アルゴリズムとからだ展icmc2005

※本イベントは2005年12月25日に終了いたしました。

Special Event

::「師匠の背中」

参加大学の教官であり、日本のコンピュータ音楽シーンを代表するアーティストでもある有馬純寿、岩竹徹、菅野由弘、長嶋洋一、平野砂峰旅、各氏がコンピュータ音楽の未来を占い、自らの最新作を惜しげもなく披露したライブ・ イベント。

  • [不思議]  菅野由弘 (早稲田大学) http://www.ykanno.com/
    「不思議」が目指しているのは、耳と目で聴く音楽である。やや観念的ではあるが、視覚と聴覚の融合ではなく、「音楽と映像を聴く」作品なのである。日本を代表する墨書家、井上有一の書は、「書」という一枚の静止画であるにもかかわらず、動的である。動的な静止画が存在するとすれば、聴覚的な映像も当然可能であろう。「不思議」"Fu-Shi-Gi"の映像は、「荒々しい筆跡」のアップに始まり、徐々に書の全貌を現して行く、音楽によって吸い出されてくる、と言った方が相応しいかも知れない。まさに「書」が聞こえ、音楽が飛天のように優雅に上空を舞う。音楽は、西洋のヴァイオリン、日本の箏、国籍不明のキーボードとコンピュータによる演奏。この9月にニューヨークで初演、好評を得た。
    菅野由弘
    東京芸術大学大学院作曲科修了。79年「弦楽四重奏曲」がモナコ・プランス・ピエール作曲賞。94年、電子音楽「時の鏡1―風の地平」がユネスコ主催、IMC推薦作品、2002年ラジオドラマ「アウラ」でイタリア放送協会賞受賞。作品は、国立劇場委嘱の雅楽、聲明、古代楽器のための「西行?光の道」(春秋社刊)、NHK交響楽団委嘱のオーケストラ「崩壊の神話」、他にNHK大河ドラマ「炎立つ」、NHKスペシャル「フィレンツェ・ルネサンス」の音楽など。
    水野佐知香(ヴァイオリン)
    東京芸術大学卒業、第44回日本音楽コンクール第一位、レウカディア賞受賞、第21回海外派遣コンクール松下賞受賞、1977年ヴィエニアフスキー国際コンクール入賞、第15回民音コンクール室内部門第一位。在学中より活発な演奏活動開始、2003年、東京文化会館小ホールで行われたリサイタルは、「音楽の友」2003年のコンサートベストテン第一位に選ばれた。現在、洗足学園音楽大学教授、フェリス女学院音楽学部講師、弦楽合奏団ヴィルトゥオーゾ横浜代表。
    福永千恵子(箏)
    東京芸術大学卒、79年<パンムジ−クフェスティバル>コンク−ルにて独奏部門第一位。80年よりリサイタル開催。81年、大阪文化祭賞受賞、2002年ビクター Best Take 福永千恵子 (VZCG-250) 発売、2003 年 [ やさしく学べる箏教則本] を汐文社より出版 現在 東海大学 教養学部教授として教壇に立つほか、上越大学、洗足学園音楽大学、茨城大学で後進の育成に力を注ぐ。沢井箏曲院所属。
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  • [Sight Sound -Phenakisti Scope-]  平野砂峰旅 (京都精華大学) http://www.nn.iij4u.or.jp/~shirano/
    数年前より制作している視覚と聴覚を統合したマルチメディア作品シリーズ”SightSound”の新作。今回は、驚き板(Phenakisti Scope)を題材にしたライブバージョン。通常はレコードをまわすターンテーブルで驚き板を回す。レコードと違い驚き板から音は出ませんので、ターンテーブル上でまわる驚き板の映像の変化をビデオカメラで撮影しその映像信号をMAX/MSP/Jitterで処理して音に変換します。ターンテーブルを演奏して得られる、驚き板による映像と、その映像でサウンドを演奏する試みです。このプログラム原稿執筆時、鋭意制作中。はたして、どのようなライブが展開(回転?)するのか、請うご期待!
    驚き板制作:赤山仁/井上信太
    平野砂峰旅
    学生時代より、ビデオ、実験映画のサウンドトラックの制作を始める。その他、インスタレーション、演劇、コンピュータグラフィックスといった様々なメデイアや空間のサウンドデザインに携わる。システムソフトにおいてパソコンの店頭デモ用の音楽、SE制作を担当する。九州スクールオブビジネス(2年制専門学校)において情報処理の講師を勤める。大学卒業後就職したヤマハでは業務用音響機器の設計(主にソフト開発)に携わる。i&iでMultimedia(CD-ROM,WWW,CG)の企画制作を行なう一方、京都精華大学で美術学部デザイン学科非常勤講師を勤める。また、アーティストとしてサウンドインスタレーション作品、ビデオ作家の伊奈新祐氏や、メディアアーティストの小杉+安藤氏とのコラボレーションによるマルチメディア作品を数多く制作している。2000年より京都精華大学芸術学部デザイン学科にて教育、作品制作に携わる。
    赤山仁(CGアーティスト)
    1996年埼玉大学教育学部卒業。1998年筑波大学大学院修士課程芸術研究科修了。日本電子専門学校コンピュータグラフィックス科専任講師、筑波大学芸術学系担当準研究員を経て、2003年より京都精華大学芸術学部専任講師。CGアニメーション作品「Dice」がSIGGRAPH 2005 Electronic Theater に入選、平成16年度文化庁メディア芸術祭アート部門審査委員会推薦作品。CGアニメーション作品「Sweet Colors」がISEA 2002 名古屋電子芸術国際会議Electronic Theater に入選、平成13年度文化庁メディア芸術祭ノンインタラクティブ部門審査委員会推薦作品。CGアニメーション作品「Garden of the metal」がSIGGRAPH 2001Electronic Theater に入選、平成12年度文化庁メディア芸術祭ノンインタラクティブ部門優秀賞を受賞。
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  • [Nature System]  長嶋洋一 (静岡文化芸術大学) http://nagasm.suac.net/ASL/index.html
    本公演は、ライブComputer Music システムとライブComputer Graphics システムを用いたメディア・アート・パフォーマンス作品の世界初演である。 システムはMax/MSP/jitter をベースとして構築され、OpenSoundControl プロトコルを経由して、井尻敬によって開発された"Interactive L-system"( 初公開) をライブコントロールする。グラフィクスパートは、持塚亜美の制作した映像と"Interactive L-system" によりライブ生成するグラフィクスを融合させ、jitter ベースでリアルタイム画像処理を行う。稲垣理恵のパフォーマンスは、新開発のデュアル3 次元加速度センサによって、システムの映像生成・音響生成・シーンチェンジなどを即興的にコントロールし、作品の基幹テーマである「樹」「無機質な自然」「生成流転」を表現する。
    プロジェクト「樹虎」
    長嶋 洋一 ( 作曲) 静岡文化芸術大学デザイン学部 http://nagasm.org
    井尻 敬 (Interactive L-system) 東京大学大学院情報理工学系研究科修士2 年
    稲垣 理恵 (Performance) 静岡文化芸術大学デザイン学部空間造形学科2 年
    持塚 亜美 (Graphics) 静岡文化芸術大学デザイン学部技術造形学科1 年
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  • [A Study in helix]  有馬純寿 (彩都IMI 大学院スクール) http://www.40nen.jp/arima/
    このパフォーマンスで用いるすべての音響は、金属製のコイルを発音体とする自作楽器の音のみを素材としている。この楽器は、かつてジョン・ケージやデヴィッド・チュードアらがパフォーマンスに使用していた音具をもとに、2002年に一柳慧氏の独奏によるケージの《ピアノとオーケストラのためのコンサート》の演奏会のために「復元」したもので、後に「helixphone」と命名して、私自身がライブ・パフォーマンスでしばしば使用してきたものである。今回のライブでは、この「helixphone」を振る、擦る、叩く、削るなどさまざまな奏法で即興的に演奏し、その音響を2台のコンピュータでリアルタイムに加工・編集していく。音を制御するコンピュータの各パラメーターは、フィボナッチ級数など「螺旋的」なものが随所に用いられている。
    有馬純寿
    1965年生まれ。ノイズ、エレクトロニカから現代音楽までエレクトロニクスやコンピュータを用いた音響表現を中心に、ジャンルを横断する活動を国内外で展開する。作品もライブからCD、サウンド・インスタレーションまで幅広く、会田誠、小沢剛ら同年生まれの作家との「昭和40年会」をはじめ美術家とのコラボレーションによる展覧会への参加も多い。主なCDに『Archipelago』、『AStudyinhelix』、著書に『作曲の20世紀』、『美術館革命』(いずれも共著)などがある。
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  • [Mother Wind II(2005)]  岩竹徹 (慶応義塾大学) http://web.sfc.keio.ac.jp/~iwatake/
    予定していた新作が間に合わないため、今年7月に愛知万博の「世界ミーム博覧会」で初演された「Mother Wind」を、今回のコンサート用に急遽アレンジする事となった。この作品は、音響オブジェクトの各個体に染色体を持たせ、交配/突然変異などにより自律的に進化していくEvolutionaryMusicのリサーチの過程で、この方法からヒントを得て生み出された作品であるが、この作品自体には進化的アルゴリズムは組み込まれていない。名古屋能楽堂での初演であったため、能の名作「羽衣」を下敷きにして、「直感的」に作曲されている。初演時のソロ楽器は笙であったが、今回は音色の似ているハーモニカで演奏される。ハーモニカ奏者の水野君は、この分野の世界チャンピオンなので、彼の解釈を楽しんで頂ける事と思う。
    岩竹徹
    1951年東京に生まれる。1974年に慶応義塾大学工学部を、1975年にイリノイ大学音楽学部修士課程を卒業。シカゴで1年間音楽活動を行った後、1976年にボストンへ移り、1980年にハーヴァード大学音楽学部博士課程卒業(Ph.D)。ハーヴァード在学中は、MITでコンピュータ音楽の研究を行い1979年のガウデアムス国際作曲コンクールに「Divertimento for chamber orchestra」が入賞。同作品に対してM.B.ロックフェラー財団賞が授与される。以来、オーストラリア、カナダ、アメリカ、ヨーロッパ各国からフェローとして招聘され作曲活動を行う。1990年に慶応義塾大学環境情報学部創設に参加し、現在同教授。各種グラント等の受賞多数。90年代は、信号処理による音響生成を創作の中心的な方法論としていたが、近年のハードウエアの性能向上に伴い、現在では進化的な方法論を応用したリアルタイム作品に関心が移って来ている。代表作に「サイバーオペラ1998(観世栄夫演出・主演、明治神宮内苑)」など。
    水野隆元(ハーモニカ)
    1999 年慶應義塾大学環境情報学部卒業後、ミュンヘン、ヴュルツブルグで音楽学を学び2004 年より神奈川県立厚木清南高校非常勤講師。現在、慶応義塾大学大学院修士課程在学中。ハーモニカ奏者として、F.I.H. JAPAN ハーモニカコンテスト1991、複音ソロ部門、第一位。第1 回アジア・太平洋ハーモニカチャンピオンシップス1996 台北(台湾)、複音ソロ部門、第一位。F.I.H. JAPAN ハーモニカコンテスト1997、アンサンブル小編成部門、第一位。F.I.H. 世界ハーモニカフェスティバル1997 トロッシンゲン(ドイツ)、複音ソロ部門、第一位。F.I.H. JAPAN ハーモニカコンテスト1998、アンサンブル大編成部門、第一位。F.I.H. JAPAN ハーモニカコンテスト1999、アンサンブル小編成部門、第一位、並びに全部門において、グランプリ。第3 回アジア・太平洋ハーモニカチャンピオンシップス2000 ソウル(韓国)、トリオ部門、第一位。第4 回アジア・太平洋ハーモニカチャンピオンシップス2002 厚木(日本)、トリオ部門、金賞。などを受賞。
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::映画「日々」ライブ上映

前田真二郎監督映画「日々」のために三輪眞弘が作曲した音楽を「からだプロジェクト」で特別開発された5匹のロボット・マラカス隊によって(同時)演奏するライブ上映会。

  • 映像 前田真二郎 (IAMAS) http://www.iamas.ac.jp/~maeda
    映像作品「日々 "hibi" 13 full moons」は2004 年の1 年間(366 日)の記録である。毎日、ワンカット15 秒をカメラ付ノートパソコンによって撮影している。その時間帯は、月の運行をベースとしたルールに基づいている。映像表現における「記録性」と向かい合ったこの作品は、インプロヴィゼーション・シネマの新しい形態といった側面もあわせもつ。
  • 音楽 三輪眞弘 (IAMAS) http://www.iamas.ac.jp/~mmiwa
    “「日々」のための音楽” はサウンド・トラックなどによる音響再生によってではなく、上映の場で人間が演奏する「ライブ上映」という形式をとる。演奏には「マラカス隊」として5人のマラカス・プレーヤーが出演し、映像にタイミングを合わせ「蛇居拳算」と呼ばれる規則に従ってマラカスを振る。その際、マラカスの振り方(演奏パターン)は予め決められており、また厳密な規則によって演奏が進行するため、プレーヤーが間違えない限り、映像と音 楽の進行は常に一致し、即興などは行われない。今回の公演で「マラカス隊」は人間ではなく、スクリーンの前に車座になって置かれた5台のマラカス・ロボットによって行なわれる。言うまでもなく、 たとえロボットが人間と同じようにマラカスを振ったとしても、それは人間が演奏することとは全く別の出来事である。それは観客と時空を共有しつつ目前で生まれる(マラカスの)生音とその起源であるはずの人間の不在を露呈させることによって、今まで試みられたことのなかった音と映像との関係性を問う試みであり、同時にそれは「日々」という映像作品自体で試みられている新しい映像表現のあり方に呼応したものに他ならない。
  • マラカス・ロボット開発
    ソフトウェア・デザイン:石塚展久
    ハードウェア・デザイン:小野寺啓
    制作:IAMAS からだプロジェクト
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::「時間旅行楽団」特別公演

三輪眞弘が提唱する「逆シミュレーション音楽」の演奏を発端に、大学の壁を越えて集う若者達によって結成され、2005年に山口情報芸術センターでデビューを果たした「時間旅行楽団」による創作音楽パフォーマンス。

  • [時間旅行楽団メドレー]
    時間旅行楽団(篠田 知哉・高山 葉子・牛島 安希子・山田 亮・文谷 有佳里・津坂 真有・野副 安友子) (IAMAS + 愛知県立芸術大学) http://timetimeti.exblog.jp/

    『蛇居拳拍子』『蛇居拳節』『正調蛇居拳節』
    以上の3 曲は松尾芭蕉が仙台の地よりここ岐阜県大垣市に伝えたと言われている不思議な算術『蛇居拳算』が、この地に根付き生まれた芸能である。『蛇居拳節』はリズミカルな、『正調蛇居拳節』はゆったりと雅楽的な特徴を持つ。なお『蛇居拳拍子』はこの地に残る芸能の一つである『蛇居拳太鼓』が楽器なしでも演奏出来るように手拍子を用いた形に変化させられたもので、近年大垣の若者の間で大ブームとなっている。
    『新動力システムの人力模擬実験 』
    19世紀イギリスで始まった産業革命の影響でヨーロッパ諸国は機械による産業開発に力を注いだ。フランスでは日本人留学生宇田壮介が石油・石炭に代わる新しい動力の開発を進め、植民地カシェ国の人々に新動力のシミュレーションをさせた。
    『サンシー村のテグ式』
    フランスはサンシー村に伝わる伝統芸能テグ式は、通信実験を村人が真似て遊んだことから広まったとされる。修道女たちによっても秘密裏に行われるようになったこの風習は、超越的な存在への服従を表現しているのかもしれない。
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