「タレスの刻印」の展覧会は、長時間露光した星空の写真と動画を組み合わせて構成した。写真はアクリル板に印刷した半透明のパネルとして空中に掲げられ、360度全天周映像となる動画の投影光が反射および透過するように設置。これにより時々刻々と変化する複雑な会場での展示に対して、NFTとして公開したオンライン展示では作品の詳細が見て取れるようにした。なお、撮影に使用した独自のデバイスを設置し、独自のプログラムによって動作する様子も提示した。
タレスの刻印
時間をかけた制作の中に内在する
インタラクティブ・アート性
「タレスの刻印」は特殊な撮影方法によって星空を長時間露光した写真および動画であり、それらを展示した展覧会である。この作品は古代ギリシアの哲学者タレスが星空を見上げながら歩いていて、道端の溝に気が付かず転倒した故事に由来している。移動しながら観察することは相対運動として複雑な事象を引き起こし、その記録は予測不可能な複雑性を持ち、流麗で魅惑的な表象が現れる。そのような事象に触発されて作品を制作した。
-
連携先
ワンダ農園
-
連携期間
2019.04.01 - 2022.12.31
目的と成果
特殊な装置による星空の撮影は、岐阜県揖斐川町が運営するワンダ農園で行われた。この施設は市街地から自転車で1時間程度の近郊にありながら、山間の地形によって光害(街の明かり)が遮られ、美しい満天の星空が現れる。このような環境が作品制作の端緒となり、時間をかけた作品制作が可能であったので同施設での滞在(連携)は重要であり、都市生活に対する反対命題としても意義深い。また、一般的な撮影が定点に固定して瞬間的に行われるのに対して、本作品での撮影は常に動き続けて、天候などに対応して長時間、長期間にわたって行われる。これは状況に応じて動的に変化し、感応的、即興的に表現するインタラクティブ・アートの資質であり、現代社会においても重要視されている特性だと言える。このような観点を内在しながら、鑑賞に耐え得る作品および展覧会を実現することに注力した。
IAMASの役割
展覧会にあたって写真パネルの各種出力方法の評価を行い、映像との組み合わせによって効果的な展示になるように設営方法を検討した。これらの過程においてIAMASの設備(大判プリンタ、UVプリンタ、プロジェクタなど)を活用し、知見豊かなスタッフの協力を得て的確に作業を進めることができた。また、実際の展示会場に空間的に類似した施設(ギャラリー、ホールなど)に作品を仮設置することで、鑑賞体験を試行して展示を洗練させることができた。
-
開催場所
ハイブリッド(NEORT++とOpenSea)
-
担当教職員
- 赤松 正行
-
運営
制作:
赤松 正行(IAMAS教授)
制作助言:
伊澤 宥依(RCIC)
瀬川 晃(IAMAS准教授)
プラクティカル・サイクリング(IAMASプロジェクト)
クリティカル・サイクリング(IAMAS任意グループ)
翻訳助言:
エイムン・ニコラス(IAMAS国際交流員)
設営協力:
八嶋 有司(IAMAS卒業生)
記録撮影:
山口 伊生人(IAMAS卒業生)
撮影協力:
ワンダ農園(岐阜県揖斐川町)
共同制作:
NEORT -
スケジュール
2019.04 作品の制作開始
2022.06 展覧会の制作開始
2022.09 – 12 展覧会の設営・運営・撤収、記録の制作