メディア表現特論C(概念)
「量子力学の成立以後、〈客観的な科学〉の神話は解体した。情報技術やバイオテクノロジーの急速な進展もまた、私たちに「身体」「生命」そして「芸術」について新たに思考するよう促している。こうした世界では、永続的な生体工学の議論が起こるようになり、メディア・アートは、インスタレーションとパフォーマンスにおいて、生物学的な概念やバイオメディアを使用して、こうした議論が具体化され、人間が自然を変容させる過程が前面に押し出されるようになった。この議論を具体化し、人間が自然を変容させる過程を前面に押し出した。現在、メディア・アートは、ウェットウェア、人工生命、エイリアン生命など、さらに複雑な概念について、合成⽣物学と化学、宇宙生物学の分野にまたがり、生命らしさについてさまざまな作品がつくられている。この授業では生命、身体、バイオメディアの概念を探求することで、アート、テクノロジー、哲学などと社会との関係を考察し検証する。
ホアン・マヌエル・カストロ , 小林 昌廣 , 大久保 美紀
講義、ディスカッション、レポート
- 第1回:イントロダクション(小林、大久保、カストロ)
- 第2回:メディアと身体 臓器移植、身体変工、統合失調症(小林)
- 第3回:AIと身体 人間機械論の系譜 器官なき身体 情報と身体(小林)
- 第4回:死と身体 美術解剖学、暗黒舞踏、屍体処理学(死生論)(小林)
- 第5回:同一性と身体 解離性同一性障害、性同一性障害、身体完全同一性障害(小林)
- 第6回:「ホメオパシー」ー毒で毒を制す(大久保)
- 第7回:「ファルマコン」ー生は死を内包する(大久保)
- 第8回:「アーカイブ」ー記憶を外在化する病としての(大久保)
- 第9回:「メタモルフォーゼ」ー生と技術の新たな考え(大久保)
- 第10回:バイオメディア(カストロ)
- 第11回:身体改造、サイボーグ、バイオサイバネティクス(カストロ)
- 第12回:ウェットウェアとウェットな人工生命(カストロ)
- 第13回:エイリアン生命(カストロ)
- 第14回:哲学的身体論の変更〜20世紀から21世紀へ(小林先生)
- 第15回:全体のまとめ(小林、大久保、カストロ)
*カストロの授業は基本的に英語ですが、場合に応じて日本語でも行います。
(Castro’s classes are generally taught in English, but may be conducted in Japanese as needed)
Eduardo Kac, ed. [Signs of Life: Bio Art and Beyond] Massachusetts Institute of Technology Press (2007)
George Gessert [Green Light: Toward an Art of Evolution] Massachusetts Institute of Technology Press (2012)
Hannah Star Rogers, ed. [Art's Work in the Age of Biotechnology: Shaping Our Genetic Futures] North Carolina State University Libraries (2019)
エマヌエーレ・コッチャ[著]松葉類・宇佐美達朗[訳]『メタモルフォーゼの哲学勁草書房(2022)
プラトン[著]藤沢令夫[訳]『パイドロス』岩波文庫(1967)
吉岡洋[編集・責任](現代社会における〈毒〉の重要性研究2019)『poison rouge 2』京都大学こころの未来研究センター(2020)