学長あいさつ

president

情報科学芸術大学院大学
学長 吉田茂樹

1996年に「メディアアートの学校」として新設されたIAMASは、その後着実に社会に認知され、時代の変化と共に活動の幅を広げてきました。IAMASがこれからの一歩を新たに踏み出すにあたり、私は学長として、あらためてIAMASがこの社会において担うべき役割とその意味を考えたいと思います。

IAMASでは「メディア表現」の名の下にアート、デザイン、エンジニアリング等の多様な分野の人々が集い、交流・協力しながら活動を続けてきました。それらの活動が今まで円滑に継続してきたのはなぜなのでしょうか? それは、表現方法は違いながらも、その根底に人間の本質的なあり方を見いだしたい、そしてその意味をこの社会との関係の中で追求したいという共通の思いがあったからだと私は考えます。そしてそこには、我々が共有する今日のテクノロジー社会という環境があり、それが大前提であったからこそ、IAMASでは多様なメディア表現を展開し、様々な分野の専門家の思いをつなぎ、一つの方向へと進んでいくことが可能だったということができるでしょう。

しかし9.11や3.11などによって人々の意識や社会状況が劇的に変化した今、メディア表現に対する、現代社会における意味についての認識そのものにも大きな修正が必要とされています。それは、エネルギー供給を前提としたテクノロジー社会のありかたそのものを考え直すことであり、未来に向けて私たちは今一体何を成し得るのかをさらに深く考えていくことであると私は思います。

そのような時代にIAMASができることは、異なる領域を専門とする人々が、日々の生活から高度なメディア表現にまでいたる様々な場面において、人間として互いに深く関わりあい、その交流の中から生み出される「新しい知」のあり方を模索していくことではないでしょうか。現代社会において、今後もIAMASは、地域社会の中で活動する小さな組織であるからこそ可能な、交流や対話の中から生まれる「新しい知」のあり方に確かな形を与え、それを実践していくかけがえのない場所であり続けなくてはなりません。