フリースタイルの継承 久松真一図書資料展
久松定昭氏にインタビューする雨宮由夏(博士前期課程1年)
2024年1月24日から3月1日まで、本学附属図書館とArt of Listening プロジェクトの企画で、岐阜県にゆかりのある哲学者、久松真一(1889~1980年)を主題にした展覧会「フリースタイルの継承 久松真一図書資料展」を開催します。本展では、岐阜県図書館と附属図書館が所蔵する図書資料を中心に、Art of Listening プロジェクトによるリサーチに基づくインスタレーションを展示します。開館時間等は、本学図書館のWebサイトで確認の上、ご来場ください。
本展には、雨宮由夏さん(博士前期課程1年、AOL)、久松定昭さん(久松真一記念館館長)、卒業生の冨田太基さん(デザイナー)、松井茂教授(図書館長、AOL)、渡辺基尚さん(本学図書館司書)が参加しています。
フリースタイルの継承 久松真一図書資料展 ハンドアウト(PDF)
メディア表現として記録された記憶へ
松井茂(IAMAS図書館長、教授)
情報科学芸術大学院大学付属図書館とArt of Listening プロジェクトの企画で、岐阜県にゆかりのある哲学者、久松真一(1889〜1980年)を主題にした展覧会を開催します。久松は、西田幾多郎に学び、京都大学や京都市立芸術大学で教鞭を執った人物です。その思想に対する注目は、禅の研究を通じて世界的に高まっています。またリレーショナル・アートの作家リー・ミンウェイが、森美術館で開催した個展に、久松による書「白隠の隻手の声は耳もなく手も無く舌もなくてこそきけ」を展示しました。
本展では、岐阜県図書館と付属図書館が所蔵する図書資料を活かすと共に、久松真一記念館(岐阜市長良)との対話を通じて、日常に継承されるその思想に注目します。言い換えれば、学説的な検証に留まらず、むしろ岐阜市長良の旧家、旧宅の生活誌という性格から、久松家を主題としたということもできます。その理由として、久松真一記念館に漂うリラックスした雰囲気に惹かれるところが大きくありました。真一を哲学者として評価する一方、他方では生活者としての佇まいを継承している。そのように意識させる要因は、記念館館長である久松定昭氏の生活者としての感覚に基づく。旧家を継承し、旧宅を維持するその方針は、真一の生きた時間の凍結でなく、むしろ現在への溶解として見出されている。この生活感覚の流動性こそが、真一の思想の継承であり、リアリゼーションに他ならないのです。このことは、真一が道場の名前にも用いた「FAS」、すなわち「Formless self/形なき自己」「All mankind/全人類」「Superhistorical history/歴史を越えた歴史」に通じるのです。真一の哲学に基づく記念館の姿を、本展では「フリースタイルの継承」と題しました。これを以下の5つの部分から構成しています。
- 図書資料26冊(渡辺基尚司書)。
- 久松定昭氏へのインタビュー。
- Facebookに氏が公開した抱石庵日記(41篇)。
- 記念館との対話に取り組んだ、雨宮由夏(博士前期課程1年)による、真一の記録、定昭の記憶を再演し、継承(改変)したインスタレーション。
- 冨田太基(デザイナー)による会場構成。
尚、本展のタイトルとした「フリースタイルの継承」は、記念館のリサーチの際、内装の扱いに対して、冨田がふと漏らした「フリースタイルだなー」という発言を活かしたものです。
「インタビュー:久松定昭(久松真一記念館館長)」は、Art of Listening Projectで収録したもので、「フリースタイルの継承 久松真一図書資料展」のリサーチの一環として行われました。