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出版 教職員

松井茂 詩集『二●二●』の無償配布について

 
松井茂准教授が、2020年4月17日から6月11日にかけて、自身のFacebookにアップロードした18篇の詩をまとめた詩集『二●二●』がengine booksより刊行されます。本書は、「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う京都市文化芸術活動緊急奨励金」の助成を受け、先着で無償配布されます。送付希望の方は、は件名を「詩集希望」とし、住所と名前を ks-koji@nifty.com までお送りください。
 

解題

 2019年夏、私は、Facebookとtwitterを退会したが、状況の変化に伴い、2020年春にFBを再開した。これを契機に、2017年にFB上で取り組んだ作品──数列による詩のヴィジュアライゼーション、アルゴリズムで生成した詩編──を、ホームページにリンクした。このことを通じて、詩の支持体としてのFBは、特性の無さを特徴とすることを確認した。ここは支持体になり得ない場、つまり“荒地”だとすれば、どんな事故でも許される、実験場として活用するに如くはない。そこで、断続的に制作してきた検索による詩(2004年〜)、Google翻訳による詩(2006年〜)をFBで再開しようと決めた。この背景には、もともと連歌や連詩に興味をもってきたことが関わる。ただし協働を他者に求めることで生じる優位行動(マウンティング)や合意形成といった、目標指向(goal-oriented)への忌避感から、ネットワークが持つ冗長性とサスペンスを選択してきたわけだ。
 Google翻訳は、2016年からニューラルネットワークを使用し、その精度が飛躍的に向上したことが知られている。しかしながら、詩を書く私にとっての使用感は、多様性から一意へと向かう、なんらかの意志の現れと感じられた。正確そうで不気味な閾値に、息苦しさと不用意な清潔感が漂う。ネットワークから、逸脱的思考(divergent thinking)と求心的思考(convergent thinking)が、辛うじて応答している2020年春の試行錯誤として、私はこの詩集を上梓する。
 情報科学芸術大学院大学で、私が2019年度から参加するArchival Archetyping、2020年度から参加するタイムベースドメディア・プロジェクトでの取り組みや議論が、こうした詩を書くきっかけに繋がっている。

松井茂(詩人、IAMAS准教授)