ロナルド・マクニール/ウィリアム・キース

ロナルド・マクニールは、MITの芸術デザイン工学部卒業、RISDにおいて芸術修士号を取得。MITメディアラボで故ミュリエル・クーパー女史と視覚言語ワークショップを共同創設。インテリジェント・グラフィクス・グループの長となり、現在は建築部門の未来住居グループのメンバー。1998年からMIT、CAVSの主任研究員。1977年より実験版画制作者、フリーランスのカメラマンとなり、コンピュータを用いた描画/印刷、個人用のインテリジェント・デザインツール、制約と事例を取り込んだグラフィック・プログラミングツールなどを研究。最近はシームレスな超高画質投射型ディスプレイや、ユーザーをデータのなかに取り込むような新しいインターフェイスに着手している。
ウィリアム・キースは、ケベック(加)に生まれ、1991年に理学士、1997年に芸術学士をオタワ大学にて取得。この10年間、写真や彫刻、インスタレーション、電子メディアに携わってきた。現在はMITメディアラボで理学修士候補として、広帯域デバイスをユニークに使うインタラクティブ・インスタレーションの創作を行なっている。

[からだで探る迷路ゲーム]

これは周知の迷路ゲーム。2つのつまみで垂直方向の高さを変え、平面上の球の転がる方向を決めるお馴染みのもの。面の上には低い壁で隔てられた迷路が交錯し、あちこちに開いた恐ろしい穴が球を飲み込んで、ゲームを終わらせてしまうもの。テーブルやひざの上に注意深く載せられるこのありふれたゲームは問いかける。もっとこのゲームに没頭してしまうような理想の大きさと制御の方法はないだろうか?

参加型のこの迷路ゲームは、体全体が入るようなサイズで床に投影される。この迷路ゲームをこんな観客が入り込むような大きな作品へと作り替えた理由は、ほとんど自明なものであり、それが抵抗しがたいほど魅力的だったからである。この3次元迷路モデルは、中心に仮想の回転軸を持つかのように作られて床に投影されている。ゲーム面上にプレーヤーが立つと、その位置によってその重さで傾くするように見える。投影された面の傾きによって球は、重力の法則に従っているかのように迷路の中を動く。球が穴に落ちてしまったら、また始めからやり直さなくてはならない。
プレーヤーの行動と、その感覚に伝えられるコンピュータが生み出す映像と音との間に密接なフィードバック・ループが確立するとき、人体サイズのインタラクティブ・システムは、始めてうまく機能する。「からだで探る迷路ゲーム」は、頭と体の両方を積極的に速いペースで絶え間なく動かさせることで、これを達成している。プレーヤーが体全体を使って迷路の上を激しく色々な方向を見ながら動き回ることからも、ゲームの戦略は特に教わらなくても直感的に理解されていることがわかる。
双方向の、力学にのっとった動きは、コンピュータのゲームの中にいるという不思議な感覚を味わわせる。この感じは、コンピュータが作り出すモデルがわずかに傾くことによって強調される。それはバランス感覚が試されているかのような不思議な効果をプレーヤーに与え、さらなる没入感をもたらすのである。
「からだで探る迷路ゲーム」では、大きさ、技術、内容がうまく調和し、コンピュータが操るゲームに没頭してしまうのである。

デザイン・アシスタント:ティム・マクナーニー
ソフトウェア製作協力:ジョン・アンダーコフラー、シリコン・グラフィックス社