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Action Design Research 活動レポート 〜藤工芸株式会社訪問編〜

今年度、Action Design Research Projectではフィールドワークを中心に据え、ケーススタディとして、岐阜県内及び、近隣の中小企業を中心にデジタル・ファブリケーションの活用事例の調査を行っています。その背景として近年、デジタルファブリケーション機器の普及により、個人によるものづくりの可能性が開拓されてきたことが挙げられます。一方で、従来の産業技術との併用可能性やデザイン・プロセスの開示によるデザイン批評としての側面をどのように考え、構築していけるかは課題として残されたままだといえます。これらの課題に取り組むためには、過去10年ほどの技術的変遷の中で、職人仕事やアーティストの活用によって形成されつつあるデジタル・ファブリケーションへの関心や実情を丁寧に掘り下げる必要があるでしょう。
本稿では、各所でのインタビューに基づき、プロジェクトに参加する各自の視点から考察したことを報告します。

7月10日(水)
インタビュイー:安藤英希(藤工芸株式会社 代表取締役)
執筆者:三木悠尚(IAMAS修士一年)

7月31日(水)
インタビュイー:山口美智留(GALLERY CAPTION ディレクター)
執筆者:幅田悠斗(IAMAS修士一年)

8月1日(木)
インタビュイー:堀江賢司(堀江織物株式会社 取締役/株式会社OpenFactory)
執筆者:鈴木健太(IAMAS修士一年)



Action Design Research プロジェクトでは、研究活動の一環として近隣の企業に対するインタビュー調査を行っています。2019年7月10日は、岐阜県揖斐郡に本社を置く藤工芸株式会社へ訪問しました。

藤工芸は従業員30名弱の家具製造メーカーです。飲食店やオフィスといった、施設向けの陳列什器や特注家具の生産を手掛けています。同社は大量生産ではなく変形、大型の什器の少量多品目の生産を得意とし、ときには見本市で使われるような大型の展示ブースの制作をすることもあるそうです。

まず工場内の様子について紹介します。動線が広く設けられ見通しがよく、清掃が行き届いており整理整頓されている空間だというのが第一印象でした。また製造工程ごとに空間を区切っているのがひと目でわかるようになっていました。

事務所の反対側が材料置き場になっており、大きな搬入口の隣に位置しています。ここから藤工芸のものづくりが始まります。その隣がメインの木工加工のスペースとなっており多くの工員がここで各々の作業をしています、各テーブルに大小様々なパーツや機材がまとめられており、各グループが各々の担当している製品を製作しているといった雰囲気でした。加工スペースから事務所に近づいていくと仕上げを行う塗装室、そしてその向かいには大型のNC工作機が設置されていました。私達がインタビューを行った事務所の隣が、完成家具の保管スペースとなっており、当日は、近日中に飲食店に納品予定だという、テーブル什器が所狭しと並んでいました。

※NCとは数値制御のことです。NC工作機はコンピュータで作られたデータに基づき、ドリルなどの切削工具の刃先を自動的に動かすことで、人間の代わりに木材や金属、樹脂の加工を行います。

 

藤工芸の生存戦略とデジタルファブリケーション

インタビューは、こちらが事前に用意した質問に対して回答して頂く形で、主にデジタルファブリケーションに対する関心や、取り巻く環境の変化について語っていただきました。以下、今回のインタビューで気づいた点を、2つの視点からまとめます。

前述したとおり、藤工芸は小ロット多品種を得意とし、現場からの高い要求にその対応力で応えています。この制作スタイルは、NC工作機によって支えられています。開閉機構を備えられていたり、直方体ではない変形の家具には、直角以外の角度がついていたり、曲線になっている部品が多く含まれます。このような手作業が難しい部品はNC工作機で製作するそうです。

藤工芸では、NC工作機による製作の柔軟性に加えて、電材やガラス、金属部品などの異素材を組み合わせることでさらなる付加価値を出しています。「最近は、飛騨の匠にしかできないような工芸的価値ではなく、耐久性や利便性など実用的な付加価値が求められるケースが多い」と安藤氏はおっしゃっていました。

製品に付加価値を与えていくこのスタイルは、低廉なコストで大量生産を得意とする海外の工場の製品と差別化し、渡り合っていくための藤工芸の戦略のように感じました。

(左)ライン照明用の電源が収められた什器/(右)金物の取りつけられ展示台

 

これから必要な職能と忘れてはいけない職能

これに伴い現場では、NC工作機を活用できる人材が求められています。このような人材が増え、生産の効率化が進むことで人手不足の問題が解消することが期待されます。

しかし生産の機械化、効率化によって、今までの職人の職能が必要なくなるということはないようです。特に重要なのが五感を駆使した判断能力だといいます。一人前の職人であれば丸ノコの切断音で、木材の材質や歯の調子を判断するそうです。逆にこれができなければ、ケガを防止することはできないし、高い品質の製品を生み出すこともできないそうです。

これはNC工作機に代表されるデジタルファブリケーションについても、例外ではないように思えます。それは、私たちがイノベーション工房のデジタルファブリケーションを利用していて、日々感じる部分です。レーザーカッターはレンズが曇っていれば同じ設定でも切断能力は下がりますし、3Dプリンターも気温を適切に保たないとうまく出力できません。

どんなツールも使い手の技量や知識でによって、なまくらにも名刀にもなる存在なのだということは忘れてはならないのです。

執筆者:三木悠尚(IAMAS修士一年)

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