2012年8月にギャラリーCAI02(札幌)で開催した「ウロボロスのトーチ~赤松正行+展」を紹介します。これは無為と人為の拮抗や循環する永遠性を描いた8枚の連作絵画をiPhoneをかざして鑑賞する作品であり、画面上では動かないはずの絵が動き出し、描かれていないものが見えてきます。このような表現は拡張現実(AR)技術として知られていますが、この作品は従来とは異なり、変容現実と呼び得るような印象を与えます。ここでは現実と仮想を融合するテクノロジーとともに、作品内容とその可能性について考察いたします。
赤松正行(メディア作家)
10代半ばよりエレクトロニクスを用いた音楽制作を始め、1980年代からはコンピュータを使用、音楽だけでなく映像やネットワークなど様々なメディアへと制作範囲を広げる。近年はモバイル・デバイスによる表現研究や、人と社会への影響の考察に取り組んでいる。開発したiOSアプリは40個以上、App Storeでのダウンロード数は1,600万回を超える他、展覧会やパフォーマンスなどへと展開している。代表作にBanner、セカイカメラ、Okeanos Buoys、iOSの教科書など。現在,情報科学芸術大学院大学(IAMAS)教授。