第七十五冊 ベルクソン、フロイト『笑い/不気味なもの』
笑いの哲学の嚆矢であるベルクソンの著作はフロイトの著作と表裏をなす。それがひとりの訳者によって合本となり、両者に対して批判的な立場から論じているジリボンの論文が付されていて、研究者にとってはまことに有益な一冊。
出版社 |
平凡社ライブラリー |
発行年 |
2016年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第七十四冊 瀧口雅仁編『八代目正蔵戦中日記』
戦中日記といえば、永井荷風、徳川夢声、山本周五郎らがよく知られているが、正
蔵は噺家としての慎ましい生活ぶりを淡々と描きながら、その生活が戦争と抱合せになっていることを暗示している。正蔵落語に匹敵する面白さをもった一冊。
出版社 |
青蛙房 |
発行年 |
2014年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第七十三冊 『樋口一葉全集』全四巻(六冊)
わずか二十四年の生涯で二十作以上の名作を遺した一葉は独特の文体をもつ文豪で
あった。江戸戯作の井原西鶴の影響を受けつつも、近代文学の文脈に寄り添う、しかも女性らしい目線で描かれた日本の下町社会については再評価さるべき全集。
出版社 |
筑摩書房 |
発行年 |
1974年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第七十二冊 鶴屋南北(河竹繁俊校訂)『東海道四谷怪談』
大南北と崇められた四世南北の傑作中の傑作。初演では『仮名手本忠臣蔵』と合わせて上演され、忠義と怨念という異色の組合せこそが南北の綯交ぜの世界であると認識された。単なる怪談噺ではない、江戸の歴史を裏側から描写した一冊。
出版社 |
岩波文庫 |
発行年 |
1956年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第七十一冊 レイ・ブラッドベリ(伊藤典夫訳)『華氏451度』
珠玉の書物を紹介する場で、書物を焼く物語を選択するのは皮肉なことだが、本 書は単に「本を燃やす近未来物」という以上の、さまざまな文明批判、技術批判
人間批判が内包されている。書物を愛する人間にとっては絶対必読の一冊。
出版社 |
ハヤカワ文庫 |
発行年 |
2014年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第七十冊 岩下壮一『カトリックの信仰』
長い間入手困難だった本書をクリスマスイブの日に紹介できたのは何かの縁か。ハンセン病患者の救済に苦心し、カトリックの公教要理をつぶさに論述してゆく姿勢は、どこまでも神に仕える敬虔さが感じられる、イブに相応しい一冊。
出版社 |
ちくま学芸文庫 |
発行年 |
2015年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第六十九冊 平岡正明『完全版 山口百恵は菩薩である』
あらゆる俗なもの、禍々しきものに夥しいアンテナを張っていた著者のおそらくは
ベストだと思われる本書は、あくまでも山口百恵を「歌手」として独特の分析を加
え、ついに菩薩へと昇華せしめるすぐれた批評力は誰にも真似できない一冊。
出版社 |
講談社 |
発行年 |
2015年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第六十八冊 小寺聡編『もういちど読む山川哲学』
日本史や世界史の教科書の定番であった山川出版社から、学校という場所でなく人生という空間で読むべきものとして刊行。「倫理社会」の資料集として出されたものだが、良質な哲学の入門書となっており、大人になってから再読すべき一冊。
出版社 |
山川出版社 |
発行年 |
2015年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第六十七冊 末延芳晴『原節子、号泣す』
ある時期の日本映画において原節子という女優の存在は、映画そのものの存在と一緒であった。筆者は小津映画における原節子の身振りを「号泣」という鍵語で分析し、いつも同じ紀子という役名で登場する日本人女性の特性をくまなく描いた一冊。
出版社 |
集英社新書 |
発行年 |
2014年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第六十六冊 佐藤秀明編『人間の性 三島由紀夫の言葉』
すぐれた作家の書いた文章は、その全体を把握していなくても宝石のように輝いている。三島の文章はもう少し翳を帯びている。そんな鉛色のテキストが死後四十年を経過してもなお鈍い光を放っていることを示してくれる豊穣な一冊。
出版社 |
新潮新書 |
発行年 |
2015年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第六十五冊 石原真『AKB48、被災地へ行く』
何かと話題のアイドルグループが東北の被災地に毎月慰問に出かけていることはあまり報道されない。彼女たちはグループとして活動しながら、一人ひとりが被災地というものをどう受けとめるか純粋に悩む。新しいアイドル論として読まれるべき一冊。
出版社 |
岩波ジュニア新書 |
発行年 |
2015年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第六十四冊 西堂行人『【証言】日本のアングラ』
かつてアングラと呼ばれる分野があった。それは前衛的な演劇に対して与えられた名称であり、多くの場合自称されることは少なかった。しかしアングラ演劇が見すえたその先にあるものを現代の演劇が見通しているのだろうかと問いかけたい一冊。
出版社 |
作品社 |
発行年 |
2015年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第六十三冊 京須偕充『古典落語CDの名盤』
もちろん落語は噺家の身体を見ることがのぞましい。だが、映像で残っていない噺家の高座や名演は少なくない。一期一会の高座や綿密に準備されたスタジオで録音された音源からベストな盤を教えてくれる。落語が話芸であることを再認識できる一冊。
出版社 |
光文社新書 |
発行年 |
2005年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第六十二冊 戸井田道三監修『能楽ハンドブック』
難解な芸能である能楽に関する解説書・入門書は多いが、本書はそうした機能に加えて能楽百科事典的な様相も呈していて、殆ど「読む能楽」と化している。何度か改定されているが、能楽のもつ歴史や制度や文化に対する批判性を強く理解できる一冊。
出版社 |
三省堂 |
発行年 |
2008年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第六十一冊 ジェニス・カレーラス『フィログラフィックス』
「フィロソフィー」と「グラフィック」が合体した実験的な書物。哲学的なさまざまな95個の「イズム」をそれぞれ一枚のビジュアルで表現している。初見でその「イズム」がなんであるかがわかるほど明解な、まさに視覚化された思想を描いた一冊。
出版社 |
フィルムアート社 |
発行年 |
2015年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第六十冊 竹本住大夫『人間、やっぱり情でんなぁ』
わが国有数の義太夫浄瑠璃語りである人間国宝の住大夫師匠が、自身のこと、文楽のこと、日本の文化のことを縦横に語りつくしている。文楽にとっては標準語である大阪弁で語られているのが不思議に懐かしく落ち着く一冊。
出版社 |
文藝春秋 |
発行年 |
2014年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第五十九冊 A.ミジェリンスカ&D.ミジェリンスキ『マップス 新・世界図絵』
副題は「新・世界図絵」。イラストレーターの夫婦がすべて手描きで作成した世界地図。世界を正確に計測するよりも、世界がどのような色彩や形象で構成されているかがひとめでわかる。フォントなども日本向きにデザインされた作品としての一冊。
出版社 |
徳間書店 |
発行年 |
2014年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第五十八冊 ヨコタ村上孝之『世界のしゃがみ方』
副題は「和式/洋式トイレの謎を探る」。世界中のトイレを散策し、利用しまくった驚異のフィールドワーク。意匠や技術の問題にとどまらず、トイレ文化がそこに暮らす人の文化を形成しいてることを当然のごとく述べている珠玉の一冊。
出版社 |
平凡社選書 |
発行年 |
2015年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第五十七冊 井上和男編『小津安二郎全集』
日本映画の良心であり美学であり、またユーモアの集大成でもあった小津の映画。それは映像の見事な構成のみならず、考えぬかれた脚本があったからこそ実現しえたもの。読むだけで小津ワールドを濃密に体験することのできる重厚な全集。
出版社 |
新書館 |
発行年 |
2003年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第五十六冊 泉鏡花『天守物語』
遠くに江戸の風情をもち、近くに幻想的な世界をおびた鏡花文学の真骨頂。映画、舞台など何度も上映・上演されているが、描写の美しさ、台詞の流麗さ、そして西洋では考えられない世界観など、泉鏡花のもっとも鏡花らしい魅力が満載の一冊。
出版社 |
岩波文庫 |
発行年 |
1984年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第五十五冊 『南方熊楠全集』
日本に生まれてよかったと思うのはこの人・クマグスがいてくれたからである。この世のあらゆる知性を自らの脳味噌に圧縮し、高速度回転させて思いもよらぬ世界を創造する人間の、ごくわずかな一端だけでも垣間見ることのできるお得な全集。
出版社 |
平凡社 |
発行年 |
1975年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第五十四冊 三木成夫『胎児の世界』
キテレツな解剖学者三木成夫が生前に遺した唯一の一般向けの書物。ヒトが生まれるまでの十ヶ月余りの時間は、生物進化の五億年の過程を早足でトレースしているという説には唖然とするが、世界一ロマンチックな科学者の愛情あふれる一冊。
出版社 |
中公新書 |
発行年 |
1983年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第五十三冊 土方巽『病める舞姫』
暗黒舞踏の開祖である土方が生前に刊行した唯一の書物。暗黒と不協和音と淫靡さに満ちた、おそろしく読みにくい文体で書かれた本書は、土方巽の舞踏そのものであるという認識にいたるまで読み続けられなければならないという迫力の一冊。
出版社 |
白水社 |
発行年 |
2011年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第五十二冊 鶴見俊輔『限界芸術論』
亡き鶴見俊輔が50年代に提唱した芸術論はいまでもその衝撃度と新鮮さを失ってはいない。「純粋芸術」と「大衆芸術」を止揚したところにある「限界芸術」は現在においてこそ問われなければならないということを思い知らせてくれる一冊。
出版社 |
ちくま学芸文庫 |
発行年 |
1999年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第五十一冊 岩井寛+松岡正剛『生と死の境界線』
一流の精神科医と一流の編集者が出会い、精神科医を襲った病いをめぐって語られてゆく。凡百の闘病記の彼方にある本書は、「生の実現」を最後まで実現しつくした一人の偉大な精神科医の身体観、宗教観、生命観として読める戦慄の一冊。
出版社 |
講談社 |
発行年 |
1988年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第五十冊 小林昌廣『臨床する芸術学』
晴れある第五十冊は拙著という自惚れないし体たらくではあるが、本書が書かれ十六年経過した現在でも、「芸術学」なる領域には舞踏も映画音楽もマンガも、そして批評すら含まれていないということを改めて戦慄するために選ばれた一冊。
出版社 |
昭和堂 |
発行年 |
1999年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第四十九冊 アーレント(志水速雄訳)『人間の条件』
IAMAS生なら読んでおくべき一冊シリーズ第十弾。人間の生活を「仕事/労働/活動」の三態に分け、それらの緻密な分析から人間=大衆のありかたを捉え直し、来るべき未来のためにいかに過去を読み解くかを膨大な文献によって示唆した一冊。
出版社 |
ちくま学芸文庫 |
発行年 |
1994年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第四十八冊 サルトル(松浪信三郎訳)『存在と無 全三巻』
IAMAS生なら読んでおくべき一冊シリーズ第九弾。ドイツ占領下のフランスにおいて「人間は自由の刑に処せられている」と喝破し、「存在する」というただ一点のみを現象学的にどこまでも怜悧に深く潜行した一冊。
出版社 |
ちくま学芸文庫 |
発行年 |
2007年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第四十七冊 井筒俊彦『意識と本質』
この世界有数の知性が語ることばを傾聴しなければならない。世界がいかに紡がれているかを、汗牛充棟なる文献や自身の経験を駆使して、軽やかさとは完全に一線を画した姿勢で討究しつづけた渾身の一冊。
出版社 |
岩波文庫 |
発行年 |
1991年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第四十六冊 ヴァルター・ベンヤミン(佐々木甚一訳)『複製技術時代の芸術』
IAMAS生なら読んでおくべき一冊シリーズ第七弾。アート、デザイン、メディア。そうしたコトバに敏感にならざるをえないと考えている現代人にとって、つまりは21世紀を生きる人間にとって決して避けて通ることのできない絶対必読の一冊。
出版社 |
晶文社 |
発行年 |
1999年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第四十五冊 レヴィ=ストロース(大橋保夫訳)『野生の思考』
IAMAS生なら読んでおくべき一冊シリーズ第六弾。いま、相対主義というのは八方美人的な軽薄な発想として却けられつつある。だが本書は、相対主義の強さ、繊細さ、そして高貴さが徹底的に開闢されている一冊。
出版社 |
みすず書房 |
発行年 |
1976年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第四十四冊 メルロ=ポンティ(滝浦静雄+木田元訳)『眼と精神』
IAMAS生なら読んでおくべき一冊シリーズ第五弾。20世紀の思想シーンに最も巨大なインパクトを与え、現在なおも与え続けてくれている書物。「眼」でも「精神」でもなく「と」が重要であるという近代的知性を表明した一冊。
出版社 |
みすず書房 |
発行年 |
1966年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第四十三冊 イマニュエル・カント(中山元訳)『純粋理性批判』
IAMAS生なら読んでおくべき一冊シリーズ第四弾。まだ「純粋」や「理性」や「批判」が認知され希求されていた時代に書かれた書物だが、今日までも読み継がれるのは、哲学が「問い」に終始するという基本に立ち返らせてくれる一冊。
出版社 |
光文社古典新訳文庫 |
発行年 |
2010年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第四十二冊 九鬼周造『「いき」の構造』
IAMAS生なら読んでおくべき一冊シリーズ第三弾。本書を哲学書として読もうとすれば、それ自身が無粋な暴挙であり、ただちに挫折することは必須。日本文化論ないし古典芸能論として読むことを誘惑させられる一冊。
出版社 |
岩波文庫 |
発行年 |
1979年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第四十一冊 ハイデガー(高田珠樹訳)『存在と時間』
IAMAS生なら読んでおくべき一冊シリーズ第二弾。書名を知ってはいるものの誰も読んだことのない書物の筆頭にあがる本書は、じつは「存在」と「時間」について書かれてはいない。冷厳な死と著者の格闘の記録として読める一冊。
出版社 |
作品社 |
発行年 |
2013年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第四十冊『源信 往生要集(日本思想体系6)』
IAMAS生なら読んでおくべき一冊シリーズ第一弾。現代人必携の書であり、往生や看取りなどターミナルケアに与えた影響は大きい。仏教的な死生観を観念ではなくむしろ仏教解剖学的に捉えた、まったく褪せることのない一冊。
出版社 |
岩波書店 |
発行年 |
1970年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第三十九冊 長谷川一『アトラクションの日常』
副題は「踊る機械と身体」。100の動詞を開示しながら、その身体性と非身体性、あるいは機械性と非機械性について討究してゆく。そして身体こそが、日常と非日常との境界に他ならないと教えてくれる一冊。
出版社 |
河出書房新社 |
発行年 |
2009年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第三十八冊 サンキュータツオ『ヘンな論文』
重要なことは学問的な精緻さや新奇性などではない。あくなき好奇心とたゆまぬ追求心、研究というものはそれに尽きる。平凡であり続ける非凡さと非凡を平静に装うセンスこそがすぐれた論文になると知らされた一冊。
出版社 |
角川学芸出版 |
発行年 |
2015年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第三十五冊 渡辺保『日本の舞踊』
日本舞踊のすぐれた批評家でありながら「舞踊とは何か」という地点で見えてこなかった問題群を抽出し、これからの舞踊鑑賞や舞踊批評にとって大切な、「注意事項」が多く書かれた、役に立つ一冊。
出版社 |
岩波新書 |
発行年 |
1991年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第三十四冊『バスター・キートン自伝』
ストーンフェイスと言われた喜劇王キートンの自伝。軽妙な語り口でキートンの人となりがよくわかる一方で、サイレントからトーキーへと移行するアメリカ映画史の一断片を知るためにも貴重な一冊。
出版社 |
筑摩書房 |
発行年 |
1997年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第三十三冊 高草木光一編『思想としての「医学概論」』
澤瀉久敬が「医学概論」を講じたのは戦時中のこと。だが医学を哲学として捉える発想は重要性とは反比例して冷遇されている。それに対する危機感が本書を編み出した。医学について語るために必要な一冊。
出版社 |
岩波書店 |
発行年 |
2013年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第三十二冊 寺山修司『寺山修司演劇論集』
事件とも言われ、また社会科学とも称された寺山演劇の根幹について知ることができる。寺山の演劇論は最初の一文字目から演劇論であることを拒絶し、同時に演劇論でしかないことを標榜する。まことに21世紀的な一冊。
出版社 |
国文社 |
発行年 |
1984年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第三十一冊 吉岡郁夫『いれずみ(文身)の人類学』
いれずみ、文身、彫り物、刺青、入墨と表現される身体変工術が、我が国においてはどのような歴史的変遷を経てきたかについて詳細に調べられている。華やかさはないが、民族のアイデンティティが理解できる一冊。
出版社 |
雄山閣出版 |
発行年 |
1996年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第三十冊 西田正秋『人体美学(上・下)』
明治以降我が国で研究されている美術解剖学の大成者である筆者の主だった論文や著作がまとめられたもの。美術表現において身体の構造は医学とは別の文脈で必須の知性であることを教えてくれる一冊。
出版社 |
現代社 |
発行年 |
1992年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第二十九冊『決定版 三島由紀夫全集』全四十四巻
本図書館に所蔵されていなかったことは強く恥じなければならない。表現という問題に立ち至ったときに、つねに参照されなければならない作家であり、まだまだ援用や応用の可能性を残した逞しい全集。
出版社 |
新潮社 |
発行年 |
2000年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第二十八冊 井上ひさし『自家製 文章読本』
すぐれた読み手がすぐれた書き手とは限らないが、すぐれた書き手は間違いなくすぐれた読み手であり、本書は無類の読書家でもある作家の独自の文章論。漱石文学における「だから」の説明が泣かせる一冊。
出版社 |
新潮文庫 |
発行年 |
1987年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第二十七冊 ジャン=リュック・ナンシー『思考の取引』
「読むという行為は書物の形質を綴じ、読み直すのだ」と断ずるナンシーの、紙としての書物論。書物というもののもつ特性を余すところなく記述した、読書論でも活字論でもない、まさに書物論としての一冊。
出版社 |
岩波書店 |
発行年 |
2014年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第二十六冊 高野文子『ドミトリーともきんす』
学生寮ともきんすに集まる未来の天才たちと寮母のとも子と娘のきん子がおりなすドラマだが、すぐれた科学啓蒙書となっている。多くの漫画家に尊敬され支持される漫画家の静かなる一冊。
出版社 |
中央公論新社 |
発行年 |
2014年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第二十五冊 小川順子『「殺陣」という文化』
殺陣、タテ、立廻りの言語的起源から追求し、映画においていかに殺陣が重要な演出になったかについて多くの映像と文献を駆使して書かれた筆者の博士論文。時代劇映画好きの方にはおススメの一冊。
出版社 |
世界思想社 |
発行年 |
2007年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第二十四冊 ヨナス・ヨナソン『窓から逃げた100歳老人』
映画化もされた北欧のベストセラー小説だが、歴史上のさまざまな大人物と交流した男がその100年を振り返るというもの。まるで主人公がいまの世界をつくったのではないかと思わせる抱腹絶倒の一冊。
出版社 |
西村書店 |
発行年 |
2014年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第二十三冊 小谷野敦『病む女はなぜ村上春樹を読むか』
タイトルからしてすでに面白そうだが、文学における「バカな女」の存在について触れつつも、そのキャラクターが読者に重ねられてゆくプロセスを明らかにした、すぐれた村上春樹論としての一冊。
出版社 |
ベスト新書 |
発行年 |
2014年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第二十二冊 柿沼裕朋編『種村季弘の眼〜迷宮の美術家たち』
板橋区立美術館で開催された展覧会のカタログ。アーティストではないこの人の脳髄の中味がオブジェとなって展示されるというユニークな展覧会であり、それがすぐれたテキストと共に上手にまとめられた一冊。
出版社 |
平凡社 |
発行年 |
2014年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第二十一冊『安部公房全集』全三十巻
いろいろな経緯がありながら、20年をかけてようやく完成した全集。世界的な作家といえばじつはこの人であったことはあまり知られていないかもしれないが21世紀の現在絶対に読まれるべき全集。
出版社 |
新潮社 |
発行年 |
1997年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第二十冊 SPA!ムック「囚人バカノート」
普通の生活をしていれば生涯入ることのない刑務所。そこの囚人たちがどんな生活と妄想をしているか「書 かれたもの」を徹底的に集めた奇書で、書くことが未来を作ることを教えてくれる一冊。
出版社 |
扶桑社 |
発行年 |
2011年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第十九冊 北川登園『最期の台詞』
26人の演劇人の、文字通り「最後のステージ」を書き残したもの。すぐれた役者たちはその死に際まですぐれて演劇的であり、最期のひとことも含蓄のあるものが多く、役者の死生観がかいまみえる一冊。
出版社 |
StudioCello |
発行年 |
2007年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第十八冊 トールヴァルド『近代医学のあけぼの』
医学、とくに外科医学は屍の山を超えなければ進歩はないと言われるが、本書はたくみに屍を避け、疾患とその治療という組合せを壮大なドラマに仕立てた、医療に興味ある者にとっては必読の一冊。
出版社 |
へるす出版 |
発行年 |
2007年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第十七冊 雑誌「ユリイカ」2014年9月号〈特集サド〉
マルキ・ド・サド没後200年を特集した企画。我が国ではサドと言えば澁澤龍彦のサド論が定番になっているが、この特集では、極力澁澤から距離を置くことでまったく新しいサドが出現した一冊。
出版社 |
青土社 |
発行年 |
2014年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第十六冊 長谷一美『歌舞伎の化粧』
実際の化粧師によって書かれたもので、歌舞伎における化粧や隈取りが、歌舞伎劇においてどのような効果をもたらすのか、また能楽における仮面との違いなどを論じた、もうひとつの歌舞伎論としての一冊。
出版社 |
雄山閣 |
発行年 |
2014年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第十五冊 白杉悦雄『冷えと肩こり』
日本人に固有の身体症状であり、その言語も症状も翻訳の困難なふたつの「表現」について、江戸時代の身体観や漢方医学との関連などから説き起こした、日本人の身体について考えさせられる一冊。
出版社 |
講談社新書メチエ |
発行年 |
2014年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第十四冊 R.マリー・シェーファー『世界の調律』
サウンドスケープというまったく新しい音研究と音環境について提案された著作で、この世からノイズというものを一掃して美しい音を満たすというロマンチックな発想から書き始められた浩瀚な一冊。
出版社 |
平凡社ライブラリー |
発行年 |
2006年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第十三冊 三浦雅士『考える身体』
身体とは何か、そして日本人の身体はどのようにして現在の身体へと変容していったのか、そのダイナミズムを軍事、行儀、舞踊など、様々な「身体表現」を参照しつつ明らかにした渾身の一冊。
出版社 |
NTT出版 |
発行年 |
1999年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第十二冊 山中康裕編著『表現療法』
芸術療法とも呼ばれる、創造的表現を利用することで精神的な活力を取り戻す方法は、薬物中心の精神医療に新しい可能性を提出すると同時に、芸術表現において、「表現するとは何か」を教えてくれる元気の出る一冊。
出版社 |
ミネルヴァ書房 |
発行年 |
2003年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第十一冊 ノーマン・カズンズ『笑いと治癒力』
突然の難病に侵されたひとりの編集者が、信用できる医療者の協力を得て健康を獲得した物語。とくにマルクス兄弟のコメディ映画を観て笑うことが鎮痛効果をもたらしたことを実証した画期的な一冊。
出版社 |
岩波現代文庫 |
発行年 |
2001年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第十冊 桂文治(太田博編)『十代文治 噺家のかたち』
落語は言語による芸術であり、滅びゆく美しい言語に対する郷愁でもある。最後の江戸噺家と呼ばれた文治師匠が落語や日本語について縦横に語る。自分が使っている日本語が恥ずかしくなる一冊。
出版社 |
うなぎ書房 |
発行年 |
2001年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第九冊 海野弘『1914年』
今からちょうど百年前。第一次世界大戦が始まり、宝塚歌劇団が設立され、そして平塚らいちょうによる青踏社運動が始まった。一見無関係に見えるこれらの要素を圧倒的なセンスで結びつけたスリリングな一冊。
出版社 |
平凡社新書 |
発行年 |
2014年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第八冊 ジャコメッティ『エクリ』
芸術家の書いた文章は多い。だが、ジャコメッティはデッサンや彫刻を行なうようにテキストを紡ぐ。それは絵画やオブジェと同じ重みと軽快さをもつ。ジャコメッティの作品を絶対に観たくなる一冊。
出版社 |
みすず書房 |
発行年 |
1994年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |
第七冊 明治大学人文科学研究所編『書物としての宇宙』
本読みによる本読みのための本読みの書。本を読むという行為が間違いなく世界を闢く行為であり、世界を創造する行為である、ということをさも当然に語る連中によるスピーディな一冊。
出版社 |
風間書房 |
発行年 |
2014年 |
所蔵状況 |
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第六冊 安田夏菜『あしたも、さんかく』
児童文学として書かれたものでありながら、すぐれた人生論、落語論、老人論、少年論になっている。おじいちゃんと孫という、文学や映画におけるもっとも適切な設定によって繰り広げられる感動の一冊。
出版社 |
講談社 |
発行年 |
2014年 |
所蔵状況 |
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第五冊 幸田文『台所のおと』
文豪露伴の娘として生まれた彼女は「文は人なり」の言葉どおり、日常を「書く」ことによってより豊かなものにし、何よりもこの時代にまで残してくれた。日本語を練磨したい人に必読の一冊。
出版社 |
講談社文庫 |
発行年 |
1995年 |
所蔵状況 |
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第四冊 服部正『アウトサイダー・アート』
アートはアーティストだけによってつくられているものではなく、表現をひとつの力の源泉として実践している人びとは多くいる。表現とは何か、作者とは誰かといった根本的な問題に立ち返らせてくれる一冊。
出版社 |
光文社新書 |
発行年 |
2003年 |
所蔵状況 |
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第三冊 武満徹『音、沈黙と測りあえるほどに』
美しい音楽をつくる人間は美しい文章を紡ぐ。その予感を見事に的中させてくれる。音楽のことを書いていながらそれは人間のことであり世界のことである。聴覚を刺激する文体をもった一冊。
出版社 |
新潮社 |
発行年 |
1971年 |
所蔵状況 |
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第二冊 ガルシア・マルケス『百年の孤独』
一組の家族の100年に渡る系譜という物語。後に寺山修司によって『さらば箱舟』としても映画化され、魔術的リアリズムという手法を徹底的に駆使した、読み出したら止まらなくなる一冊。
出版社 |
新潮社 |
発行年 |
2006年 |
所蔵状況 |
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第一冊 三浦しをん『舟を編む』
いまどき国語辞典を作ろうとする一編集者の物語。人が言葉によって生きていること、そしてそんな言葉の海で溺れないためには舟=辞書が必要なことを教えてくれるロマンチックな一冊。
出版社 |
光文社 |
発行年 |
2011年 |
所蔵状況 |
所蔵あり(資料詳細) |