博物館開館時に寄贈された市三郎の野外彫刻の作品群は四半世紀の年月を経て森に散在していた。展覧会準備の資料収集にあたり、公募展の出品目録や関係者による証言から徐々に作品名や作品の所在が明らかになる。作品リストや作家年表をまとめることで当時の時代背景や価値観が見えてきた。親族から生前の思い出が語られ、ビルマ従軍時のスケッチからは市三郎が感じ取ったであろう世界観が追体験でき、現代彫刻作家の目線から市三郎の創作活動の一端が感じられた。これらの短編ドキュメントを含めた展覧会の構成から、あらためて春日の土着性とその時代性を見つめる契機となった。
リバイバル25周年展 藤原市三郎《森に還る》
アーカイブの編集や構成を通して見つめる土着性と時代性
森の文化博物館に残された一枚の年譜をたよりに、旧春日村出身の芸術家・藤原市三郎(1911–1975)の作品展示を行った。博物館で開催された「藤原市三郎 石と絵の展覧会(1997年)」から25年。市三郎の作品と人生から見えてきた、旧春日村の自然・歴史・文化を掘り下げ、伝承する機会を担った。
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連携先
春日森の文化博物館, 揖斐川町教育委員会
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連携期間
2021.12 - 2022.05
目的と成果
散在していた作品の全貌を把握し、リスト化することで時系列に市三郎が体験し表現した時代性を歴史の中へ位置づけることができた。親族への取材から戦時下に日本へ郵送された軍事郵便やスケッチが見つかり、それら貴重な歴史的資料をスキャンし再利用できるデータ化を実現できた。博物館に所蔵されていない現存する大型の彫刻作品を3Dスキャンすることによって、ウェブ上でのアクセスを可能にした。展覧会終了後もアーカイブとして閲覧できる機会を提供することができた。
会期中のトークイベントでは市三郎の活動の軌跡を通じて関係者をはじめ、来場者へ春日という場の持つもう一つの一面を提供することができた。
IAMASの役割
- 作品撮影、取材動向・映像編集、作品スキャン・3Dプリント、スケッチブックの複製
- 告知フライヤー、展示レイアウト、作品リスト、会場マップ
- YouTube:博物館専用チャンネルの開設
- ScketchFab:3Dデータの公開
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開催場所
春日森の文化博物館 (岐阜県揖斐郡揖斐川町春日美束1902番地183)
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担当教職員
- 瀬川 晃
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運営
主催:
春日森の文化博物館
後援:
揖斐川町教育委員会
協力:
情報科学芸術大学院大学[IAMAS]
岐阜県博物館
せきがはら人間村生活美術館
取材:
小寺 良一
藤原 修身・純子
辻田 文雄
近持 イオリ
飯沼 信彦
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スケジュール
2021.12 作品撮影・3Dスキャン
2022.03 告知フライヤー制作・取材・3D出力 スケッチブック複製
2022.04 取材・映像編集・サイン・マップ・ハンドアウト制作 設営
2022.05 展示