RCIC
Research Center for Industrial Culture 情報科学芸術大学院大学 産業文化研究センター

特別支援学校での防災教育におけるXRの活用

2021年度

XR技術の活用から体験的でより深い学びを得られる環境の実現を目指す

大垣特別支援学校での防災教育において、水害や液状化現象など授業での擬似体験では児童生徒らがどのように対応すれば良いかを理解させにくい、という問題意識を持たれていた。そこで、XRでのリッチな映像コンテンツを活用することで、従来の防災学習よりも理解を深めることを目的とした取り組みを行うこととなった。本連携は、当該支援学校が外部の補助金を得た事業に対して、本プロジェクトがアドバイザーとして協力したもの。

主に以下の3つの実践を行った。
豪雨時の雨量により視界がどう変わるか、ARお天気アプリをゴーグルで視聴してもらい、雰囲気を掴んでもらった。
また、リアルな災害時の映像は恐怖心から教育的効果が得られないため、「おもちゃの家で学ぶ防災教育」を提案した。全天球カメラを設置したおもちゃの家で遊びつつ、子供たちにはジョウロの雨を担当してもらう。家が洪水に遭う様子は、人形視点のVR映像でも体験してもらい、災害を考える機会とした。
一方で、こうした情報機器を活用した教育実践が学校内で広まらないことから、先生たちへインタビューも行っている。

おもちゃの家にジョウロの雨を降らせている

おもちゃの家が洪水に遭っている状況をVR映像で体験

  • 連携先

    岐阜県立大垣特別支援学校

  • 連携期間

    2021.04 -

目的と成果

企画は、防災に限定するのではなく、教育全般においてAR/VRなどの技術を活用した方法を実践し、子供達により理解しやすい教材・教育環境を目指すことが目的である。福祉の技術プロジェクトでは、そのうちの防災を中心に関わった。
5月に行った打ち合わせで、ARお天気アプリとおもちゃの家で学ぶ防災教育の2案を実施することになった。
ARお天気アプリの実践では、実際のAR体験前後に先生が伝える内容、特に子供たちの理解を支援する導入等をどうするのかなどが話し合われた。
AR/VRは一般的に情報機器の画面を通した体験が中心となるが、「おもちゃの家で学ぶ防災教育」では、実空間に存在するおもちゃの家とそこで撮影した映像を使っているので、実空間とリンクしたVR映像は、子供たちにとっては理解しやすい教材となった。さらに他の防災への展開も検討されている。
他方、こうした教材・教育環境を広めるには、まずは同校で働く先生たちの理解と実践が不可欠である。実践に立ち合われた先生へのアンケートでは、多数の好意的な意見が寄せられたが、実際の授業などで利用・活用された先生は少ないため、インタビューなどを通して課題の把握をしている。

IAMASの役割

先生との対話を通して実践内容などの企画・提案を行った。その話し合いの中で、「子供たちはなかなか災害についてピンと来ない。」という意見があった。このヒントから子供たちの興味関心が続きやすい、「おもちゃの家で学ぶ防災教育」が生まれた。
なお、その後も改良提案があり、例えば透明な水が家に入って来ても災害時の泥水は想像しにくい、という指摘から途中で色水になるなど細かな改良が加えられている。
また、次年度以降は他学校への展開を見据えてパッケージ化するなどの提案も行っている。

  • 開催場所

    オンライン / 岐阜県立大垣特別支援学校 / IAMAS

  • 担当教職員

    • 山田 晃嗣
    • 小林 孝浩
  • 運営

    協力者:
    篠田 幸雄(研究補助員)
    湯澤 大樹(研究補助員)

    関連プロジェクト:
    福祉の技術プロジェクト

  • スケジュール

    2021.04 大垣特別支援学校の連絡協議会に参加
    2021.05 内容についての打ち合わせ
    2021.06 ARお天気
    2021.09 おもちゃの家で学ぶ防災教育
    2021.12 先生へのインタビュー