IAMAS

活動報告

その他のレポート

リンツ美術工芸大学交換留学体験記
#1 交換留学制度の概要編

本学では、メディア表現における海外の先端事情と技術を学び、国際的な感覚をもって活躍する高度な表現者を育成するために、本学と交換留学に関する協定を締結してリンツ美術工芸大学との交換留学を実施しています。毎年1名が提携校に1~3ヶ月留学するとともに、提携校の学生がIAMASに滞在し、互いに交流を深めます。
本連載では、今年度、リンツ美術工芸大学に交換留学中の鈴木健太さんから留学中の体験をレポートしていただきます。

 

はじめに

こんにちは。IAMASの交換留学制度を通して、リンツ美術工芸大学(Kunstuniversität Linz)に交換留学をしている修士1年の鈴木健太です。本プログラムに関して、自身の体験や考察を踏まえながら、数回に分けて連載という形で報告してしきます。3ヶ月の留学生活を2週間に1回のペースでまとめ、合計6回のレポートを予定しています。

さて、今回は連載第1回目として、この制度はどんな制度なのか、どういう経緯で留学に至ったのか、リンツでのアパートの環境に関して報告したいと思います。

本プログラムでは、年に2回、派遣学生の募集と選考が行われます。留学の実施期間は、第1回が4月から7月、第2回が9月から12月であり、その期間の間で各々の学生に応じて最大3ヶ月の留学計画を立てることができます。第1回はその年度の2年生が、第2回はその年度の1年生が募集対象となるため、学生の視点から見ると、1年生の秋頃の期間と2年生の春頃の期間の合計2回、本プログラムに応募する機会があることになります。

留学中は、特に研究や制作に対する義務や、留学先の授業への出席義務はありません。個々の学生に応じて、制作・研究するもよし、授業に出席するもよし、ヨーロッパの美術館を回るもよしという自由度の高いプログラムです。ただし、留学先での自身の活動のプレゼンテーション、帰国後のIAMASでの留学報告のプレゼンテーションとレポートの提出はしなければなりません。また留学中には、IAMASでの授業には出席することができないので、担当の先生に連絡して、授業毎に特別措置(例えば、レポート提出による出席代理措置)を受けることになります。当然ながら、支援を受けていますから、自身の活動に還元することを前提とした留学計画が求められます。

 

僕が応募した理由


さて、僕の場合ですが、第2回の募集に応募しました。予め留学先は学校によって決められており、オーストリア・リンツにあるリンツ美術工芸大学のInterface Cultures学科への留学の募集でした。したがって、9月の初頭にリンツにて開催される「Ars Electronica Festival 2019」の開催時期に被せて、9月から11月の3ヶ月間の留学計画を立てました。おおまかな計画の内容は、9月をArs Electronica Festivalを含め、リンツ周辺の美術館・芸術祭で作品を鑑賞する時期にし、10月と11月に授業を受けながら、制作をするという内容です。

僕がリンツ美術工芸大学でこの時期に留学したいと思った理由に、筑波大学の2年次の時にArs Electronica Festival 2016に訪れた経験が強く影響しています。当時、筑波大学のプログラムで、1年次の時からHCIに関する研究室で研究をしていました。研究成果の発表の場として、Ars Electronica Festival 2016 に研究室から出展があり、その一環で自分が関わっている研究の展示をしました。その時に、単なる技術の新規性の主張ではなく、技術のその先にある社会や文化に目を向けた作品がこんなにもあるということに衝撃を受けました。また、自身の研究に対して、一般的な(芸術学や工学を専門としていない)市民が、なぜこのような作品を作るのか、作者はなにを考えているのか、社会をどう捉えているのかといった質問を頻繁にされ、技術や技術を元にした芸術文化が生活に根付いている様子が印象的でした。知識や経験が不足していたことは否めないですが、そのときに、自分のやりたいことは、工学的な価値よりもそこを起点として醸成される社会や文化に興味があるということを意識し始めました。そして、そのアプローチとして工学的研究以外の手法があることを知りました。

その後、徐々に自分の手で作品を作りたいという思いが強くなり、工学的な研究から離れ、3年次に作品制作を開始しました。4年次には、別のCGに関する研究室で卒業研究を行うものの、3年次に行っていた制作を大学院でも続けたいと思い、IAMASに入学しました。そして、入学したての4月に本プログラムの第2回の募集があり、3年前よりも知識や技術も身につき、これから作品制作をしようというタイミングで、もう一度リンツやArs Electronica Festivalを訪れたいと思いました。また、留学先のInterface Cultures学科について調べると、その名前が表しているように、インターフェースを中心にその文化的・社会的応用可能性について扱っており、自分の興味のある分野との重なりが大きいことも応募をしたいという思いを後押ししました。

 

留学準備


「応募をしたい!」と思ったものの、その背後にたくさんの不安がありました。特に不安だったのは、語学力です。実は、3年次の作品制作を開始しようというタイミングでとある海外の大学への留学プログラムに応募していたのですが、書類審査・面接をした後、英語の運用能力の低さが原因で留学ができませんでした。その経験から、仮に今回留学ができたとしても、現地の学校で多くを学べるのかという不安や、IAMASの授業に出席し、制作を続けている方がいいのではないかという悩みがありました。

そんな中、本プログラムには相談期間という期間が設けられており、5月の一定期間、担当の先生と相談ができる期間があります。その期間を利用して、担当の伊村靖子先生に相談にのっていただき、興味分野が共通するところがあるということもあり、本プログラムへの応募を勧められました。また、海外からIAMASに進学してきた同期や、すでに同じプログラムでの留学を終えた先輩、逆に交換留学でIAMASに来ている学生の話を聞き、不安も少なくなり、今回のプログラムに応募しようと決心しました。

留学にあたって選考があるため、応募する際には留学計画書を作成し、提出する必要があります。計画書にはフォーマットがないので、どんな計画書を書けばいいのか不安になりましたが、今まで応募してきた先輩達の計画書が学生間で引き継がれていたので、それらを参考に自分の計画書を完成させました。また、IAMASによる選考用の日本語の計画書と留学先に送る英語の計画書を提出する必要がありましたが、IAMAS事務局の国際交流員の方と、海外から進学してきた同期に英語の添削をしてもらうことで、英語の計画書も完成させ、応募をしました。日程的には、6月中に応募をし、その月のうちに採択の連絡がありました。

無事留学ができることになりましたが、いざ留学するとなると沢山の準備が必要です。まず、留学先の先生、施設管理の方とメールのやり取りをし、滞在するアパートの空き状況の確認をし、具体的な日程を確定します。本プログラムでは、留学補助金が与えられ、今年度の金額はほぼ日本とオーストリアの往復航空券と同じ金額になっていました。そのうえ、留学先の学科の短期滞在者用のアパートを使用させてもらえるので、留学先の家賃やアパートでの生活での光熱費は支払う必要がありません。そのため、実質学生が負担する主な費用は、滞在中の保険料、食材や生活用品に関する費用、ヨーロッパを周遊し美術館を訪れる場合は、その交通費になります。

具体的な日程を確定すると、その日程に応じてIAMASの事務局に海外派遣に関する様々な書類を提出し、航空券や滞在中の保険の手配をします。これら一連のやりとりは、今まで留学してきた先輩達によって代々引き継がれてきた、秘伝のタレのようなオンラインドキュメントがあるので、特に困ったこともなく準備を進めることができました。

 

留学開始


前期の授業を受けながら、準備をしているとあっという間に留学開始日を迎え、リンツに飛びました。事前のメールにて、留学先の施設管理の方から、鍵の受け渡しのために大学の事務局に来て欲しいという旨を伝えられたので、まず、留学先のリンツ美術工芸大学に向かいました。リンツ美術工芸大学は、リンツの旧市街地のドナウ川沿いにある、大きな広場に面しています。この広場までは、リンツ中央駅からトラムで行くことができるので、交通アクセスが非常に良い場所にあります。

僕の場合、ウィーン国際空港からウィーン中央駅へ行き、1泊した後、ウィーン中央駅からリンツ中央駅に行きました。衣服や生活用品だけでなく、制作に必要な資材も持ってきたため、大きなスーツケースを2つ持ちながらの移動でしたが、交通アクセスが非常に良かったため、そんなに疲れることなく大学に着くことができました。今回は、ウィーンからリンツへの移動でしたが、逆にリンツから周辺の国や町に出かけるときにも便利な立地のように感じました。

大学に着き、指定されたInterface Culturesのエリアに行くと、学科の施設管理の方が暖かく迎え入れてくださり、大学の施設の大まかな説明を受けた後、大学のキーカードとアパートの鍵を受け取りました。大学の施設に関して、IAMASとは異なり面白いと感じたので、後日別のレポートで報告したいと思います。鍵を受け取った後は、そのまま施設管理の方がアパートを案内してくださいました。アパートは、学科の短期滞在者向けの施設で、Interface CulturesへのGuest ResearcherやGuest Professor、僕のような短期留学生が滞在できるようになっているようです。場所は、大学から広場を挟んで反対側、徒歩5分もかからない程の恵まれた立地です。

 

アパートでの生活


アパートに入ると、施設管理の方から利用方法・注意点等を説明してもらいました。アパートの中には、3つの部屋と共用の洗面所・シャワールーム・トイレ・キッチン・洗濯室がありました。個人の部屋には、ベット・デスク・クローゼット等があり、生活には必要なものはほぼ揃っていました。施設には3つの滞在者用の部屋がありましたが、この記事を書いている時点(1ヶ月程の生活)では、3日程、他の滞在者がいましたが、ほぼ1人で利用している状態です。

キッチンには、食器・冷蔵庫・食洗機があり、目の前の旧市街地を歩き徒歩数分のところにスーパーマーケットがあるので、食材を買ってこれば、自由に自炊ができる環境になっています。また、食材だけでなく、服や生活用品等、必要なものは大抵旧市街地を歩いていれば手に入るので、生活に困ることはあまりありません。自炊が面倒な時には、外食をすることも可能です。また、週に1回アパートに清掃員の方が訪れ、キッチンを含め共用部分の清掃、ゴミの撤去、リネン・タオルの交換をしてくれるので、基本的に自分でやることは、自室の清掃や洗濯になります。

さて、留学する前から留学が始まるまでの内容についてまとめました。今回は、主に留学制度にまつわるトピックについての内容でした。次回以降、より生活的な内容や、自身の体験に焦点を当てた内容を報告していきたいと思います。

 

執筆者:情報科学芸術大学院大学修士1年 鈴木健太

IAMASからのお知らせ