IAMAS OB/OG Interview

INTERVIEW 008

INTERVIEWER クワクボリョウタ IAMAS准教授/アーティスト
#2018#ART MUSEUM#COMTEMPORARY ART#EXHIBITION#RYOTA KUWAKUBO#WORKSHOP DESIGN

GUEST

会田大也

ミュージアムエデュケーター

「鑑賞者の中に起きていることに興味がある」

山口情報芸術センター(YCAM)でミュージアムエデュケーターとして、見る人がどんな反応をするのかを緻密に設計したワークショップを数々開発してきた会田大也さん。一方のクワクボリョウタ准教授は近年、見る人自身が内面で体験を紡ぎ出すような作品を手掛けてきました。
9月8日(土)から岐阜県美術館にて開催される「IAMAS ARTIST FILE #06 みるこころみるかえりみる クワクボリョウタ、会田大也」展。見る人の創造性により完成する前代未聞の展覧会に挑む2人の対談は、とても濃密な時間となりました。

オーディエンスがどう反応するかを設計するのが
ワークショップデザインの楽しさ

クワクボ:早速ですが、会田君は何期生ですか。

会田:僕、実は2回入学しているんですよ。大学を卒業してすぐ入った時は5期生ですね。

クワクボ:僕が4期だから、確かにそうだね。

会田: 2000年に一度入学して、2001年に大学院ができた時に受験し直して再入学したので、3年間いました。ちょっと珍しいですよね。だから5期生でもあり、6期生でもあります。

クワクボ: 6期生として入学した頃、一緒にICCで「信用ゲーム」展で展示しましたよね。

会田:そうですね。

クワクボ:あの時に展示していた「もし100万円を素材としたアート作品があったなら,果たしてそれはどれくらいの価値があるのだろうか? *インターネットオークション」という作品は、東京造形大学の卒業制作ですよね。

もし100万円を素材としたアート作品があったなら,果たしてそれはどれくらいの価値があるのだろうか? *インターネットオークション

会田:そうです。東京造形大学の卒業制作展で発表して、IAMAS入学後の6月にヤフオクで売ろうと思いつきました。

クワクボ:ヤフオクに出品するという視点は、それ以前は考えていなかったのですか。

会田:ヤフオクに出品しようと思った理由は2つあります。ひとつは、Power Mac G 4 CUBEが発売された時に、アクリルを成形する過程でできる線を「絶対に許せない」と日本のユーザーがヤフオクの中で不買運動を起こしたことがあったんです。落札目的じゃなくて、「こんな金額を積まれても絶対に要らない」みたいな形で出品がされて、最終的には1億か2億円くらいになったんですが、それを見てすごくおもしろいなと思いました。

クワクボ:マニフェストとして出品したと。

会田:そうです。オークションという、ものを売り買いする場にも関わらず、社会運動の起きるフィールドとして入札という仕組みを使ったことがすごく新しかった。

クワクボ:おもしろいですね。

会田:もうひとつは、「タイムマシーン(本物)」というものが出品されたことです。これは「タイムマシーンに乗って未来から来ました。いりませんか?」という人がいて、それも最終的にすごい金額になったんですけど、それよりQ&Aがおもしろくて。例えば「タイムマシーンに乗るとどんな感じですか」という質問に、「裸のまま乗らなくちゃいけなくて、お腹も空かなければ眠くもならないんだけど、体感としては40年くらいその場に居続ける体験です。だから苦痛すぎて乗って帰りたいと思いません」みたいなやり取りがひたすら書いてあるんです。
この2つを見て、お金を入札して、さらにディスカッションをして何かが明らかになっていくプロセス自体が、あの作品のフィールドとしては相応しいと思ったんですね。結果的に、1円から出品して、2週間で33万4000円で落札されました。

クワクボ: IAMASでは、他にどんなことをしていたのですか。

会田:展覧会づくりに興味があったので、5期生の明貫紘子さんと一緒に、IAMAS内のギャラリースペースにフリースペース「iamasOS」を立ち上げました。その後商店街への展開など後輩が独自に受け継いでくれたのはとても面白かったです。
展覧会を作っていたのは、作品を見る人の中に起きていることにすごく興味はあったからですね。自分自身が作品を作っている時も、作品そのものというよりは、この作品を見た人がどんな反応をするんだろうという部分におもしろさを感じていました。
お金の作品もそうですが、本を読んだり、自分で徹底的に調べても納得のいく答えが見つからない時に、脳みその中にある概念を作品として外部化して、オブジェクトとして外から眺めてみるために作品を作っていたんですよね。そうすると、自分の概念がオブジェクト化したものに対して、他の人が思いもよらないような、色々な角度から意見を言ってくれる。作品をどういう風に置いたら、どんな角度から、どのような意見が出てくるか、そのバリエーションや入り口みたいなものを考えるのがすごく楽しかったんです。

クワクボ:その話ともつながるかもしれませんが、IAMASを卒業してから、山口情報芸術センター(YCAM)でミュージアムエデュケーターになるまで、個別の作家が個別の作品を作るところからワークショップの領域に至った経緯を聞かせてもらえますか。

会田:IAMASの卒業制作展の時に、当時YCAMの職員だった山元史朗さんに「就職決まってないなら、来週面接あるから来ない?」と誘われて(笑)。YCAMでは、前任の教育普及担当が辞めたこともあり、エデュケーターという肩書きでワークショップを担当することになりました。
最初はワークショップって形がないし、評価しようがないフワっとしたもののように感じていましたが、実際取り組んでみると、今まで考えてきたアイデアが生かせるというか。これまで作品でやってきたような、オーディエンスがどういう心理になるかとか、どう振る舞うかを設計していくワークショップデザインに魅力を感じるようになりました。

クワクボ:そこは革命というか…。僕も自分の展示に付随してワークショップを依頼されることがあるんですが、体験を構造化して考えないと漠然とやることに終始してしまって…。それはやる側にとっても問題だなと感じていた中で、ワークショップ自体がグッドデザイン賞を取るようなものをやってきているのがすごいなあと。

会田:ライバルが少なかったってことですよ。当時はおもしろいワークショップがあまりなくて、ブルーオーシャンだなって思いました。

クワクボ:そこに光を当てる人がいなかったんだよね。

会田:YCAMでもそうですけど、ワークショップってどうしても展覧会の関連イベントとして行なわれることが多いじゃないですか。だから元になる展覧会がなければ、自立できないところもあったんですけど、「ケータイ・スパイ・大作戦」というワークショップを作った時に、これだけでも十分におもしろくて、商品になるワークショップが作れるかもしれないという手応えを感じました。

ケータイ・スパイ・大作戦

クワクボ:商品になるとはどういうことですか。

会田:つまりワークショップ単独で人から呼ばれるってことですね。作品の巡回と同じようにワークショップの巡回もありえると。そのためにも、単独で自立できるような強度のあるワークショップを作ろうと、YCAMのエデュケーションチームでは意識していました。

50%を来場者が作る、エポックメイキングな展覧会に挑む

クワクボ:今度9月に岐阜県美術館でやる展示は、今言ったみたいに「展覧会をやって、その関連イベントとしてワークショップがある」という仕組み自体を変えて、「展示される作品とワークショップが同列に立つ」ということをやりたいと考えています。同じ空間で展示もワークショップもやるということを企画して、会田君にお願いしたわけです。

会田:うれしいです。

クワクボ:僕としては、美術館の、特に公立の美術館の、認知のされ方を変えたいという気持ちもあるんですよね。
僕にとって美術館は、特に目当ての作家がいるとかではないんだけど、よく通ってた場所というか。何をするでもないけど、とりあえず行くと何かを考えたり感じたりすることがあるというか、公園に近い感覚ですよね。多くの人にそういう認識持ってもらえたら、ちょっとおもしろいことになるのかなと考えています。
美術館のひとつの役割として、文脈や歴史を作るということもあると思うのですが、過去のことだけを受け取りにいくだけではなく、来た人が当事者として何かを作ることが重要だし、岐阜県美術館はずっとそういうことをやっている。だから僕なりにそれを進めてみたいなと考えています。YCAMの場合はコレクションを持たないし。過去というよりは現在から未来を作るしかないというのがいいところですよね。
だから展示をする作品に関しても、要はピボットみたいなもので、何もない空間に何か軸だけ設定して、そこから色々なところに考えを伸ばしていけるようなポイントをいくつか用意しておく、そういうものを今回は考えています。

会田:本当におもしろいですね。僕の地元にあった美術館は、公共の場で騒いではいけないことを習うために行くというか、社会道徳を学ぶ場と化していましたね。「静かにしなさい」とか。

クワクボ:「触ってはいけません」とか。

会田:でもそれはあまりにも悲しいですよね。
以前、教育普及を一緒にやっていた映像作家の山城大督くんは、彼が小学校の時に地元に新しい図書館ができて、そこは映画が見放題で、日本映画が好きだった彼にとっては革命的な出来事だったらしいんですよ。「図書館でめちゃくちゃたくさんの日本映画を見たことによって自分の人生が決まったといっても過言ではない」と言っていました。
YCAMにもそういう側面があって、あの場所を美術館だと認識している地元の小学生はほぼいないわけです。あそこにいったら何かおもしろいことがあるとか、ゲームができる場所とか、夏に芝生の上で映画が見られる場所とか、少なくとも公共の場所で黙っているということを叩き込まれる場所じゃない。

クワクボ: 今回の展示は美術館でやりますが、去年は科学館でも展示をしました。アートじゃない場所で展示をしておもしろかったのは、科学館に来た時の子どもたちは、見る時の態度が科学館モードになっているんですよ。要は、美術館だと「この作者はどういうつもりでこれを描いたんだろう」というような頭から入っていくけど、科学館だと作者は不在で、自由にあーでもないこうでもないと言って、実際に触れるという態度でみんなが見ていく。
仮に同じものを美術館で展示していたら、絶対に違う体験になったと思うんです。見に来た人は今はどのフレームでこれを見るべきかということを意外と心得ている。それがいいのか悪いのかは別として、同じものがどこに展示されるかで見方が変わってしまうことについて、僕もあまり自覚的じゃなかったので、これは大変なことだと感じました。

会田:前もどこかで話しましたけど、美術の授業で、美術作品を見た時に作者の意図は何であるかという質問をひたすら取り返されてきたという経験は大きいですね。
その結果として、作者の意図を当てることができない人たちが、「私は絵が分かんないんで」と言ってしまっている。そういう状況を国として作り出してしまっているのは罪かもしれないなと思います。

クワクボ:でも教育から離れたとたん、「美術は自由に感じればいい」とか言われて、これもなんだかなって話ですよね。

会田:その落差がすごい。

クワクボ:突然足場を外されて、「自由に」って言われても「感じようがないよ」みたいな。

会田:そうですね。僕はYCAMで、展示やワークショップが、来場者がその場で生み出す力によって支えられているということを強く実感したんですね。さっきクワクボさんが言ったみたいに、来場者の創造性を信用するというか、美術の半分は来場者が見るということによって作られているというか。今回の岐阜県美術館での展覧会でも、そういうことをやりたいと考えています。
だから9月の展示でクワクボさんと僕が準備できるのはある種の環境ですよね。器というか、入れ物というか。その中に自由な意思を持った来場者が来て、その残りのピースを埋めていく作業をお願いすると。これはかなりオーディエンスの力を信じてないとできないことでもあるし、ちょっと怖さはありますね。こちらがコントロールできることが半分しかない、予想もつかない展覧会だから。

クワクボ:楽しみだし、リスクもいっぱいだし。9月8日まであまり時間もないですけど、よろしくお願いします!

会田:本当に楽しみです。ありがたい作品を見に来るというやり方じゃない、オーディエンスが受け取りに行くというよりは、自分が乗り込んで行って、何かを作ってやろうという気持ちで来なきゃいけないという展覧会はめったにないし、ある意味エポックメイキングだなと思っています。そういう場に僕が選んでもらえたのはすごくラッキーです。
オーディエンスにとってはおそらく初めての経験だから、飲み込みにくいものになるような気はしているんだけれども、絶対楽しいものにはなると思うので、そういう経験を楽しんでくれる人が一人でも多くいたらいいなと思っています。

取材:2018年06月21日 IAMAS

編集:山田智子 / 写真:山田聡

PROFILE

GUEST

会田大也

ミュージアムエデュケーター

東京造形大学卒業、情報科学芸術大学院大学修了。東京芸術大学大学院映像研究科映像メディア学専攻在学。
山口情報芸術センター(YCAM)にて2003年の開館より11年間、チーフエデュケーターとして教育普及を担当。メディアリテラシー教育、美術教育、地域プロジェクトの分野で、オリジナルのワークショップやプログラムを開発実施した。一連のオリジナルメディアワークショップにてキッズデザイン大賞受賞、担当した企画展示「コロガル公園シリーズ」は、文化庁メディア芸術祭、グッドデザイン賞などを受賞。国際交流基金主催、日・ASEAN友好40周年事業 国際巡回メディアアート展「MEDIA/ART KITCHEN」および「あいちトリエンナーレ2019」へはキュレーターとして参加。その他、(株)三越伊勢丹やVIVITA株式会社、(株)Mistletoeなどといった企業とも協働し、学校以外の場所での教育プログラムの開発や運営に携わる。また、アーティストとして作品発表も継続的に行う。2014年より東京大学大学院ソーシャルICTグローバル・クリエイティブリーダー育成プログラム(GCL)特任助教。

INTERVIEWER

クワクボリョウタ

IAMAS准教授/アーティスト

デジタルとアナログ、人間と機械、情報の送り手と受け手など、さまざまな境界線上で生じる事象をクローズアップする作品によって、「デバイス・アート」とも呼ばれる独自のスタイルを生み出した。2010年発表のインスタレーション「10番目の感傷(点・線・面)」以降は、観る人自身が内面で体験を紡ぎ出すような作品に着手している。アートユニット、パーフェクトロンとしても活動。『デザインあ展』(富山県美術館、日本科学未来館)の展示構成などを手がける。