Jim Campbell

デジタル・ウォッチ

『デジタル・ウォッチ』(1991)はリアルタイムな世界と、遅延した不連続な時間の世界との間を行き来することを可能にするインタラクティブ・ビデオ・インスタレーションである。画面上に大きく映し出された時計は普通に時をきざむ懐中時計のようだが、実はそのガラスの表面に映る者の時間をコントロールできる。一方、それ以外の画面の、時計が映っていない外側の部分はまるで鏡の用にあなたの動きをそのまま写す。

このインスタレーションは、ネジ巻き式の懐中時計を写すカメラと、あなたを写すカメラ、そして60インチのリアプロジェクション・テレビで構成されている。画面上ではクローズアップされた懐中時計と実写イメージとが重なっている。それは次のようなイメージである。

画面の中であなたが時計の写っている部分の外側にいるときは、あなたの姿はそのままリアルタイムで写し出されている。しかし時計の上に自分の姿が重なるように移動すると、重なっている部分だけ、秒針の動くタイミングにあわせて1秒1コマの割で画面が進むストップモーションになる。しかもこれは5秒前の画面である。この時間のズレにより、あなたは体の動きをもはや自分自身でコントロールが出来なくなったような奇妙な感覚におちいる。

機器構成
60インチのリアプロジェクション・テレビ、ネジ巻き懐中時計、白黒ビデオ
カメラ2台、自作の電子基板

 ジム・キャンベルは1956年にシカゴに生まれ、現在はサンフランシスコ在住。大学では数学とエンジニアリングを学んだ。彼は国際的に活躍し、サンフランシスコ近代美術館やハーバード大学カーペンター・センター、パワープラント(トロント)、国際写真センター(ニューヨーク)等の北米の諸施設で、展覧会を開催してきた。
 また彼の作品はサンフランシスコ近代美術館、バークレー・ユニバーシティ・アート・ミュージアム、ギャップ社のドン・フィッシャー・コレクションに所蔵されている。1992年にアリゾナ州フェニックスで発表した作品は、公衆の場に常設されるインタラクティブ・ビデオアートの先駆けとなった。彼はニューヨーク近代美術館を含め、多くの期間でインタラクティブ・メディア・アートのレクチャーを行っている。