今回は、「身体をさがす」と題して、IAMAS教員の小林昌廣と安藤泰彦が、「身体」をテーマに対談(プレゼンテーションとお喋り)をします。
「身体」は現代の芸術表現ばかりでなく、再生医療や臓器移植などの医療テクノロジーや高齢者医療対策、また原発事故を契機とした身体被曝の問題や、住民間・家族間の分断といった社会医学的問題など、現代の社会とっても、避けて通ることのできない重要なテーマです。
小林昌廣は、身体を中心に医療、芸能、現代アート、など広範囲な批評活動をしています。またさきごろ、身体に関わるいくつかの項目を執筆された『現代社会学 事典』(弘文堂)が出版され、その中では「身体技法」「身体の市場化」「ポストヒューマン」など興味深いテーマがとりあげられています。安藤泰彦は、 KOSUGI+ANDOとして現代美術、メディアアートの空間作品(インスタレーション)を制作していますが、観客としての身体ばかりでなく、作品テーマ としても身体に関わるものが作品の中に散見されます。
今回の「a.Labo」が、二者それぞれが抱える問題を交差(クロス)させる場になれば、と考えています。
安藤泰彦(現代美術・メディアアート)
1983年より小杉美穂子とともにKOSUGI+ANDO というユニットで、インスタレーション作品を制作・発表。90年代よりコンピュータによる映像やオブジェの制御を作品に取り入れる。物語、記憶、身体、空 間、メディア環境など、主題は地下水のように作品に流れる。時に顕在化する社会的なモチーフも二者がつくりだす磁場により、もう一つの世界の提示として作 品化される。作品以外に、『SKIN DIVE』(1999)『channel-n』(2000)など京都芸術センターでの展覧会企画、また「ぎふ大垣ビエンナーレ2008」における駅前商店 街を中心とした作品展示企画「大垣ふうけい論」等がある。近年では、2010年の『穏やかな落下』(ギャラリー 16、京都)、また伊藤高志、稲垣貴士、吉岡洋らと制作した『BEACON 2010』(メディア芸術際京都展特別展示)があり、2011年に『二番目の埋葬』(5月、夢創館、神戸)『遷移状態』(10月、CAS、大阪)を発表する。現在、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)教授
KOSUGI+ANDO HP:http://project.shiftweb.net/KosugiAndo/
小林昌廣(IAMAS教授、医療人類学、身体表現研究、芸術批評)
1959 年東京生まれ。植物生化学の研究ののち、大阪大学大学院医学研究科博士課程満期退学。大学院では医療人類学、医学史、医学哲学などを勉強し、中国 を中心にした東南アジア諸国での非西洋近代医学のフィールド調査を行なうと同時に、日本独特の医療文化である「肩こり」「持病」「血の道」などについての 広域的研究を行なう。著書に『病い論の現在形』(青弓社)、『臨床する芸術学』(昭和堂)、『「医の知」の対話』(人文書院)など。京都造形芸術大学芸術 学部芸術表現・アートプロデュース学科教授、同大学舞台芸術研究センター主任研究員を経て、現在、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)教授