米をかき混ぜることによって生じる力は、感圧センサを介してPCによってCGの大きさ、色、座標数値、音のボリュームなどに変換され、表現されます。出来上がったCGオブジェクトは米を敷き詰められているアクリル板にプロジェクションされます。そのCGオブジェクトはアクリル板上で一番力のかかっている場所へプロジェクションされるようになっています。


インターフェイスの実験という取組みで始まりました。機械的なものではなく、猫を撫でたり、ふかふかの絨毯を触るような自然で、かつ曖昧な感覚を形にしたかったのです。そこで不定形な砂状のものを使うことにしました。砂や土よりももっと身近なものは何かと考えたとき、一つの素材が浮かび上がりました。それは米でした。装置は、私の予想外の物体となってしまいました。「場」になってしまいました。知らない者同士はインタラクションを楽しむうちに、米の下を動く光のオブジェクトに対し、支配欲が生まれます。争奪戦が始まります。我にかえったとき、お互いに笑いと会話が生まれます。米をかき混ぜながら、会話を始めます。かき混ぜるという行為が心地よく、相手に深く関わりあうことなく、会話がぼんやりと進んでいきます。インターフェイスを作ったはずが、インターフェイスとしての役割はほんの短い間だけです。あとはただの白い砂場になってしまったのです。


肥後 有紀子
Yukiko HIGO

ラボ科2年

1997年大阪芸術大学芸術学部デザイン学科卒業