デジタル・ウォッチ
『デジタル・ウォッチ』(1991)はリアルタイムな世界と、遅延した不連続な時間の世界との間を行き来することを可能にするインタラクティブ・ビデオ・インスタレーションである。画面上に大きく映し出された時計は普通に時をきざむ懐中時計のようだが、実はそのガラスの表面に映る者の時間をコントロールできる。一方、それ以外の画面の、時計が映っていない外側の部分はまるで鏡の用にあなたの動きをそのまま写す。
このインスタレーションは、ネジ巻き式の懐中時計を写すカメラと、あなたを写すカメラ、そして60インチのリアプロジェクション・テレビで構成されている。画面上ではクローズアップされた懐中時計と実写イメージとが重なっている。それは次のようなイメージである。
画面の中であなたが時計の写っている部分の外側にいるときは、あなたの姿はそのままリアルタイムで写し出されている。しかし時計の上に自分の姿が重なるように移動すると、重なっている部分だけ、秒針の動くタイミングにあわせて1秒1コマの割で画面が進むストップモーションになる。しかもこれは5秒前の画面である。この時間のズレにより、あなたは体の動きをもはや自分自身でコントロールが出来なくなったような奇妙な感覚におちいる。
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