイトルからも明らかなように確実に作者の狙いなのである。

■ 村山匡一郎(映画研究者)評
「福田さん」は,日常生活の人間関係を四つのエピソードのドラマとして構成したビデオ作品。主人公は作者ではなく友人であるという点に,自分と他者との関係をもう一つ反転させた関係を導入しながら,日常における人間関係の優しさと残酷さをうまく作品世界に仕立てている。しかも,その淡々とした展開の間合いは,作者の個性がしみ込んだ独特のリズムを生み出しており,人間関係の観察というドキュメントな要素を昇華させている姿勢がよかった。

(イメージフォーラムフェスティバル1999パンフレット−審査員講評−より一部記載)



宇田 敦子
Atsuko UDA

卒業生

多摩美術大学インテリアデザイン専修卒業
1999年 IAMASマルチメディアスタジオ科卒業
現在、神奈川大学工学部物理学教室
宇佐美研究室所属 CG制作担当)