参加者には、事前に、36枚撮りフィルム4本分の写真を撮影するという課題が出される。撮影内容は全く自由である。ワークショップでは、自分が撮影した144枚の写真の中から10枚を選び、それらを白い紙の上にレイアウトする。また、他の参加者の写真についても、同じように10枚を選び、レイアウトする。最後にレイアウト成果と、その意図を発表し、ディスカッションを行う。






「写真を撮る」とは、どういうことか。ある風景を、四角いフレームで切り取るとき、そこにはどんな意味が生まれるのか?大量の写真を強制的に「撮らされる」という体験は、日常の風景から、自分が何かを選択するという行為について、改めて考えさせずにはおかない。また、それらの写真を、後になって編集する作業は、ある場所、ある瞬間を記録したはずの写真を、文脈から切り離された「モノ」として扱うことに他ならない。他人の写真については、さらに本来の意図とかけ離れた解釈が生まれうる。これは、他者の主体に対する越権行為である。と同時に、作品を自由に拡張する可能性も秘めている。
ワークショップでは、写真のもつ公共性(あるいは断片性)と、体験の一回性をめぐって、様々な議論が交された。時には、意見の対立から激しいやりとりになる場面もあったが、「撮ること」「作ること」について、参加者一人一人に何らかの答えを残してくれた1週間だったと思う。






■ クリエイティブワーク
クリエイティブワーク:毎年前期に、学内外から様々な分野のスペシャリストを招き、1週間を通して行われるワークショップ。担当講師ならではの個性的なテーマを掲げ、通常の授業とは異なる体験を通して自由な発想や新しい知識に触れることが目的。 Acte Kobe Japan:高嶋氏が参加する、フランスのマルセイユと神戸のアーティストを結ぶネットワーク。阪神大震災の救援活動をきっかけに始まった。神戸とマルセイユで同じ一日を使い切りカメラで撮影し、交換するプロジェクトなどを行っている。(annual)



高嶋 清俊
Kiyotoshi TAKASHIMA

招待講師

1954年大阪府生まれ
写真家
1993 「鉄と線、石と面」個展 デジタローグ
1996 「ON PHOTOGRAPHY」個展 大阪造形センター
1999 「近さと隔たり 」個展 TOKI ART SPACE (Tokyo)