Room 1

AIを実現するための技術の1つである機械学習は、入力と出力の例を繰り返し与えることでルールを学習し、未知の入力に対してもある程度の確率で意味のある出力を返すことができるのが特長です。機械学習はデザイナーが学ぶ過程に似ているといえるかもしれません。なぜなら、多くのデザイナーは、入力として様々な制約条件を与えられ、最適と思われる解を出力し、人々からフィードバックを受けることを繰り返し経験することで自身の中にルールを生成するからです。もし、デザイナーに自分の分身としてのAIがいたらどうなるでしょうか?

「Room 1」は、あるデザイナーの、ある時点の、ある制約条件における家具の配置案を、機械学習の手法の1つであるディープラーニングにより学習した「AI」とVR空間内で対話する体験型展示です。体験者がヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着し、家具に見立てた2つの実物大モデルを空間内に配置すると、それらを入力として動的にその他5つの家具の配置が決まります。入力となる家具の配置により、デザイナーの配置案の再現となることもあれば、元の配置案とは大きく異なりながらもどこかにデザイナーの意図を感じられる配置になることもあります。

デザイナーにとって、自分が言語化していないルールに基く「AI」の出力はreflectionとなります。体験者による想定外の入力に対する「AI」の出力から、希に生まれる成功例によって刺激を受けるだけでなく、試行の大部分を占める失敗例に自らのルールの片鱗を読み取ることによって、デザイナーは新たなreflectionを生み出すことでしょう。

体験方法

体験者はHMDを装着し、VR空間内に構築されている部屋の中で、スツールとベッドに見立てた実物大モデルを動かして好きな位置に配置します。説明員に配置が終わったことを伝えると、体験者の配置をもとにデザイナーの配置案を学習した「AI」により、他の家具が配置されます。再度スツールとベッドの位置を変更すると、それに応じて他の家具の配置も変化します。体験者は5分間程度を目安として「AI」との対話を楽しみます。

システム

体験者が頭部に装着したHMDの位置と向きに応じて、3Dモデルを配置した空間をリアルタイムでレンダリングすることにより、体験者はVR空間内を自由に歩き回って体験できます。入力となる2つの家具の実物大モデルには3次元空間上の位置と向きをリアルタイムで追跡するためのセンサが取り付けられており、体験者はVR空間内で自由に配置できます。体験者が配置を確定させ、学習させたモデルに入力として与えると、5つの家具の位置と向きが出力され、レンダリングエンジンにも反映されます。

Rhinoceros、Cinema 4D、Unreal Engine 4、Python、Keras、TensorFlow、HTC VIVE、VCarve Pro、ShopBot PRSalpha 96-48-8、針葉樹合板、ラワン合板、スタイロフォーム、PLA(3Dプリント出力)、寸切りボルト、赤松角材

展示