2011年3月11日以降の原発事故を受けて制作した二つのインスタレーション作品「二番目の埋葬」と「遷移状態」を中心に話をしたいと思います。
今回の話には、二つの思い入れ(話の方向)があります。
一つは、インスタレーションという形式を持つ私たちの作品の見方やその体験に関するものです。美術や芸術に関心のない人にとっては、まったく別世界の出来事のようにとらえられもし、また「わからない」という言葉で片付けられてしまうこともある「作品」というものを、少しでも身近なものに、接近可能なものにできないかという思いが、そこにはあります。一種の「鑑賞の手引き」になればと思います。
もう一つは、(本来はこちらが中心課題となるはずなのですが…)、まさに「3.11」に対する表現者としての「応答」に関するものです。それは現在もなお、進行形の形で続く「原発事故」、その只中にいる私たちに課されている問いかけであり、未だ形を見せない次の作品を潜在的に含むものとなります。
これら二つの方向性は、両者とも容易に答えがでるという類のものではありませんが、少なくとも、a.Laboという公開の場が要求する二つの方向であると言えます。いずれにせよ、今回の場が、自分自身へも含めアクチュアルな問いを投げかける場になればと思います。
安藤泰彦(現代美術・メディアアート)
1983年より小杉美穂子とともにKOSUGI+ANDOというユニットで、インスタレーション作品を制作・発表。90年代よりコンピュータによる映像やオブジェの制御を作品に取り入れる。物語、記憶、身体、空間、メディア環境など、主題は地下水のように作品に流れる。時に顕在化する社会的なモチーフも二者がつくりだす磁場により、もう一つの世界の提示として作品化される。作品以外に、『SKIN DIVE』(1999)『channel-n』(2000)など京都芸術センターでの展覧会企画、また「ぎふ大垣ビエンナーレ2008」における駅前商店街を中心とした作品展示企画「大垣ふうけい論」等がある。
近年では、2010年の『穏やかな落下』(ギャラリー16、京都)、また伊藤高志、稲垣貴士、吉岡洋らと制作した『BEACON 2010』(メディア芸術際京都展特別展示)があり、2011年に『二番目の埋葬』(5月、夢創館、神戸)、『遷移状態』(10月、CAS、大阪)を発表する。
現在,情報科学芸術大学院大学(IAMAS)a領域 教授
KOSUGI+ANDO HP:http://project.shiftweb.net/KosugiAndo/