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令和元年度 情報科学芸術大学院大学 学位記授与式 学長式辞(2020年3月6日)

学長・三輪眞弘

2020年3月6日、令和元年度 情報科学芸術大学院大学 学位記授与式を開催しました。





令和元年度 学位記授与式 学長式辞 (2020年3月6日)


みなさん、卒業おめでとう!

 ぼくは、このようにみなさんに「よかったね。おめでとう!」と、卒業を祝う言葉を今、この場所で言えること、そしてみなさんがそれを素直に受け取めてくれることに今日は格別な意味を感じています。それは、世界を騒がせている新型ウィルス流行の中でこの卒業式が行われているからです。今この時もウイルスに感染するかもしれない、知らないうちに自分が他の人に感染させているのかもしれないという不安の中で行われる卒業式など、誰も想像していなかったことでしょう。

 そして、それでも、今日が「おめでたい」のは、科学技術がこれほど発達した現代でさえ、毎年欠かさず同じように卒業式が営まれることが決して「当然のこと」ではないと思い知らされたからです。つまり、ぼくらは誰もが「人間の尺度を超えた原理」の中でしか生きていくことのできない存在だったと、改めて感じずにはいられないのです。

 さて、みなさんはIAMASが求める修士研究のとても高い要求に応え、最終試験に合格しました。その成果はみなさんの熱意と努力の賜であると同時に、IAMASの教員や職員、自治体の、そしてこの社会の成果であり、未来への希望でもあります。大学が未来への希望を育む場所であること、それは、人間が「生き延びるための知恵」を発明しながら、世代から次の世代へと伝えてきた、その人類の営みが今も、この場所で続けられていることなのだとぼくは思っています。
 もちろん、修士研究の成果というものはそれぞれの専門分野からみれば、まだまだ小さな一歩にすぎないかもしれません。しかし、ぼくがみなさんに求めてきた作品や論文に対する「高い要求」とは、専門性や完成度ではなく、未来の世界に育つ発想の「種」がみなさんの研究にあったかどうかということでした。つまり、自然と人間に機械システムが加わった、未来の地球の生態系の中で、大きく育つだろう新しい「種」、遺伝子のことです。それはまだ、誰もが認める「立派なもの」にはみえないかもしれない。しかし、それぞれの分野においてみなさんはその「種」をIAMASの修士研究でみつけた、ということなのです。IAMASの多くの卒業生がそうであったように、みなさんは、自信を持って、そして焦らずにその「種」を大切に育てていくことを心がけてほしいと思います。

 みなさんは、これからの人生の中で、幾度も予想もできない状況に直面することがあるでしょう。今回のような正体不明の感染症や、いまだかつて体験したことのない自然災害など、これからの人類を待ち受けているのは、「想定外」の出来事ばかりかもしれません。そのような時にもIAMASで学んだみなさんなら、つねに「世間の常識」を疑いながら、冷静に「自分の頭で考える」ことができなくてはなりません。そして、目前の危機から、また、歴史から学び、聡明な判断と行動によってみなさんがこの困難な時代を生き延びていってくれるはずだとぼくは信じています。・・・おめでとう!