Interval Watch


特殊相対性理論によると時計が測定するものは、時間ではなくインターバルである。普通の時計はそれを明示してはいない。この作品では時計を持っている体験者の移動距離を測定し、静止していた場合の経過時間をいっしょに表示することで、実際の不変量が、時間でなくインターバルであることを示そうとしている。現実の空間において、目に見える変化が出る速度で移動することは不可能なので、コンピュータ内に仮想的な空間を作り移動するようになっている。









period of time


さまざまな時間のスケールを持つ自然現象を、シミュレーションしコンピュータグラフィックスを用いて視覚化した作品。インタフェースとして、進む速さの異なる7つの時計を用意し、手元で操作することで、時間の進み方をコントロールする。それぞれの自然現象の解説をのせたウェブサイトがリンクされており、体験者はその内容を調べることができるようになっている。






 若きころ、時間の進み方が変わることがあるのだと聞いたとき、衝撃であった。しかしながら、いまだその心を体験したことがない。相対論的な効果が測定機器なしで実感できる速度、加速度で移動してみたいが、現在のところ不可能である。
科学者のアプローチは、精密な測定機器を開発したり、または天体などの移動速度が大きい現象の観察をしたりして、微小な差異を検出することである。測定される物理量の関係式を学習したり、実際に測定機器を見たりもしたが釈然としない。
光速を自転車の速度ぐらいに調節した空間で移動するとどのような事が起こるかを映像化したものをカールセーガンのコスモスでみた。自分でもなんとなくそんなものを作ってみたくなった。 その背景となる理論を学び計算してみたが実際に計算するのが大変であった。そこで理論のパラメータをいろいろ変化させて、シミュレーションをする装置があればよいと考えた。コンピュータを使ってシミュレーションをしてみたが、自分では理解できても、他人にみせるとまったくわかってもらえなかった。見て何かすぐわかるようでなければと思いCGをつけてみた。

 コンピュータの性能の限界で抽象的なものしか描けず、自分でも今一つ理解が不能であった。インタフェースがマウスとキーボードだけでは、インパクトが弱いと思い、特別なインタフェースを作ってみたが、特に理解が深まった様子はなかった。ただしインパクトはある程度ふえた。コンピュータの性能が上がり、多少なりとも現実感のあるシミュレーションができるようになった。これはどこまで現実感が追求できるかわからないので、今後の課題。

 このような作品に多少なりとも価値を見出すとするならば、さまざまな現象の存在を知らないもの、特に子供たちにそういったことがあるということを知らしめることができることであろう。
そのようなことを知らずに一生を終えたら少しもったいないという気がする。そしてその式などのの表すものをより深く理解し、自由自在に使って興味深いものがつくれたらなかなかよいと思うのである。



■ Misner Thorne Wheeler "Gravitation" Freeman (1973)
重力の理論の表現に必要な数学、実験についてなどあらゆる情報が網羅されている。 1000ページを超える大著なので、読みこなすのは大変。その代わり同じ内容をさまざまな数学的手法で解説してあるので、理解を深めるのには最適だと思う。 ただしまだ全部読んでないので推測の域をでない。 この本を見なかったら作品を製作しようとはおもわなかったとおもう。(橋本英之)

■ Interval=dt-dx-dy-dz
インターバルと時間的空間的距離の関係式 普段の生活では空間的な移動を示す-dx2-dy2-dz2 の部分が小さいためにインターバルと時間が等しいようにみえる。 dは変位が線形になる程度の微少な価であることを表す記号、x、y、zは空間に埋め込んだ座標系の軸、tはその座標系で測定した時間を表している。(橋本英之)



橋本 英之
Hideyuki HASHIMOTO

ラボ科2年


1990年 東京大学卒業