incubator at XEBEC Hall

 

写真

ムービー
QuickTime 3.0 Movie (7'31")
5.6MB, 240X160,10fps


カール・ストーン
1999.3.10

Pad Se Euw

I have been interested in the idea of sound-layering for manyyears. By this I mean, the colligation of similar or even identical voicesinto a mass. I have explored this idea in a number of my pieces, but almostalways in a stereo reduction, either on CD or in concert. So when I firstthought about what to do with 50 iMacs I wanted to try out some of mylayering techniques using the "voice" of each machine as a separate soundsource. I wanted to hear that sound. I also wanted to make use of thegraphic capability of the iMac and the fact that all machines wereconnected via a network scheme.

Technical aspects aside, I wanted to make a piece which on the surfacewould be a bit disorienting and ambiguous. Visual images of politicalevents, taken from the internet, which transform but never quite resolve.>From texts which range from the private diary of a leader of the KhmerRouge to email traffic on a music mailing list, no real answers existed intheir dynamic display. The sounds ranged from the strange tinkling of avirtual pianist on one machine to hundreds of chanted voices, a strangeshomyo.


大谷安宏
1999.3.11

Blue

聴きネットワーク環境の中でコントロールされる音楽と、来場る音、など様々な要素に影響を啄闍で演奏される即興演奏。ネットワーク、音楽、空間の3つの要素がそれぞれに絡み合うことで生まれるもうひとつのサウンドフィールド。演奏は開場と同時に始まり閉館までの4時間に及ぶ。映像はホール内で聴変化する青色と身体をコラージュした映像。青色は動として身体とリンクする。

4台のiMacのサウンドはサーバからコントロールされ、PowerBookを使った演奏はグリッドのPAスピーカから再生される。会場内は上2方向下4方向から聞こえる立体的な音響空間を構成し、なおかつ音源の移動に映像が反応する。

オートマティックに動作するインスタレーションを設置したり、技術的なネットワーク内部のことを掘り下げるよりも、音楽を媒体として1つの世界を提示し、その中で演奏とパフォーマンスを十分に楽しんでもらえることが目的でした。来場が自由に出入り出来、椅子の無い自由な空間で好きなように楽しんでもらえるそういう場を作りたいと。開場から閉場まで4時間の間、演奏を継続することは来場ために必要なことであり、自分の音楽性を表現する上でも大切な要素です。初めての試みは成功し、今後も発展させて行く予定。


三輪眞弘
1999.3.12

49台のiMacと一人のオペレーターのための「新しい時代」

"49台のiMacと一人のオペレーターのための「新しい時代」"は"ふたりのオルガニストとメガホンをもったアシスタントのための「新しい時代」"の姉妹作品として同時期に構想され作曲された。この2作品はどちらも朗読と歌唱を主体として進行し、音楽はそれを包み込むような形でそこで語られ歌われるテキストと一体となる。テキストは作曲者が14歳の少年の姿を借り預言者イスターミアの教えと体験を日記風に綴ったもので、もうすぐ訪れるこの新しい時代の真実を一人でも多くこの作品を通して知っていただければ幸いである。


佐近田展康
1999.3.13

Tango mechano

ネットワークとは機械の別称である。中世のヨーロッパが時計という機械に憑依されて以来、機械は互いに連結し、他を我が内に取り込み、取り込まれながら自己拡大、自己再生産を続けている。普遍性の名のもとに、それは金属という物質など最初から超越し、非物質の領域、精神の領域、神聖や美の領域においても、果てしなく連結/拡大/再生産を繰り返して来たのだ。ある時は形式と呼ばれ、またある時は構造、システム、組織、そしていまネットワークと呼ばれようとも、これらはみな機械の別称であり、実のところ、ひとを虜にし続ける美の思想、神秘的な思想なのである。

まがまがしい機械。ぼくは今回の作品で機械がもつこの出自の記憶をジーベックの空間に取り戻そうとした。会場に並んだ50台のiMacからは、絶えず微少な水音が聞こえ、あちこちに不定形な水流やよどみを作り出す。周囲の音量変化に対応して敏感に明るさを変える赤色のディスプレイが、ホール全体に揺れ動く水面を構成する。この濡れた音場の中で、さまざまな男女の密やかな囁き声が、抑圧された欲望の言葉を伝え合っていく。「アナタヲタベタイ」「ワタシヲコワシタイ」.........。時おり、あからさまに猥雑なSP時代のタンゴの断片が、グリーンの光とともに空間を走り抜ける。白い光を放つ乾いたピアノの単音が、ホール全体に浸透したウェットな時間を、そこかしこで偶発的に分節化する。

仕掛けの話。それぞれのiMacは、複数の男女の囁き声による日本語音素のテーブルとタンゴやピアノのサウンド・ファイルを持っている。さらにLANネットワーク上で占める自分の位置を知っており、現在実行しているイベント........どんなテクストを囁き、タンゴのどの部分を再生しているのか........を周囲のどれか一台のiMacに対し伝達する。それを受け取ったiMacは、テクストを自分の声で囁き、サウンドファイルの続きの部分を再生し、またそのイベントを周囲に対し伝達する。見方によっては一台のマシンがひとつのグレイン(音の粒)を受け持つネットワーク・グラニューラ・シンセシスだ。結果、50台のiMacで構成される空間を、ディスプレイの色彩変化とともに、囁き声やサウンドが蛇行し走り抜けることになる。

今回の作品は、あからさまに猥雑でエロティックな湿度の高い内容になった。この「あからさま」なことが、いまは大切だと思っている。


赤松正行
1999.3.14

Type A,Type B,Type C and more

Program Note

私の作品は「Type A,Type B,Type C and more」と名付け、それぞれ非電子ネットワーク、自律分散型ネットワーク、集中管理型ネットワークという3つの形態を視覚と聴覚の体験として表現しています。

Type Aは、iMacの内蔵マイクが捉える音に応じて、画面上の目が見開き、シャッター音と共に目が閉じます。各iMacは個別に動作していますが、あるiMacが鳴らす音によって他のiMacが反応することがあります。つまり、マイクの反応レベルとスピーカの音量によって、会場全体のiMacが様々な連鎖反応を起こすわけです。

Type Bでは、iMacは光を放ち、チャイムを鳴らす同時にネットワークを通じて他のiMacに呼び掛けます。呼び掛けられたiMacが応答すると、そこで会話が始まり、交互に光が点滅し、チャイムが連弾されることになります。このような呼び掛けと会話が何カ所かで行われると、会場全体としては、一種のフレーズが立ち上ることになります。

Type Cにおける各iMacは、演奏者の指令に応じて音響合成を行います。つまり空間的に配置された50台の音源として動作し、波のように音像が移動したり、全体として極めて重厚で複雑な音響が生み出されるのです。

実際の作品においては、ネットワークがやや不安定であったために、一糸乱れぬ精緻な表現と言うより、方々で発生するトラブルをリカバーしながらの公演となりました。ただし、それはネットワークの姿として極めて妥当と思われ、むしろそれを楽しむことさえできたのです。


(各文章は作家自身によって書かれたものです)


 記録写真(140葉以上)