石に話すことを教える:生きるという〈わざ〉

2025年3月15日から30日まで、京都市・瑞雲庵で「石に話すことを教える:生きるという〈わざ〉」が開催されます。この展覧会のキュレーション、および出展作家として大久保美紀准教授が参加します。
展覧会「石に話すことを教える― 生きるという〈わざ〉」は、1966年にフランスに渡った石彫家・井上佑吉(1942-)の石との対話を想い、大久保美紀・杉浦今日子・堀園実がそれぞれのマチエールで、生きる〈わざ〉を探求する芸術実践である。
井上の傑作 « Mille et une têtes » (2011)は、沖縄の真っ白で美しい石灰岩を素材とした素朴な石彫群で、その一つ一つは人の頭部を表す。1945年に沖縄戦で父を亡くした井上は、今日まで200体もの顔を掘り続ける。本作は、石彫家の表現の結晶である。
石は文明の初めから人類と共にあり、束の間の我々の生を超越する遥かな記憶をその内に蓄積してきた。アメリカの詩人であるアニー・ディラードは『石に話すことを教える』(1983)において、ガラパゴス諸島で出会った青年の石に話すことを教える仕事が崇高であると評した。人類の文明とは、何も意味していない宇宙の中に秩序や法則を見出すこと、宇宙を人間化し、世界を人工的なイメージや言語によって満たしてゆくことにほかならない。そして、石を彫ることは、いかに高度な科学とテクノロジーを発展させても、世界を人間化できないことを知ることである。
「石に話すことを教える:生きるという〈わざ〉」展覧会概要より引用