「またりやま」とは古くからマタリ地方に伝わる伝統的な演奏方法のひとつである。その起源は伝承でしか伝えられていない。伝承によると、「またりやま」の演奏者5人は取り囲むような円形に配置されるが、互いに相容れない。人々の心を通わせるためにこの形が取られている。

5人で演奏される「またりやま」は、言葉にならない心の交流と思いやりの具現化された音であると考えられており、マタリ地方ではもっとも美しい旋律(かたち)として、人々の心の奥深くに根付いている。






「またりやま」は、逆シュミレーション音楽である。逆シュミレーション音楽とは、ある規則を設定し、その規則に従って演奏したらどうなるかという作曲、演奏システムをモデリングする音楽である。そして、コンピューター・プログラムを用いて、その規則を模擬実験する。テクノ・アンサンブルチームは、 それが音楽になるか、ならないかではなく、規則にそっての「演奏」を想定するシステムを最も重要視する。また、演奏する5人の演奏者たちは、一般的に言われているところの「演奏家」としての経歴は持っていない。そういった5人が、そのように作られた規則に従って演奏する。

この作品の特徴として、「楽譜が存在しない」ということがあげられる。演奏者は演奏する順番や自分の演奏パターンを規則を記憶し、その規則を守ることが「またりやま」の演奏となる。すなわち、楽譜を読めない、音楽経験のない者でも規則にさえ従えば、誰でも演奏できるのである。しかし、誰にでもできる演奏だからこそ、次に要求されるものがある。誰にでもできる演奏を、誰もできないレベルの演奏までにしなければならないことだ。演奏者として選出された者たちは、そのために特殊な練習を毎日行った。







星形体系は5人が円になって、左右自分の隣のとなりの人と手をつないだときにできる形である。その自分の手とつながれた手がロートタムを叩いたら、次に自分の叩く順番になる。叩く順番は、まず右。次に合図を送り右、左。そして、最後に右、左、左や右、右、左のように自分で定めた順番で叩く。




またりやま Interaction

制作年 : 2001年
演奏 : 丸尾隆一
河村武子
手嶋林太郎
山田祐子
松本祐一
演奏時間 : 約10分