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リンツ美術工芸大学交換留学体験記 #3 大学生活編

#交換留学

本学では、メディア表現における海外の先端事情と技術を学び、国際的な感覚をもって活躍する高度な表現者を育成するために、本学と交換留学に関する協定を締結してリンツ美術工芸大学との交換留学を実施しています。毎年1名が提携校に1~3ヶ月留学するとともに、提携校の学生がIAMASに滞在し、互いに交流を深めます。
本連載では、今年度、リンツ美術工芸大学に交換留学中の鈴木健太さんから留学中の体験をレポートしていただきます。

 

はじめに

こんにちは。IAMASの交換留学制度を通して、リンツ美術工芸大学(Kunstuniversität Linz)に交換留学をしている修士1年の鈴木健太です。本プログラムに関して、自身の体験や考察を踏まえながら、数回に分けて連載という形で報告してしきます。3ヶ月の留学生活を2週間に1回のペースでまとめ、合計6回のレポートを予定しています。

さて今回は、連載第3回目として、留学先の大学や学科の生活に関する内容について報告したいと思います。

留学先であるリンツ美術工芸大学では、3月から始まる夏学期(Summer Semester)と10月から始まる冬学期(Winter Semester)の2学期制を採用しています。本留学制度のうち、僕が応募した時期の募集では、9月から12月の中で自由に留学計画を立てることができるため、9月に開催されるArs Electronica Festivalと、10月から始まる冬学期の序盤を含めた9月から11月の3ヶ月間の留学計画を立てました。こちらの大学では新入生が冬学期から入学するということもあり、留学生でありながらほぼ正規の新入生と同じタイムスケジュールで留学生活を送ることになりました。今回の記事では、IAMASとの環境と比較しながら、新学期の始めに参加した行事や大学の生活に焦点を当てた内容を報告します。

 

リンツ美術工芸大学(Kunstuniversität Linz)


10月1日になり冬学期が始まると、さっそく大学全体の新入生ガイダンスに参加しました。てっきり入学式のようなセレモニーがあると思っていましたが、そのような行事はなく、いきなりラフな雰囲気のガイダンスが行われました。このガイダンスには、リンツ美術工芸大学に入学する様々な学科の新入生が、学士・修士問わず全員集まり、大学全体の説明を受けます。あまり大学全体の組織構成を知らずに留学に来てしまったのですが、近くにいた新入生に活動領域を聞くと、油絵、彫刻、グラフィックデザイン、建築、ファッション、アニメーション、ファッション、タイムベースドメディアといったジャンルで活動する学生が集まっているようです。

この大学では、基本的に授業や行事はドイツ語で行われるため、このガイダンスもドイツ語で執り行われました。しかし、正規の学生の中にも一定数、オーストリア国外からの留学生がいるため、適宜、重要な情報は英語で補足され、僕のような英語しか分からない留学生でも、情報を取りこぼすことなく、きちんと進行についていくことができました。留学生への配慮はこれだけでなく、留学生用のドイツ語の授業が開設されていたり、英語での学内ツアーが開催されました。これらの特別な措置もあり、50人程いる留学生は顔を合わせることが多く、慣れない土地で学ぶ者同士が友人を作る機会にもなっていきました。

 

Interface Cultures 学科


午前中に大学全体のガイダンスが終わると、午後には留学先であるInterface Cultures学科のガイダンスがありました。この学科はMedia Studies部門の下部組織になります。Media Studiesは、Graphic Design and PhotographyとTime-based and Interactive Mediaという2つの学士課程とTime-based Media、Visual Communication、Media Culture and Art Theories、そしてInterface Cultures学科の4つの修士課程のプログラムから構成されます。Interface Cultures学科は、第2回の記事に見られるように、インタラクティブアート、ウェブアート、サウンドアート、VRやMRといった領域をカバーしている学科で、社会的・文化的応用指向のインタフェースをいかに設計するかを学ぶカリキュラムになっています。

学科ガイダンスでは、学科長である Christa Sommerer先生とLaurent Mignonneau先生の進行のもと、15人ほどの新入生が順番に自己紹介をしました。他の学科と異なり、学生の大半がオーストリア国外からの留学生である点がこの学科の特徴です。したがって、この学科のみ全ての授業が英語で行われ、日常会話も英語で話します。自己紹介を聞いていると、オーストリア以外のヨーロッパの国が多く、南米、アジアから少しずつ学生が集まっています。

集まっている学生のバックグラウンドは、人数が少ないため年度によってバラつきがあるようですが、今年集まった学生は、工学的な要素を含まないアート領域でこれまで制作をしており、これから工学的な要素を取り入れたいという学生が多い印象で、工学をバックグラウンドとしている学生は僕だけでした。IAMASと比較すると、2年生を含めたこちらの学科の学生は、集まってくる学生の年齢や背景の多様さは同程度であるものの、それぞれの学生のこれからやろうとしている取り組みは、プログラミングなどの情報技術を用いた表現を求めているという共通性があり、今後の活動領域の重なりは多いような気がしました。

 

コンパクトな施設環境


1日がかりのガイダンスが終わると、さっそくその週から大学生活が始まります。キャンパス内は学科毎でエリアが分割されており、この学科は主に2つのフロアが割り当てられています。1つは、講義室、教授室、学生居室、キッチンがある3階のフロア、もう1つは、工作室、プロジェクト室がある4階のフロアです。基本的に前者の3階のフロアで1日を過ごすことが多く、学生居室にある自分のデスクで作業し、講義があれば講義室へ、先生と話があれば教授室へ、疲れたらキッチンへ、特別な作業があれば別のフロアへ移動するという生活です。現在のIAMASはこれらの類する部屋が別のフロア、別の建物に分断されているため、相対的にこの学科の施設環境は集約されていて便利だと感じました。

集約されているメリットは便利さだけでなく、学生間や学生教員間の交流が生まれやすいという点がありそうです。これは、特に教授室と学生居室が同じフロアに隣接しているためか、フラッと会った先生や上級生に気軽に質問や相談をしたり、講義終わりにディスカッションをしやすい環境だと感じました。僕の場合、生活に慣れるまでに施設利用の点で不明なことが多かったので、偶然見かけたタイミングで質問を気軽にできたのは大変助かりました。また、僕はずっと学校に居て何かをしているタイプなので、学校に行くだけで自然と先生や他の学生と会話ができ、孤独になることなく楽しく生活を始めることができました。

この学科は各学年15人程で、全部で40人程の学生がいます。そのため、カリキュラムもそれぞれの講義が重ならないように構成されており、講義室も1つのみです。空いている時間にはゲストレクチャーやイベントが開催されることもあり、全て受けようとすると1週間まるまる使ってしまうので、各々の興味に応じて予定を立てていきます。講義の予定は全てGoogleカレンダーで共有されているので、慣れていなくても連絡を聞き漏らしたりすることなく受講することができました。人数の規模感やシステムに関しては、IAMASと似ている印象です。雰囲気を知りたいことや留学制度上、履修・単位の制約もないこともあり、初回の講義はほとんど全て参加することにしました。個々の講義の内容はまた別の記事で報告したいと思います。

 

1日の中心となる学生居室


前述の通り、基本的に学生居室にある自分のデスクで1日を過ごします。学生居室は、10人程の机が用意された部屋が4部屋あります。学年や活動ジャンルによる区切り等はなく、机を希望した学生がその時に空いている机を割り当てられます。留学生は必ず全員机が利用できる訳ではないようですが、僕は学校でずっと作業をしたかったので、設備担当の人に強く希望をしたところ使えるようになりました。正規の学生でも、学校ではなく自宅やアトリエで作業する人もいるので、全員の机があるわけではありません。

IAMASにも似たような環境として、ロフトがあります。ロフトは学年毎にそれぞれ1フロアが割り当てられ、その中で20人程の学生がそれぞれの席や休憩スペースのレイアウトを決めるシステムでした。2つの学年のフロアには扉がなく、廊下を隔ててて繋がっていることもあり、非常にオープンな雰囲気で、互いに何をやっているか把握しやすく、コミュニケーションが生まれやすいことが特徴です。また、休憩スペースと作業スペースが共存しているため、誰かが休憩していれば、作業を中断して一緒に休憩するということができる点でも学生同士の交流が生まれやすい環境であるように感じます。

一方で、こちらの学科の作業環境は4つの部屋で分割されていることもあり、クローズドな雰囲気を感じます。僕は、自分の制作中のものを他の人に見せて意見を貰ったり、他の学生が何をやっているのか聞くのが好きなので、少し物足りないように感じました。しかしながら、分断されているが故に、他の人の作業に左右されずに自分の作業に集中できるというメリットがあります。また、キッチンが別室で休憩スペースとして機能していることもあり、あまり人と話さず集中して作業したい場合は学生居室で作業をし、食事や休憩、少し休みながら作業したい時はキッチンに行くという住み分けがされています。したがって、作業中の交流は生まれにくいですが、メリハリのある生活がしやすい環境のように思えます。

 

交流の場としてのキッチン


学科によってその設備は異なりますが、この学科のフロアにはキッチンがあります。ここには、IH、電子レンジ、電気ケトル、食洗機、冷蔵庫、コーヒーマシンがあり、調理器具や食器も自由に使えるようになっています。共用の冷蔵庫と学生毎に食料ボックスがあり、そこに食材を溜め込み、自分で調理をし、食事ができるようになっています。ソファやダイニングテーブルもあるので、そこで仲間と話しながら食事をする憩いの場となっています。

また、大学構内にはバーとキッチンを兼ね備えた施設もあります。この施設は、大学全体の学生による組織によって運営されており、学科に関係なく自由に利用することができます。学食はありませんが、運営組織によってランチが提供されることもあり、食堂としての機能を果たしています。また、テラスがあるので、天気の良い日に屋外で仲間同士で食事する場所として利用されたり、音響設備があるため、音楽を流しながらお酒を飲む場所として利用されることもあり、食事とともに交流する場としても利用されている印象です。

新学期が始まり数日後の夜には、キッチンを使用した新入生歓迎パーティーがありました。これらの施設は、日常的な食事や休憩のほかに、金曜の夜や特別な日にこのようなパーティーにも利用されます。この日は、上級生が主催となり、学科の学生が勢揃いで新入生を迎え入れる会が開催されました。ピザを囲み、お酒を飲みながら互いの自己紹介や作品の話をしました。僕が今まで通ってきた大学では、簡単な水道はあったものの、こうした自由に使えるキッチンや食堂はありませんでした。こうしたキッチンが交流の場として利用されている状況を見ると、純粋に自分達の大学に欲しいと思うほどに良いと思いました。

 

大学での生活が始まって

新学期が始まり1週間ほど経過すると、第1回の記事に書いた様な英会話に関する不安はなくなっていました。その要因として、この学科にたくさんの国から学生が集まっている点が挙げられます。多くの学生が非英語圏から留学に来ており、全員の共通言語として英語が話されています。したがって、よく聞くと(自分を含めた)それぞれの人の英語はかなり訛っていて聞き取りづらいですが、それ故に、互いの話を聞こうとする姿勢が見受けられます。こういった雰囲気と施設環境的に日常的に多くの学生や先生と話さざるを得ない経験を経るにつれて、言語的な不安はなくなっていきました。むしろそういった環境だからこそ、言語的部分よりも何を話すかという部分や個人のコミュニケーション能力の方が重要に感じ、出来るだけ多くの人と作品や制作に関して積極的に話すことを留学中は大切にしようと思いました。

さて今回は、留学先の大学や学科の生活についてまとめました。次回以降は、ボリュームの問題で取り入れなかった制作環境や授業に関して報告したいと思います。

 

執筆者:情報科学芸術大学院大学修士1年 鈴木健太

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