近森 基+久納鏡子

近森 基
1971年、東京都生まれ。
1998年、筑波大学大学院修士課程芸術研究科デザイン専攻総合造形分野修了。
現在、カールスルーエ造形大学に在籍。

久納鏡子
1972年、東京都生まれ。
1997年、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
現在、慶應義塾大学アートセンターに勤務。

1996年より共同制作を始める。97年アルス・エレクトロニカに出展、98年には文化庁メディア芸術祭部門大賞受賞。同年、その他国内外での展覧会で発表。

[KAGE-KAGE]

日本語の「かげ」という言葉は、物体の投影という意味での「影」を示すと共に、「存在」を意味する単語として用いられる。例えば、全く存在しえないということを「影も形もない」と表現したり、非現実的な現象である幽霊は影を持たないと昔から信じられている。それは、影が常に、物体がそこに在ることの証しになっているからである。しかしながら、前作「KAGE」の中では、その命題は適用されない。床面に投影された三角形の影達は、主であるはずの円錐形のオブジェに手を触れた途端、多彩に変色したり、魚や飛行機や様々な形態に姿を変え、動き出す。実は、この影達は、全てCGによって作り出された偽物の影である。そして、これらの現象が起こっているとき、観客はいつもプロジェクターの光で上から照射され、観客自身の影も床面に投影されるのだ。CGによる偽物の影と自分自身の本物の影が同時に同じ平面上にあることを発見したとき、彼は自分の影と存在を再認識するのである。

前作「KAGE」は、そもそも子供の影絵遊びから着想を得た作品ゆえか、観客がインスタレーションに興ずる様子は、遊び場で夢中になる幼い子供達を連想させる。我々は、ここでもう一つ新たな「現実感」の作用に気が付いた。「共同現実感」とでも言うべき、複数の観客が同時に作品にコミットした際生じる、「共有された場」特有のリアリティーである。「KAGE-KAGE」では、この「共有された場」を立体的な空間に拡張し、様々な現実感の多元的融合を試みた。

平行に向き合って立てられた二枚の壁がある。その内側に取り付けられたいくつもの円錐形オブジェに観客が触れると、二つの壁の間で、三角形の影が様々な変化を見せる。正面の壁から飛び出した魚のシルエットが後方の壁の中に波紋と水音を残して飛び込んだかと思えば、後側の壁から「ハロー」と言って手を振る人影に、前面の壁にも現れた人影が「ハロー」と返す。実体を持たないヴァーチュアルの影に加えて、壁と壁に挟まれた「間」が、存在しないはずの物体に不思議なリアリティーを与えるのである。

ともあれ、「かげ」と「かげ」の隙間に入り込んで、そこに在るあなた自身の「存在」を確かめてみてもらいたい。

インターフェイス制作: クワクボ リョウタ